RedCat 51 III の代替鏡筒 完全比較|ZWO EAF 電動フォーカス化まで含めた 250mm 級ペッツバールの選び方
RedCat 51 III の代替鏡筒 完全比較|ZWO EAF 電動フォーカス化まで含めた 250mm 級ペッツバールの選び方
「RedCat 51 III と、これに付く ZWO EAF はいくらになりますか?」というご相談を多くいただきます。天体ショップでは William Optics 製品はお取り扱いがないため、本記事では 「RedCat 51 III のどこが欲しかったのか」を仕様レベルで分解し、同じ役割を果たせる鏡筒を ZWO EAF の電動フォーカス化までセットで比較します。結論から言うと、焦点距離・F 値・ペッツバール構成・フルサイズ対応・純正オートフォーカスキットの 5 点で最も近いのは Askar SQA55(264mm F4.8)+ SQA55 AF Kit です。ただし「もっと軽く」「もっと安く」「もっと寄りたい」で正解が変わるため、4 機種を一次情報の仕様表だけで並べて判断できるようにしました。
① まず RedCat 51 III の正確なスペックを押さえる
代替を考える前に、「RedCat 51 III が何を提供している鏡筒なのか」を公式仕様で確定させます。なお William Optics 公式サイトでの現行の製品名称は Cat 51 WIFD(レッド/スペースグレイのカラー展開)で、いわゆる「RedCat 51 第 3 世代・WIFD 版」がこれにあたります。
| 項目 | RedCat 51 III / Cat 51 WIFD(William Optics 公式値) |
|---|---|
| 口径 | 51mm |
| 焦点距離 | 250mm |
| F 値 | f/4.9 |
| 光学構成 | 4-Element Petzval(4 枚玉ペッツバール) |
| イメージサークル | 48mm |
| フォーカサー | WIFD R&P Focuser Compatible with EAF(ラック&ピニオン・EAF 対応と公式明記) |
| フォーカストラベル | 0〜23mm |
| 鏡筒長 | 298mm |
| 重量 | 1.77kg(OTA)/2.38kg(総重量) |
| アリガタ | Vixen ↔ Arca-Swiss 両対応 |
| 推奨バックフォーカス | 55 ± 3mm(公式マニュアル記載) |
出典: William Optics 公式 Cat 51 WIFD 製品ページ("4-Element Petzval" / "48mm image circle" / "WIFD R&P Focuser Compatible with EAF" / "0-23mm focuser travel" / "298mm tube length" / "1.77kg OTA, 2.38kg total" / "Vixen ↔︎ Arca-Swiss")/William Optics 公式サポート Cat 51 WIFD("For astrophotography, a back spacing of 55 ± 3 mm is recommended to limit drawtube extension and reduce the risk of light leakage.")
RedCat 51 III の EAF 取付は「ノブを外して軸に直結」
RedCat 51 III の電動化手順は公式サポートに明記されています。フォーカサー下部のテンションスクリューを外し、温度計付きノブを外してシャフトの平面(フラット面)にフレキシブルカップリング(5〜6mm)を噛ませ、EAF 本体をブラケットで固定します。公式アクセサリーとして「ZWO EAF Mounting Bracket」が掲載されています。つまり RedCat 51 III はベルトを使わない直結タイプです。
出典: William Optics 公式サポート Cat 51 WIFD(EAF 取付手順・アクセサリー欄)(テンションスクリュー取外し → 温度計ノブ取外し → フラット面へ 5-6mm フレキシブルカップリング → EAF 本体固定 → M4 ブラケットスクリュー 4 本。2025 年 6 月以降のモデルはトップカバースクリューが省略。"When operating the telescope with a motorized focuser, do not overtighten the focuser tension.")
② 「RedCat 51 III に似ている」を 5 つの軸に分解する
「似ている鏡筒」を感覚で探すと必ず外します。上の仕様表から、RedCat 51 III を選ぶ人が本当に求めている条件は次の 5 つに整理できます。代替候補はこの 5 軸で評価します。
軸 1|焦点距離 250mm 前後 — 撮れる天体のサイズが決まる
焦点距離は「どの天体がフレームに収まるか」を直接決めます。250mm 前後は北アメリカ星雲・網状星雲・アンドロメダ銀河といった大型天体を余裕をもって収める領域です。ここが 180mm になれば一段広く、360mm になれば一段寄った構図になります。まずこの軸で候補を絞り込むのが最短です。
軸 2|F 値 F5 前後 — 露光時間に効く
RedCat 51 III は f/4.9。同じ露光時間でどれだけ光を集められるかに直結するため、F4〜F5 台の明るさを維持できるかは代替選定の必須条件です。
軸 3|ペッツバール構成 — フラットナー不要の「単体完結」
RedCat 51 III は 4 枚玉ペッツバール。ペッツバール型は像面平坦化のレンズ群を鏡筒内に内蔵しているため、別売フラットナーやレデューサーを買い足さずに単体で撮影に入れるのが最大の利点です。ここを外して単純な 3 枚玉 APO に置き換えると、フラットナー代とバックフォーカス計算が追加で発生します。
軸 4|イメージサークル 48mm — フルサイズ機を使うかどうか
RedCat 51 III のイメージサークルは公式値 48mm。フルサイズ機(対角約 43.3mm)を四隅まで使う設計です。APS-C や 4/3 型センサーしか使わないなら、この軸は緩めてよいため候補が一気に広がります。
出典: William Optics 公式 Cat 51 WIFD 製品ページ("48mm image circle" / T マウント対応に Canon EF/RF・Nikon F/Z・Sony E・Pentax K・MFT を掲載、フルフレーム/APS-C 対応)
軸 5|EAF が「素直に付くか」 — 後から効いてくる最重要ポイント
ここが見落とされがちです。電動フォーカサーの取り付け方は鏡筒のフォーカサー方式で決まります。
- ラック&ピニオン式(RedCat 51 III など): 粗動ノブを外して軸へフレキシブルカップリングで直結。専用ブラケットが必要。
- ヘリコイド式(Askar SQA55 / 50P など): フォーカスリングを MXL 同期ベルトとプーリーで回す。純正 AF Kit が必要。
どちらの方式でも ZWO EAF は使えますが、「本体だけ買えば付く」わけではなく、必ず鏡筒側の取付キットが要る点は共通です。ここを見積もりに入れ忘れると、届いてから組めません。
出典: ZWO EAF Detailed Installation Manual V2.4("Remove the coarse adjustment knob of the telescope focuser using a suitable sized wrench" → "Install the flexible coupling on the telescope focuser shaft and tighten the lock screw" → "Secure the EAF body to the bracket and the bracket to the matching mounting holes in the focuser assembly")/Sharpstar 公式 SQA55 AF Kit(MXL 同期ベルト・プーリー方式)
③ 天体ショップ取扱 4 機種 × RedCat 51 III スペック比較表
すべてメーカー公式仕様表の値です。販売店サイトにしか載っていない数値は採用していません。
| 項目 | RedCat 51 III (参考・当店取扱なし) |
Askar SQA55 【本命】 |
Askar 50P | Askar FMA180 Pro | SHARPSTAR 61EDPH III |
|---|---|---|---|---|---|
| 口径 | 51mm | 55mm | 50mm | 40mm | 61mm |
| 焦点距離 | 250mm | 264mm | 190mm | 180mm | 360mm |
| F 値 | f/4.9 | f/4.8 | f/3.8 | f/4.5 | f/5.9 |
| 光学構成 | 4 枚玉ペッツバール | 5 枚玉ペッツバール APO(SD 1 枚+ED 1 枚) | 4 枚玉ペッツバール APO(SD 1 枚) | 6 枚玉エアスペース APO(ED 2 枚) | 3 枚玉エアスペース APO(ED 2 枚) |
| イメージサークル | 48mm | 44mm | APS-C 対応(1 型センサー最適化) | 44mm | 44mm(専用フラットナー/レデューサー併用時) |
| フォーカサー | WIFD ラック&ピニオン(EAF 対応と公式明記) | マニュアルフォーカス(ヘリコイド) | ヘリコイド(MXL 歯付き・電動フォーカサー対応) | インナーフォーカス | 公式仕様表に記載なし |
| EAF 化に必要なもの | ZWO EAF Mounting Bracket + 5-6mm フレキシブルカップリング | SQA55 AF Kit(純正・当店取扱) | 50P AF KIT(純正・別売) | FMA180 Pro 用 AF Kit | 公式情報なし(要個別確認) |
| バックフォーカス | 55 ± 3mm 推奨 | 50〜60mm 対応(推奨 55mm) | 50〜65mm 対応(推奨 55mm) | 55mm | 55mm(レデューサー時 75mm/フラットナー時 81.5mm まで延長可) |
| 重量 | 1.77kg(OTA)/2.38kg(総重量) | 1.84kg(OTA)/2.18kg(ハンドル+アリガタ込) | 1.4kg(鏡筒バンド+アリガタ込) | 0.8kg(鏡筒バンド+アリガタ込) | 1.48kg(OTA)/1.92kg(総重量) |
| 全長 | 298mm | 316mm(フード込)/244mm(フードなし) | 147mm(フード収納)/182mm(フード伸長) | 167.5mm | 272mm(フード収納時) |
| 後端ねじ | M48 カメラアダプター付属 | M48×0.75(フィルターねじ M67) | M48×0.75 | M48×0.75(2 インチフィルターねじ内蔵) | レデューサー/フラットナー側で M48×0.75 |
| 特記 | バーティノフキャップ・鏡筒バンド・ソフトケース付属 | 14 枚虹彩絞り(f/4.8〜f/22)/最短撮影距離 5m/防水ハードケース付属 | フラットナー内蔵・バックフォーカス計算不要 | ファインダー台座・360° ローテーター付属 | 分解能 1.93 秒/極限等級 10.7/f/4.4 フルフレームレデューサー別売 |
出典: William Optics 公式 Cat 51 WIFD/William Optics 公式サポート Cat 51 WIFD/Sharpstar 公式 SQA55("Quintuplet petzval APO(One piece of SD glass, one piece of ED glass)" / 44mm / "Support 50-60mm range (Recommended connection length is 55mm)" / 14 aperture blades / f/4.8–f/22 / closest focus 5m)/Sharpstar 公式 50P("Quadruplet petzval APO(including one piece of SD glass)" / APS-C / 50-65mm・推奨 55mm / 1.4kg / 147mm・182mm)/Sharpstar 公式 FMA180 Pro("sextuplet with two ED glasses air-spaced APO" / 44mm / internal focusing / 55mm / 0.8kg / 167.5mm)/Sharpstar 公式 61EDPHⅢ("Triplet air-spaced APO (including two ED glass)" / 360mm / f/5.9 / 44mm / 272mm / 1.48kg・1.92kg / 分解能 1.93" / 極限等級 10.7)
④ 本命|Askar SQA55 — 5 軸すべてで最も RedCat 51 III に近い
結論として、天体ショップの取扱機で RedCat 51 III の代替に最も適するのは Askar SQA55 です。5 軸で照合すると理由がはっきりします。
照合 1|焦点距離 264mm — 差は 14mm(約 5.6%)
RedCat 51 III の 250mm に対して SQA55 は 264mm。写る範囲の差はごくわずかで、RedCat 51 III で想定していた構図はほぼそのまま成立します。焦点距離の近さという意味で、これ以上近い選択肢は他にありません。
出典: Sharpstar 公式 SQA55(Focal Length 264mm)/William Optics 公式 Cat 51 WIFD(250mm focal length)
照合 2|F4.8 — RedCat 51 III の f/4.9 より 1/10 段だけ明るい
実質同等の明るさです。加えて SQA55 には 14 枚羽根の虹彩絞りがあり f/4.8 から f/22 まで段階的に絞れます。天体撮影では開放で使うことがほとんどですが、昼間の風景撮影に転用する際にこの絞りが効きます。RedCat 51 III には無い機能です。
出典: Sharpstar 公式 SQA55(Focal Ratio f/4.8 / "Aperture Blades: 14 pieces" / "Graded Aperture: f/4.8–f/22" / "Closest Focus: 5m")
照合 3|5 枚玉ペッツバール — RedCat 51 III の 4 枚玉より 1 枚多い
SQA55 は SD ガラス 1 枚と ED ガラス 1 枚を含むクインタプレット(5 枚玉)ペッツバール APO。RedCat 51 III と同じくフラットナー内蔵で単体完結のため、別売の補正レンズを買い足す必要がありません。
出典: Sharpstar 公式 SQA55("Quintuplet petzval APO(One piece of SD glass, one piece of ED glass)")
照合 4|イメージサークル 44mm — ここだけは RedCat 51 III が上
正直にお伝えすると、この 1 点だけは RedCat 51 III(48mm)に対して SQA55(44mm)が小さいです。フルサイズ機(対角約 43.3mm)は 44mm のイメージサークル内に収まりますが、48mm のほうが四隅に余裕があるのは事実です。APS-C(対角約 28mm)や 4/3 型(対角約 21.6mm)が主力なら、実用上の差は生じません。フルサイズで四隅までシビアに追い込みたい方は、この差を承知のうえで選んでください。
出典: Sharpstar 公式 SQA55(Image Circle 44mm)/William Optics 公式 Cat 51 WIFD(48mm image circle)
照合 5|純正 AF Kit があるので EAF 化が確実
SQA55 は二速式のマニュアルヘリコイドフォーカサーですが、Sharpstar から SQA55 AF Kit が純正アクセサリーとして用意されています。長さの異なる MXL 同期ベルト 4 本、MXL 同期プーリー 2 個、アダプターブラケット 1 個、L 字中空プレート 2 枚、六角レンチ 3 本、各種ネジがセットになっており、電動フォーカサーを鏡筒のフォーカスリングにベルト駆動で連結します。
公式ページには対応フォーカサーとして ZWO EAF Pro と ToupTek 製電動フォーカサー が実名で挙げられ、加えて「ブランド制限なくほぼすべての電動フォーカサーに使える」と説明されています。L 字プレートが中空設計になっているのは、Pegasus Astro のようにネジ穴間隔が広いフォーカサーにも間隔を調整して対応するためです。テンショナープーリーによって同期ベルトのバックラッシュを抑える構造も備えています。
出典: Sharpstar 公式 SQA55 AF Kit("4 MXL synchronous belts of different lengths, 2 MXL synchronous pulleys, 1 adapter bracket, 2 L-shaped hollow plates, 3 different types of Allen wrenches, 2 M4×10mm screws, 2 M3×10mm screws, 2 M4×12mm screws" / ZWO EAF Pro・Touptek を実名記載 / "almost all brands of electronic focusers" / L 字プレートの中空設計は Pegasus Astro 等の穴間隔に対応 / テンショナーで同期ベルトのバックラッシュを解消)
SQA55 を選んだ場合の見積もり構成(3 点セット)
RedCat 51 III + EAF + 専用ブラケットという構成に対応するのは、次の 3 点です。
- Askar SQA55 鏡筒(防水ハードケース付属)
- Askar SQA55 AF Kit(電動フォーカサー取付用・ベルト&プーリー一式)
- ZWO EAF 本体(標準の EAF または EAF Pro。選び方は ⑧ 参照)
この 3 点が揃えば、ASIAIR や PC 制御ソフトからのオートフォーカス運用に入れます。具体的な金額と在庫状況は、記事末の公式 LINE から機種名をお送りいただければ個別にご案内します。
⑤ 軽さと携帯性を最優先するなら|Askar 50P
「RedCat 51 III が欲しかったが、もっと軽く・もっと小さくしたい」という方には Askar 50P が候補になります。口径 50mm・焦点距離 190mm・f/3.8 の 4 枚玉ペッツバール APO(SD ガラス 1 枚)で、鏡筒バンドとアリガタを含めて 1.4kg、フード収納時の全長 147mm という徹底したコンパクト設計です。フラットナーを内蔵しているため、バックフォーカスの計算に悩まされることもありません。
出典: Sharpstar 公式 50P(Aperture 50mm / Focal Length 190mm / f/3.8 / "Quadruplet petzval APO(including one piece of SD glass)" / 1.4kg including tube ring and dovetail plate / 147mm・182mm / M48×0.75 / 50-65mm・推奨 55mm)
注意点|対応フォーマットは APS-C
50P の公式対応フォーマットは APS-C(1 型センサーに最適化)です。RedCat 51 III のフルサイズ 48mm とは前提が異なります。フルサイズ機での撮影が目的なら 50P は選択肢から外してください。 ZWO ASI533MC Pro のような 1 型正方センサーや APS-C 冷却カメラ、APS-C ミラーレスを使う構成であれば、価格と重量の面で非常に有利な選択です。
出典: Sharpstar 公式 50P(Image Circle: APS-C format、1 型センサー最適化)
50P の EAF 化|フォーカスリングに MXL 歯が切ってある
50P のヘリコイドフォーカサーには標準の MXL 歯があらかじめ切られており、電動フォーカサーとの連結を前提とした設計です。純正の 50P AF KIT が別売で用意されており、長さの異なる MXL 同期ベルト 4 本、径の異なる MXL 同期プーリー 2 個、アダプターブラケット 1 個、L 字中空プレート 2 枚、六角レンチ 3 本、各種ネジで構成されます。公式ページは「ブランド制限なく、ほぼすべての電動フォーカサーに使用できる」としています。
出典: Sharpstar 公式 50P AF KIT("Four MXL synchronous belts of different lengths, two MXL synchronous pulleys of different diameters, one adapter bracket, two L-shaped hollow plates, three different types of Allen wrenches, two M4×12mm screws, four M4×10mm screws, and two M3×10mm screws" / "can be used with almost all brands of electronic focusers, without any brand restrictions" / "The 50P and all electronic focusers that appear in the illustrations are not included in this kit and are for display only.")
なお 50P AF KIT は本記事執筆時点で当店の常時在庫品ではありません。ご希望の場合はお取り寄せの可否を含めて公式 LINE でご相談ください。
⑥ もっと広く撮りたいなら|Askar FMA180 Pro
焦点距離 180mm・f/4.5・口径 40mm。ED ガラス 2 枚を含む 6 枚玉エアスペース APO で、イメージサークルは 44mm とフルサイズ対応を維持しながら、鏡筒バンドとアリガタ込みで わずか 0.8kg・全長 167.5mm に収まります。バックフォーカスは標準の 55mm、後端は M48×0.75(2 インチフィルターねじ内蔵)。ファインダー台座と 360° ローテーターが付属します。
出典: Sharpstar 公式 FMA180 Pro(Aperture 40mm / Focal Length 180mm / f/4.5 / "sextuplet with two ED glasses air-spaced APO" / Image Circle 44mm / Internal focusing / Back Focus 55mm / 0.8kg including tube ring & dovetail plate / 167.5mm / M48×0.75 with built-in 2" filter thread / finder base・360° rotator)
250mm から 180mm へ短くなる分、写野は一段広がります。天の川の広い領域、大型の散光星雲、星野写真寄りの構図を狙うならこちらが向きます。逆に「RedCat 51 III と同じ構図が撮りたい」が主目的なら焦点距離が離れすぎるため、SQA55 を選んでください。
FMA180 Pro はインナーフォーカス方式で、電動化には専用の AF Kit が必要です。旧世代の ZWO EAF を ASIAIR Plus で運用する具体的な手順は、別記事「Askar FMA180 Pro + 旧 ZWO EAF を ASIAIR Plus で動かす」で詳しく解説しています。
⑦ もう一段寄りたいなら|SHARPSTAR 61EDPH III
口径 61mm・焦点距離 360mm・f/5.9 の 3 枚玉エアスペース APO(ED ガラス 2 枚)。専用フラットナー/レデューサーとの組み合わせで 44mm フルフレームに対応します。鏡筒長 272mm(フード収納時)、OTA 1.48kg・総重量 1.92kg と、焦点距離が伸びる割に軽量です。分解能 1.93 秒、極限等級 10.7。
出典: Sharpstar 公式 61EDPHⅢ(61mm / 360mm / f/5.9 / "Triplet air-spaced APO (including two ED glass)" / 44mm full-frame / 272mm / OTA 1.48kg・gross 1.92kg / 鏡筒径 75mm / resolution 1.93 arc seconds / limiting visual magnitude 10.7 / レデューサー BF 55mm→75mm、フラットナー BF 55mm→81.5mm / f/4.4 フルフレームレデューサー・フラットナー別売)
RedCat 51 III の 250mm に対して 360mm。系外銀河や小さめの惑星状星雲まで狙いたい場合の選択肢です。ただし注意点が 2 つあります。
- ペッツバールではない 3 枚玉 APO — 44mm フルフレームで使うには専用フラットナーまたはレデューサーが別途必要です。SQA55 や RedCat 51 III のような「鏡筒単体で完結」ではありません。
- フォーカサー方式が公式仕様表に記載されていない — このため本記事では EAF が付くかどうかを断定しません。電動フォーカス化を前提にされる場合は、事前に個別のご相談をお願いします。
61EDPH III をより詳しく検討される方は「SHARPSTAR 61EDPH III 鏡筒|比較・選び方完全ガイド」もあわせてご覧ください。
⑧ ZWO EAF の選び方 — 標準 EAF と EAF Pro、旧世代との違い
現行 2 機種の共通スペックと違い
| 項目 | EAF(標準) | EAF Pro |
|---|---|---|
| 最大負荷 | 5kg(11.02lbs) | 5kg(11.02lbs) |
| ステップ分解能 | 約 2.812μm / ステップ | 約 2.812μm / ステップ |
| 電源・接続 | USB Type-C(5V 500mA) | USB Type-C(5V 500mA) |
| 無線 | なし | Bluetooth 5.0 内蔵 |
| 内蔵バッテリー | なし | あり(リチウム電池) |
| 本体の手動フォーカスボタン | なし | 本体に搭載 |
| 温度センサー | 対応 | 対応 |
| ハンドコントローラー | 別売(EAF-HC) | 別売(EAF-HC) |
| 重量 | 215g | 258g |
| 寸法 | 41 × 52 × 70.3mm | 41 × 52 × 73.4mm |
出典: ZWO 公式 EAF 製品ページ(Max Load "5kg(11.02lbs)" / "≈2.812μm / per step" / USB Type-C 5V 500mA / EAF Pro のみ Bluetooth 5.0・内蔵リチウム電池・本体手動フォーカスボタン・電源スイッチ / 215g・258g / 41 x 52 x 70.3mm・41 x 52 x 73.4mm)
どちらを選ぶか
本記事で挙げた鏡筒はいずれも OTA が 2kg 以下で、EAF の耐荷重 5kg に対して大きな余裕があります。したがって選択の基準は耐荷重ではなく配線をどこまで減らしたいかです。
- EAF Pro: Bluetooth 5.0 とバッテリーを内蔵しているため、鏡筒まわりのケーブルを 1 本減らせます。遠征で結線トラブルを避けたい方、小型赤道儀でケーブルの引っ掛かりを嫌う方に向きます。本体に手動フォーカスボタンがあるのも実用的です。
- 標準 EAF: 有線接続で構成が単純になり、電池残量を気にする必要がありません。すでに ASIAIR や PC を鏡筒に載せていて USB ハブに空きがある構成なら、こちらで十分です。
旧世代 EAF との電源方式の違い(中古・手持ち品をお持ちの方へ)
すでに旧世代の EAF をお持ちの場合、電源方式が現行世代と異なる点にご注意ください。ZWO EAF Manual V2.4 に記載された旧世代 EAF の仕様は、35mm ステッピングモーター、5760 分割ステップ、トルク 1.5N/M、耐荷重 5KG、電源は 11〜15V(DC 12V @0.5A 推奨)、コネクタは 5.5mm × 2.1mm センタープラス、データインターフェースは USB 2.0、センサー/ハンドコントローラー端子は 3.5mm オーディオ(センタープラス)です。現行世代の USB Type-C 5V とは別物のため、12V 電源ケーブルの用意が必要になります。
出典: ZWO EAF Detailed Installation Manual V2.4 §EAF Specifications("Motor Specification: 35mm Stepper Motor" / "Subdivision Steps: 5760 steps" / "Torque: 1.5N/M" / "Focuser Payload Limit: 5KG" / "Power Requirements: Voltage Range: 11~15V. DC 12V@0.5A Recommended. Connector - 5.5mm*2.1mm Centre Positive" / "Data Interface: USB 2.0" / "Sensor/Hand Controller Interface: 3.5mm audio, Centre Positive")
対応ソフトウェア
ZWO EAF は USB 2.0 で ASCOM に対応し、幅広い天文ソフトから制御できます。公式マニュアルには惑星撮影向けとして ASICAP・SharpCap・FireCapture、ディープスカイ撮影向けとして ASIAIR・Maxim DL・TheSkyX・Sequence Generator Pro・Nebulosity、サードパーティのフォーカスソフトとして FocusMax が挙げられています。
出典: ZWO EAF Detailed Installation Manual V2.4("The ZWO EAF utilises a USB2.0 interface for data communication which supports ASCOM and can be used in association with a wide variety of astronomy software." / ASICAP・Sharpcap・FireCapture・ASIAIR・Maxim DL・The SkyX・Sequence Generator Pro・Nebulosity・FocusMax を列挙)
⑨ 発注前チェックリスト — ここを外すと組めません
チェック 1|鏡筒側の取付キットを見積もりに入れたか
症状:EAF 本体が届いたが、鏡筒に固定する手段がない。
原因:EAF はモーターユニット単体で、鏡筒ごとに異なるブラケットまたは AF Kit が別途必要。
対処:SQA55 なら SQA55 AF Kit、50P なら 50P AF KIT を同時に手配する。RedCat 51 III の場合は ZWO EAF Mounting Bracket と 5〜6mm のフレキシブルカップリングにあたる部品。
出典: Sharpstar 公式 50P AF KIT("The 50P and all electronic focusers that appear in the illustrations are not included in this kit and are for display only.")/William Optics 公式サポート Cat 51 WIFD(アクセサリー欄に "ZWO EAF Mounting Bracket" を掲載)
チェック 2|バックフォーカスが 55mm 前後で組めるか
症状:ピントは合うが四隅の星が伸びる。
原因:ペッツバール/フラットナー設計は所定のバックフォーカスを前提に補正が最適化されている。
対処:SQA55 は 50〜60mm(推奨 55mm)、50P は 50〜65mm(推奨 55mm)、FMA180 Pro は 55mm。カメラ本体+アダプター+フィルターホイールの合計光路長をあらかじめ計算しておく。
出典: Sharpstar 公式 SQA55("Support 50-60mm range (Recommended connection length is 55mm)")/Sharpstar 公式 50P(50-65mm・推奨 55mm)/Sharpstar 公式 FMA180 Pro(Back Focus 55mm)
チェック 3|使うカメラのセンサーサイズとイメージサークルが合っているか
症状:四隅がケラれる、周辺減光が強い。
原因:イメージサークルよりセンサー対角が大きい。
対処:フルサイズを使うなら 44mm 以上のイメージサークルを持つ機種(SQA55 / FMA180 Pro / 61EDPH III +補正レンズ)を選ぶ。50P は公式対応が APS-C のため、フルサイズ運用には選ばない。
出典: Sharpstar 公式 50P(Image Circle: APS-C format)/Sharpstar 公式 SQA55(44mm)
チェック 4|フォーカサーのテンションを締めすぎていないか
症状:電動フォーカサーが脱調する、異音がする、動きが渋い。
原因:フォーカサーのテンションスクリューを締めすぎている。
対処:William Optics は公式サポートで「電動フォーカサーで運用する際はフォーカサーのテンションを締めすぎないこと。過度なテンションはフォーカサー機構を破損させる可能性がある」と明記しています。これはラック&ピニオン式全般に通じる注意点です。
出典: William Optics 公式サポート Cat 51 WIFD("When operating the telescope with a motorized focuser, do not overtighten the focuser tension. Excessive tension may damage the focuser mechanism.")
チェック 5|バックラッシュ量を測って設定したか
症状:オートフォーカスの V カーブが左右非対称になる、合焦位置が安定しない。
原因:フォーカサーのバックラッシュ(遊び)が補正設定に反映されていない。
対処:ZWO 公式マニュアルには測定手順が記載されています。粗動ステップを 1000、微動ステップを 10 に設定し、フォーカサーを 1000 ステップ外側へ動かしたあと、微動で内側へ 1 クリックずつ動かし、反対側のフォーカスノブが回り始めるまでのクリック回数 × 10 がバックラッシュのステップ数です。これを Set Backlash 設定に入力します。より精密に測る場合は微動ステップを 5 にして同じ手順を繰り返します。
出典: ZWO EAF Detailed Installation Manual V2.4 §Measuring the Focuser Backlash("Set the coarse step size to 1000 and the fine step size to 10." / "The number of times you click x 10 is the number of steps measured as backlash." / "If you want to measure the backlash setting more accurately then chose Step Size 5 in the fine step setting and repeat the above steps.")
チェック 6|温度センサー・ハンドコントローラーが必要かどうか
症状:夜半に気温が下がると、序盤に合わせたピントがずれている。
原因:温度変化による鏡筒の伸縮で焦点位置が移動する。
対処:EAF は温度センサーに対応しています。温度データを撮影ソフトが取得できるようにしておくと、温度補償フォーカスの運用が可能になります。ハンドコントローラー(EAF-HC)は現行 2 機種とも別売です。
出典: ZWO 公式 EAF 製品ページ(温度センサー対応・ハンドコントローラーは別売アクセサリー)/ZWO EAF Manual V2.4("Your EAF is also fitted with a small multi-function interface that supports a temperature sensor or external hand controller." / "A dedicated temperature sensor can be connected to collect temperature data and allow focuser control from your chosen software.")
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本記事で扱った鏡筒・アクセサリー
- Askar SQA55 鏡筒 — RedCat 51 III の代替本命。264mm F4.8・5 枚玉ペッツバール・14 枚虹彩絞り。
- Askar SQA55 AF kit — SQA55 を電動フォーカス化するための純正キット。ZWO EAF と組み合わせて使用。
- ZWO NEW EAF オートフォーカサー スタンダードモデル — 有線構成でシンプルにまとめたい方向け。
- ZWO EAF Pro オートフォーカサー — Bluetooth 5.0 とバッテリーを内蔵し、鏡筒まわりのケーブルを減らせるモデル。
- Askar 50P 鏡筒 — 190mm F3.8・総重量 1.4kg。APS-C 運用で軽さを優先する方に。
- Askar FMA180 Pro 鏡筒 — 180mm F4.5・0.8kg。フルサイズ対応のまま広い写野を狙う構成に。
- SHARPSTAR 61EDPH III 鏡筒 — 360mm F5.9。もう一段寄った構図を狙う方に。
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最終更新: 2026-08-19/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は William Optics 公式製品ページ・William Optics 公式サポート(Cat 51 WIFD マニュアル)・Sharpstar(Askar)公式製品ページ・ZWO 公式製品ページ・ZWO EAF Detailed Installation Manual V2.4 に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 天体ショップで RedCat 51 III は買えますか?
A. 申し訳ございませんが、天体ショップでは William Optics 製品のお取り扱いがございません。焦点距離・F 値・光学構成・電動フォーカス化のしやすさの観点で最も近いのは Askar SQA55(264mm F4.8・5 枚玉ペッツバール)です。
Q. Askar SQA55 は RedCat 51 III と同じ構図が撮れますか?
A. ほぼ同じです。焦点距離は RedCat 51 III が 250mm、SQA55 が 264mm で差は約 5.6%。写野の差はごくわずかで、狙っていた天体はそのまま収まります。
Q. SQA55 に ZWO EAF はそのまま付きますか?
A. EAF 本体だけでは付きません。SQA55 はヘリコイド式のマニュアルフォーカサーのため、純正の「SQA55 AF Kit」(MXL 同期ベルト・プーリー一式)を経由してベルト駆動で連結します。AF Kit の公式ページには対応フォーカサーとして ZWO EAF Pro と ToupTek 製電動フォーカサーが実名で挙げられています。
Q. EAF は標準モデルと EAF Pro のどちらを選ぶべきですか?
A. 本記事の鏡筒はいずれも 2kg 以下で、両機種の耐荷重 5kg に対して余裕があるため、判断基準は配線量です。ケーブルを減らしたいなら Bluetooth 5.0 とバッテリーを内蔵した EAF Pro、有線でシンプルにまとめるなら標準 EAF が向きます。ステップ分解能は両機種とも約 2.812μm/ステップで同じです。
Q. フルサイズのカメラを使いたいのですが、どの鏡筒を選べばよいですか?
A. イメージサークル 44mm の Askar SQA55、Askar FMA180 Pro、または専用フラットナー/レデューサーを併用した SHARPSTAR 61EDPH III が候補です。Askar 50P は公式対応フォーマットが APS-C のため、フルサイズ運用には向きません。
Q. RedCat 51 III のイメージサークル 48mm に対して SQA55 は 44mm ですが、問題になりますか?
A. フルサイズセンサーの対角は約 43.3mm なので 44mm のイメージサークル内に収まりますが、48mm のほうが四隅に余裕があるのは事実です。APS-C(対角約 28mm)や 4/3 型(対角約 21.6mm)が主力であれば、実用上の差は生じません。
Q. 手持ちの古い ZWO EAF をそのまま使えますか?
A. 鏡筒側の AF Kit が対応していれば使えますが、電源方式が異なります。旧世代 EAF は 11〜15V(DC 12V @0.5A 推奨)の 5.5mm × 2.1mm センタープラス端子で、現行世代の USB Type-C 5V とは別物です。12V 電源ケーブルの準備が必要になります。
Q. オートフォーカスの精度が出ないのですが、最初に何を確認すべきですか?
A. バックラッシュの設定です。ZWO 公式マニュアルの手順(粗動 1000 ステップ・微動 10 ステップで測定し、反対側のノブが回り始めるまでのクリック回数 × 10 をバックラッシュ値とする)で実測し、Set Backlash に入力してください。あわせてフォーカサーのテンションを締めすぎていないかも確認してください。
参考にした一次情報
- William Optics 公式 Cat 51 WIFD 製品ページ(RedCat 51 現行世代の仕様表)
- William Optics 公式サポート Cat 51 WIFD(マニュアル・バックフォーカス・ZWO EAF 取付手順・アクセサリー)
- Sharpstar(Askar)公式 SQA55 製品ページ
- Sharpstar(Askar)公式 SQA55 AF Kit 製品ページ
- Sharpstar(Askar)公式 50P 製品ページ
- Sharpstar(Askar)公式 50P AF KIT 製品ページ
- Sharpstar(Askar)公式 FMA180 Pro 製品ページ
- Sharpstar 公式 61EDPHⅢ 製品ページ
- ZWO 公式 EAF(EAF / EAF Pro)製品ページ
- ZWO EAF Detailed Installation Manual V2.4(PDF)
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最終更新: 2026-08-19/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は William Optics 公式製品ページ・William Optics 公式サポート(Cat 51 WIFD マニュアル)・Sharpstar(Askar)公式製品ページ・ZWO 公式製品ページ・ZWO EAF Detailed Installation Manual V2.4 に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。