SHARPSTAR 61EDPH III 鏡筒|比較・選び方完全ガイド(II 世代からの変更点・RedCat 51・SQA55・71F と徹底比較)

SHARPSTAR 61EDPH III 鏡筒|比較・選び方完全ガイド(II 世代からの変更点・RedCat 51・SQA55・71F と徹底比較)

SHARPSTAR 61EDPH III は、口径 61mm・焦点距離 360mm・f/5.9 の三枚玉エアスペース APO 屈折鏡筒で、ED ガラスを 2 枚使ったフラッグシップ小型 APO です。先代 61EDPH II(f/5.5・335mm・ED 1 枚)からの世代交代で、色収差・機械精度・搭載アクセサリの3方向が更新されました。この記事では 61EDPH III のスペックと II 世代からの差分、そして William Optics RedCat 51・Askar SQA55・Askar 71F といった代表的な小口径 APO 屈折との比較を一次情報だけで整理し、どのユーザーが 61EDPH III を選ぶべきかを解説します。

① SHARPSTAR 61EDPH III とは(基本スペック)

SHARPSTAR 61EDPH III は、Jiaxing Sharpstar Optical Instrument(SHARPSTAR/Askar 兄弟ブランド)が製造する 61mm 三枚玉エアスペース APO 屈折鏡筒です。先代 61EDPH II の後継として登場し、ED ガラスを 1 枚から 2 枚に増やした光学系と、機械部品の全面刷新が特徴です。

項目
口径 61mm
焦点距離 360mm
口径比 f/5.9
光学設計 三枚玉エアスペース APO(ED ガラス 2 枚)
限界視等級 10.7
分解能 1.93 秒角
鏡筒長(フード収納時) 272mm
鏡筒外径 75mm
OTA 単体重量 1.48kg
総重量(鏡筒バンド・アリガタ込み) 1.92kg
イメージサークル 44mm フルサイズ対応(純正フラットナー/レデューサー装着時)
フォーカサー接続部 M68×1
付属アリガタ 200mm 長 Vixen 規格アリガタ
ハンドル 多機能ハンドル(Vixen 規格ファインダー台座接続可)

出典: SHARPSTAR 公式 61EDPH III 製品ページ §Spec table(公式仕様表の値を直接引用)

② 先代 61EDPH II から III で何が変わったか

「II が既にある人が III に買い替える意味があるか」を判断するには、変更点を光学・機械・アクセサリの 3 軸で見るのがわかりやすいです。以下は SHARPSTAR 公式仕様と、両世代を並べて実測した英国 Deep Sky Photography のレビューから抽出した、観測可能な差分だけをまとめた表です。

項目 61EDPH II 61EDPH III
焦点距離 335mm 360mm
口径比 f/5.5 f/5.9
ED ガラス枚数(三枚玉のうち) 1 枚 2 枚
鏡筒外径 80mm 75mm
鏡筒長(フード収納時) 235mm 272mm
OTA 単体重量 1.5kg 1.48kg
総重量 1.9kg 1.92kg
フォーカサー 2.5" R&P(金色筐体) 2.5" R&P デュアルスピード(黒筐体・機構は維持)
付属アリガタ長 3 インチ級 200mm(約 8 インチ)
フード(dew shield) ロック機構なし ロックネジ追加、径はわずかに小径化
カメラ回転装置 ドライバー締め 指で握れるツマミネジ化
専用レデューサー倍率 0.8x(合成 f/4.4 相当) 0.75x(合成 f/4.4・270mm)

出典: SHARPSTAR 公式 61EDPH III §Spec table / SHARPSTAR 公式 61EDPH II §Spec table / Deep Sky Photography 61 EDPH II / III 実機比較レビュー(各項目は公式仕様表または実機比較の観測記述に基づく)

光学面では ED を 1 枚から 2 枚に増やしたことで、Deep Sky Photography が II で観測していた「短波長側の紫にじみ」が III では実機観測されなくなった、と報告されています。焦点距離は 335mm → 360mm へ 7% 伸び、その分だけ画角がわずかに狭くなりました(同じフルサイズカメラで撮って、少しズームインした状態)。

出典: Deep Sky Photography レビュー §Optics(“EDPH II exhibited purple stars from different wavelengths” / “EDPH III shows no Chromatic Aberration” / “tighter FoV than EDPH II” の記述に基づく)

機械面では、アリガタが延長されたことで、鏡筒後端にオートフォーカサー(ZWO EAF など)を取り付けた際にアリガタと干渉しにくくなりました。また回転装置がドライバー不要になったため、フィールドで構図をローテーションさせる作業がグローブを外さずに済みます。フード側のロックネジも、遠征先で下向き設置する際にフードが自重で伸縮するのを止められる実用改善です。

出典: Deep Sky Photography レビュー §Mechanical Components(“Extended from 3" to 8" length” / “Added locking screw” / “threaded bolt which is easy to grip and tighten” の記述に基づく)

③ 主要競合機との比較(RedCat 51 / SQA55 / Askar 71F)

小口径 APO 屈折を選ぶ場面で 61EDPH III と比較検討されやすいのは、William Optics RedCat 51(II / Gen3 WIFD)、Askar SQA55、そしてワンサイズ上の Askar 71F です。「像面フラット化のアプローチ」「焦点距離/画角」「鏡筒重量」の 3 軸で並べると差がはっきり見えます。

機種 口径・焦点距離・口径比 光学設計 像面フラット化 イメージサークル OTA 重量
SHARPSTAR 61EDPH III 61mm / 360mm / f/5.9 三枚玉エアスペース APO(ED×2) 別売フラットナー or レデューサー必要 44mm(アクセサリ装着時) 1.48kg
William Optics RedCat 51(Gen3 WIFD) 51mm / 250mm / f/4.9 四枚玉ペッツバール APO(FPL-53+FPL-51) ネイティブフラット(追加光学系不要) 48mm 1.77kg(Gen3)
Askar SQA55 55mm / 264mm / f/4.8 五枚玉ペッツバール APO(SD×1+ED×1) ネイティブフラット(追加光学系不要) 44mm 1.84kg
Askar 71F 71mm / 490mm / f/6.9 四枚玉エアスペース APO(ED×1) ネイティブフラット(追加光学系不要) 44mm 2.5kg

出典: SHARPSTAR 公式 61EDPH III / AstroBackyard RedCat 51 世代仕様(Gen3 WIFD 数値) / Askar 公式 SQA55 / Askar 公式 71F(各値は各公式仕様表または一次情報レビューに基づく)

この表からわかることが 3 つあります。まず 61EDPH III だけが「像面フラット化に別売アクセサリが必要」な設計で、RedCat 51/SQA55/71F はいずれもネイティブフラットです。次に焦点距離は SQA55(264mm) < RedCat 51(250mm) < 61EDPH III(360mm) < 71F(490mm)と幅があり、狙う対象サイズによって選ぶべき鏡筒が変わります。最後に OTA 単体重量は 61EDPH III の 1.48kg が最軽量で、ポータブル運用でのペイロード余裕は最も大きいクラスです。

出典: 上表と同じ 4 出典(SHARPSTAR 61EDPH III / RedCat 51 / SQA55 / 71F)の数値比較に基づく

④ 44mm フルサイズ対応の仕組み(純正 f/4.4 レデューサー・フラットナー)

61EDPH III は鏡筒単体では像面が平坦化されていません。フルサイズ(44mm)撮影を狙う場合は、必ず SHARPSTAR 純正の「61EDPH III f/4.4 Full-Frame Reducer」または「61EDPH III Full-Frame Flattener」のいずれかを装着します。両者の主要スペックは以下の通りです。

項目 f/4.4 Full-Frame Reducer Full-Frame Flattener
合成焦点距離 270mm 360mm(等倍・原鏡筒同等)
合成 f 値 f/4.4 f/5.9
対応イメージサークル 44mm 44mm
レンズ構成 四枚玉エアスペース 三枚玉エアスペース
フォーカサー側ネジ M68×1 M68×1
カメラ側ネジ M48×0.75(アダプタ外して M54×0.75 露出) M48×0.75+内蔵 2" フィルタネジ(アダプタ外して M54×0.75 露出)
必要バックフォーカス 55mm(M48)/ 75mm(M54) 55mm(M48)/ 81.5mm(M54)
重量 0.4kg 0.4kg

出典: SHARPSTAR 公式 61EDPH III f/4.4 Full-Frame Reducer 製品仕様 / SHARPSTAR 公式 61EDPH III Full-Frame Flattener 製品仕様(数値はいずれも公式仕様の直接引用)

両者の重要な共通点は、必要バックフォーカスが M48 面で 55mm 揃いになっていることです。ZWO ASI2600MC Pro/ASI2600MM Pro のようなフィルターホイール一体運用の主要フルサイズ/APS-C クラスの冷却 CMOS を、標準スペーサー構成のまま接続しやすい設計になっています。フィルターホイール(EFW など)や OAG を挟む場合は M48 面 55mm の中で総厚を配分するため、追加スペーサーの調整が必要です。

出典: SHARPSTAR 公式 f/4.4 Reducer §Back focus / SHARPSTAR 公式 Flattener §Back focus(バックフォーカス 55mm の値に基づく)

⑤ 焦点距離 270mm・360mm で狙える対象と画角の目安

61EDPH III の使い分けは「フラットナー(360mm)モード」と「レデューサー(270mm)モード」の 2 通りです。狙う対象と画角の相性を、フルサイズ(36×24mm)撮影を前提に整理します。

モード 合成焦点距離/f 値 得意な対象クラス
レデューサー付き(広画角モード) 270mm / f/4.4 アンドロメダ銀河(M31)や北アメリカ星雲(NGC 7000)など「大きく広がる散光星雲・大型銀河・天の川モザイク片」向け。f/4.4 は短時間で光量を稼ぎたい遠征撮影に有利。
フラットナー付き(等倍モード) 360mm / f/5.9 オリオン大星雲(M42)、バラ星雲(NGC 2237)、プレアデス星団(M45)など「中サイズの散光星雲・散開星団」向け。f/5.9 でも 44mm 平坦化が得られるため精細撮影向き。

出典: SHARPSTAR 公式 Reducer 仕様(270mm / f/4.4) / SHARPSTAR 公式 Flattener 仕様(三枚玉平坦化・44mm 対応)(焦点距離・f 値・44mm イメージサークルの数値仕様に基づく。得意対象クラスは焦点距離 270mm/360mm という光学値から一般的にカバーできる対象を示したもの)

⑥ 搭載する赤道儀のサイズ感(総重量の目安)

61EDPH III の総重量は付属アクセサリ込み 1.92kg で、レデューサー/フラットナー(0.4kg)+冷却 CMOS 冷(例:ASI2600MC Pro クラス 700g 前後)+フィルターホイール+ガイド系を積んでも、多くのポータブル・小型赤道儀のペイロード枠内に収まります。

構成要素 重量(目安)
SHARPSTAR 61EDPH III(鏡筒バンド・アリガタ込み) 1.92kg(公式値)
純正 Reducer or Flattener 0.4kg(公式値)
合計(撮影構成本体) 約 2.32kg

ここにカメラ・フィルターホイール・ガイドスコープ・ケーブル類が乗っても 4〜5kg 前後に収まるケースが多く、ZWO AM3N など 3kg 級ハーモニックドライブ赤道儀のフル運用ペイロードに余裕を持って収まります。より大型の対象を狙う際に AM5N クラスへスケールアップする「入口」として、61EDPH III を選ぶ方は少なくありません。

出典: SHARPSTAR 公式 61EDPH III OTA / Gross weight 1.48kg / 1.92kg / Reducer 0.4kg / Flattener 0.4kg(数値はすべて公式仕様の直接引用。合計値は加算による算出)

⑦ こんな方に 61EDPH III が向いています

  • 先代 61EDPH II ユーザーで色収差の残りが気になっている方:ED が 1 枚 → 2 枚に増えたことで、短波長側のにじみに関する実機観測が改善されています(SRC-5)。
  • ポータブル遠征でフルサイズ撮影を狙う方:OTA 1.48kg・純正アクセサリ 0.4kg で合計 2kg 台の撮影系を組めるため、荷物制約のある遠征に向きます。
  • 「1 本で 270mm 広角撮影と 360mm 中焦点撮影の両方をこなしたい」方:純正 Reducer/Flattener の切替で、対象サイズに合わせて焦点距離を選べます。
  • ZWO EAF などのオートフォーカサーを組み合わせて自動化構成を組みたい方:III 世代は 200mm アリガタと拡張された機械構成により、EAF アームが鏡筒本体と干渉しにくくなっています(SRC-5)。
  • 視覚観測とアストロフォトを兼用したい方:SHARPSTAR は III について「visual observation and astrophotography」両対応と明記しています(SRC-1)。多機能ハンドルは Vixen ファインダー台座に接続でき、視覚観望用途にも対応します。

出典: SHARPSTAR 公式 61EDPH III §Product introduction(“visual observation and astrophotography” 記述) / Deep Sky Photography レビュー §Optics / §Dovetail Rail(“no Chromatic Aberration” “Allow EAF attachment without movement of the focuser to avoid clashes” の記述に基づく)

⑧ 61EDPH III が「向かない」ケースと代替案

  • 「セットアップを増やしたくない」=別売アクセサリを買いたくない方:61EDPH III はネイティブフラットではないため、44mm 撮影には必ずレデューサー or フラットナーが必要です。「鏡筒 1 本だけ買えばすぐフルサイズ撮影できる」構成を求めるなら、Askar SQA55(264mm / f/4.8 / 44mm ネイティブ)や William Optics RedCat 51(250mm / f/4.9 / 48mm ネイティブ)が候補になります。
  • 「もっと広い画角、天の川モザイクを狙いたい」方:焦点距離 360mm はやや長めなので、天の川モザイクや広域星野を狙うなら焦点距離 250〜270mm のクラス(RedCat 51/SQA55)や、さらに広角の Askar FMA180 Pro(180mm / f/4.5)が向きます。
  • 「もう少し口径が欲しい、細部を出したい」方:61mm では球状星団や小型銀河の解像に限界があるため、口径 71mm・焦点距離 490mm の Askar 71F(ネイティブフラット・OTA 2.5kg)や、口径 65mm・焦点距離 416mm の Askar 65PHQ クラスへスケールアップする選択肢があります。
  • 「f/5 台では暗くて露光時間が伸びる」=短時間で光量を稼ぎたい方:61EDPH III で稼ぎたいなら Reducer を装着して f/4.4 で運用します。それでも足りない場合はもともと f/4.8 系(SQA55)や f/4.9 系(RedCat 51)を選ぶほうが自然です。

出典: Askar 公式 SQA55(44mm ネイティブ・264mm / f/4.8) / RedCat 51 §Field Flattening(“Not required”) / Askar 公式 71F(490mm・OTA 2.5kg・ネイティブフラット)(各機種のネイティブフラット・焦点距離・重量は公式仕様の直接引用)

⑨ 関連商品

専用フラットナー・専用 f/4.4 レデューサーの在庫状況、SHARPSTAR 純正アクセサリ以外にどのバックフォーカス構成が推奨できるかは、後述の公式 LINE でお問い合わせください。

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最終更新: 2026-07-14/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は SHARPSTAR 公式製品ページ(61EDPH III/61EDPH II/専用 Reducer/専用 Flattener/71F/SQA55)と、Deep Sky Photography・AstroBackyard の実機比較レビューに基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。

⑫ よくある質問(FAQ)

Q1. 61EDPH II を持っています。III に買い替える価値はありますか?

A. 「短波長側の色にじみが気になっていた」「アリガタと EAF アームの干渉に苦労している」「回転装置がドライバー必須で不便」といった具体的な II の不満点を持っている方には、III 世代は改善が実装されているため買い替えの意味があります。ED ガラス枚数(1 → 2)、アリガタ長さ(3" → 8")、回転装置(ドライバー → 指ネジ化)、フードロック追加といった変更点はいずれも観測可能な違いです。逆にこれらの不満がなければ、既存の II のまま運用を続けても問題ありません。

Q2. 純正フラットナーとレデューサー、どちらを先に買うべきですか?

A. 撮影対象の目安サイズで決めます。焦点距離 360mm・f/5.9 を維持したまま像面平坦化だけ得たいならフラットナー、270mm・f/4.4 に短縮して露光時間を稼ぎつつ広い画角を得たいならレデューサーです。どちらも必要バックフォーカスは M48 面 55mm で共通なので、後日もう一方を追加しても撮影系全体の再設計は不要です。

Q3. RedCat 51 と 61EDPH III のどちらが向いていますか?

A. 「鏡筒 1 本で完結する簡便さ」を最優先するなら RedCat 51、「270mm と 360mm を切り替えられる 2 モード運用」「軽い OTA(1.48kg 対 1.77kg)」を優先するなら 61EDPH III です。焦点距離が 250mm と 360mm で異なるため、狙いたい対象サイズが違えば結論は自動的に決まります。

Q4. 61EDPH III の保証はどうなっていますか?

A. 天体ショップでご購入いただいた場合、弊社独自の 60 日初期不良保証と 3 年保証をお付けしています。SHARPSTAR 純正保証とは別枠の、天体ショップの独自サービスです。詳細な保証条件はお問い合わせください。

Q5. どのクラスの赤道儀と組み合わせるのがバランスが良いですか?

A. 61EDPH III は付属アクセサリ込み 1.92kg で、純正 Reducer / Flattener(各 0.4kg)と冷却カメラを積んだ撮影構成でも 4〜5kg 前後で収まるケースが多くあります。この重量なら ZWO AM3N のような 3kg 級ハーモニックドライブ赤道儀のペイロードに余裕を持って収まります。より大型の対象を狙うためにワンサイズ上に上げるなら AM5N が候補です。詳しくは「ZWO AM3N vs AM5N 完全比較ガイド」記事をご覧ください。

Q6. フルサイズカメラを持っていないのですが、61EDPH III を選ぶ意味はありますか?

A. あります。純正フラットナー/レデューサーは 44mm イメージサークルを持ちますが、APS-C(28mm)や 4/3 サイズ(22mm)でも同じアクセサリで平坦化された像を得られます。将来フルサイズにステップアップした際にも、44mm 対応のマージンがそのまま活きます。

参考にした一次情報

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