ZWO EAF Pro(バッテリー内蔵モデル)の使い方と撮影設定|配線・キャリブレーション・オートフォーカス完全ガイド

ZWO EAF Pro(バッテリー内蔵モデル)の使い方と撮影設定|配線・キャリブレーション・オートフォーカス完全ガイド

ZWO EAF Pro は、内蔵 2500mAh リチウムバッテリーと Bluetooth 5.0 を搭載した電動フォーカサーです。USB ケーブル給電も可能で、ASIAIR Plus(RK 版)や ASIAIR カメラシリーズと無線接続でき、ケーブルレスで撮影中のオートフォーカスを実行できます。本記事では、開梱後の充電から、望遠鏡への取付、必ず最初に実施すべき「ゼロ位置と最大ステップ数」の校正、ASIAIR での使い方、オートフォーカスのステップサイズ設定、バックラッシュ補償、温度センサーによる温度補償までを、ZWO 公式マニュアル(EAF Manual V2.4 / V2.6)と ZWO 公式製品ページの一次情報のみに基づいて解説します。

① EAF Pro とは — 標準 EAF / EAFN との違い

ZWO EAF Pro は、天体望遠鏡のフォーカサー(合焦装置)に取り付けて、ステッピングモーターでピント合わせを電動化する装置です。ZWO の電動フォーカサーには 3 系統あり、いずれも同じ 35mm ステッピングモーター系のドライブトレインを共有していますが、通信・給電・付属機能の面で明確に差があります。

EAF Pro が「Pro」の名を冠している理由は、内蔵リチウムバッテリー・Bluetooth 5.0・本体フォーカスボタン・電源スイッチ・ステータス LED といった、屋外運用で恩恵の大きい要素をひとまとめに搭載している点にあります。長時間の遠征撮影や、ケーブル本数を減らしたいメリディアンフリップを含む夜間撮影で真価を発揮します。

EAF 3 モデル 主要スペック比較

項目 EAF(旧・標準版) EAFN(新・5V 版) EAF Pro
外形寸法 従来型(Manual V2.6 §Dimensions 図示) 従来型 41 × 52 × 73.4 mm
重量 従来型 従来型 258 g
最大搭載 5 kg 5 kg 5 kg(11.02 lbs)
モーター 35mm ステッピング、5760 分割、トルク 1.5 N·M 35mm ステッピング ステップ角 7.5°、減速比 1:128
給電 12V DC 0.5A(USB 2.0 Type-B) USB Type-C 5V(12V 電源ポート撤去) USB Type-C 5V 500mA + 内蔵 2500mAh バッテリー
通信 USB 2.0 USB Type-C USB Type-C + Bluetooth 5.0
本体ボタン なし(ハンドコントローラー別途) なし フォーカス IN / OUT + 電源スイッチ + ステータス LED
温度センサー端子 3.5mm オーディオジャック(センタープラス) 3.5mm オーディオジャック 3.5mm オーディオジャック
対応カプラー 5mm 版 4mm 版 4mm 版

出典: ZWO 公式 EAFN/EAF Pro 製品ページZWO EAF Manual EN V2.6 §3 SpecificationsZWO US EAFN/EAF Pro Dedicated Accessories

「Pro」を選ぶべき人・「EAFN」で十分な人

Pro のバッテリーと Bluetooth が生きるのは、次のような使い方です。

  • ASIAIR Plus(RK 版)を使い、望遠鏡側の配線を「電源+メインカメラ USB+ガイドカメラ USB」に絞りたい(Bluetooth 化で USB ケーブル 1 本削減)
  • 遠征でシガーソケット電源を極力節約したい(EAF Pro 単体はバッテリー動作可能)
  • 撮影中に手動で微調整したい(本体 IN / OUT ボタンがある)
  • フォーカサーのステータス(動作中/エラー)を LED で目視確認したい

一方、次のような方は EAFN(5V 版・従来型)でも十分カバーできます。

  • 常時 ASIAIR / PC の USB ポート近傍で使う(有線が苦にならない)
  • 使用する ASIAIR が Plus 以外の CM4 版・ASIAIR Pro・Mini・初代である(Bluetooth 非対応のため Pro の無線恩恵を受けられない)
  • 本体ボタンは EAF-HC ハンドコントローラー(別売)で代替できる

出典: ZWO 公式 EAFN/EAF Pro 製品ページ(Compatibility セクション)/Starizona EAF / EAF Pro 商品説明

② 対応 ASIAIR と対応ソフト

ASIAIR との Bluetooth 互換性(重要)

EAF Pro の Bluetooth 接続が可能な ASIAIR は限定されます。購入前に必ず自分の ASIAIR 型式を確認してください。

ASIAIR 機種 Bluetooth 接続 USB Type-C 有線接続
ASIAIR Plus(RK 版) 対応 対応
ASIAIR Plus(CM4 版) 非対応 対応
ASIAIR(初代・Raspberry Pi 4) 非対応 対応
ASIAIR Pro 非対応 対応
ASIAIR Mini 非対応 対応
ASIAIR カメラ内蔵機種(585MC Air / 2600MC Air など) 対応 対応

出典: ZWO 公式 EAFN/EAF Pro 製品ページ(Compatibility セクション)

Plus の RK 版 / CM4 版はどうやって見分けるか

ASIAIR Plus には見た目がほぼ同じで内部の SoC(システムオンチップ)が異なる 2 種類が存在します。ZWO 公式の判別方法は次のとおりです。

  • 本体の IC 番号(型式ラベル)の末尾を確認
  • 末尾が「ASIAIRPLUS」…… Rockchip(RK)版 → EAF Pro と Bluetooth 接続可能
  • 末尾が「RPICM4」…… Raspberry Pi Compute Module 4 版 → Bluetooth 接続不可(USB のみ)

出典: ZWO 公式 EAFN/EAF Pro 製品ページ(Identification tip 記載)

対応ソフトウェア

EAF Pro は ASCOM / INDI 準拠のフォーカサードライバーを備えており、公式マニュアル §3 に記載されている主要ソフトから利用できます。

  • ZWO 公式アプリ: ASIAIR APP、ASIStudio(旧 ASICAP)
  • ディープスカイ撮影: N.I.N.A.、SGP(Sequence Generator Pro)、TheSkyX、Maxim DL、Nebulosity
  • 惑星・月面: SharpCap、FireCapture
  • フォーカス専用: FocusMax
  • プロトコル: ASCOM(Windows)、INDI(Linux / macOS)

出典: ZWO EAF Manual EN V2.6 §3 SpecificationsAstronomics EAF Pro 商品ページ

③ 開梱・充電・初回起動

付属品の確認

ZWO 公式マニュアル §Supplied Accessories に記載されている構成は次のとおりです(EAF Pro 版)。

  • EAF Pro 本体(モーター・コントローラー内蔵)
  • モーターブラケット(標準版、多くの屈折鏡・カセグレンで使用)
  • フレキシブルカプラー(4mm 内径)
  • USB Type-C ケーブル(給電・データ兼用)
  • 取付用六角レンチ(2mm)
  • マニュアル(英文)

望遠鏡別のブラケット(EAF-BRK-TK タカハシ用/EAF-C8-C925 セレストロン C8・C9.25 用/EAF-C11-C14 C11・C14 用)や、温度センサー EAF-Sensor(100cm ケーブル)、ハンドコントローラー EAF-HC は別売の Dedicated Accessories です。

出典: ZWO US EAFN/EAF Pro Dedicated AccessoriesZWO EAF Manual EN V2.4 §Supplied Accessories

初回充電の推奨手順

EAF Pro のバッテリー動作温度は次のとおりです。

  • 充電時の許容温度: 0℃〜45℃
  • 放電(使用)時の許容温度: -10℃〜40℃
  • 推奨保管温度: 15℃ ± 10℃

低温下(0℃以下)ではリチウムイオン電池は充電できない仕様です。冬季の遠征後は必ず室温に戻してから充電してください。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.4(Battery Operating Temperature 記載)

バッテリー稼働時間の公式試験値

ZWO 公式が示している稼働時間は「1 時間あたり 2 回のオートフォーカス動作を、1 夜 8 時間、7 夜連続で実行できる」という条件下での試験結果です。単純換算すると 1 週間で約 112 回のオートフォーカスに耐える計算になります。

実運用ではこれ以外にも、待機時消費・Bluetooth 常時接続・低温下でのバッテリー効率低下があるため、遠征前には必ずフル充電してから出発することを推奨します。USB Type-C ケーブルを ASIAIR や USB 電源に接続しておけば給電と充電が同時に行われるため、長時間セッションで残量を気にせず使いたい場合は有線接続を選択してください。

出典: ZWO 公式 EAFN/EAF Pro 製品ページ(Battery Endurance 記載)/Starizona EAF Pro 商品説明

④ 望遠鏡への取付

共通の取付手順

ZWO 公式マニュアル §6 Connecting your EAF の手順に沿って施工します。

  1. 望遠鏡フォーカサーの「粗動ノブ」を、適切なサイズのレンチで取り外す。
  2. フレキシブルカプラーをフォーカサー軸に差し込み、ロックネジ(六角)で固定する。EAF Pro / EAFN は内径 4mm 側を、旧 EAF は 5mm 側を使用する。
  3. ブラケットをフォーカサー本体に固定する。
  4. ブラケットに EAF Pro 本体をネジ止めする。
  5. 取付が堅牢か(ぐらつき・遊びがないか)を目視・触感で確認する。
  6. USB Type-C ケーブルを ASIAIR / PC / 冷却カメラ USB2.0 ポート等に接続する(有線利用時)。必要に応じて温度センサー EAF-Sensor を 3.5mm ジャックに挿す。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.6 §6 Connecting your EAF

標準ブラケット対応フォーカサー

マニュアル §4 Installation に列挙されている標準ブラケット対応機材は次のとおりです。

  • SkyWatcher アストロフォトグラフィー系(Astrophotography Reflectors、Black Diamond、Dobsonians、Maksutov-Newtonians)
  • TS Optics
  • Astro Tech
  • Feather Touch
  • SharpStar 各機種
  • SkyRover 各機種
  • Explore Scientific 各機種

ZWO 公式の互換機材リスト(EAF Support List)に掲載されている望遠鏡は上記より広範囲です。購入前に、自分の鏡筒名で公式リストを検索して確認してください。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.6 §4 InstallationZWO EAF Support List(公式)

Sharpstar / FeatherTouch などの Curved Saddle

Sharpstar や FeatherTouch のような曲面(Curved Saddle)フォーカサーには専用手順があります。マニュアル §6 に「元のロックネジ 1 本+スペーサー 3 個で EAF を固定する」と明記されており、EAF 底面には安定を確保するための溝が加工されています。標準ブラケットのようにモーター側でネジ止めするのではなく、フォーカサー側のロックネジを流用する点に注意してください。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.6 §6 Connecting your EAF(Curved focusing seats 記載)

タカハシ・セレストロン SCT 用の別売ブラケット

ZWO 公式アクセサリーとして次の専用ブラケットが用意されています。EAF Pro / EAFN 用(4mm カプラー)と旧 EAF 用(5mm カプラー)の 2 種類が同梱されるため、機種に合わせて選択してください。

品番 対応望遠鏡 カプラー
EAF-BRK-TK タカハシ TSA-120 / FS-60 / FSQ-85 / FSQ-106 4mm–8mm または 5mm–8mm
EAF-C8-C925 セレストロン C8 / C9.25 SCT 4mm–12.8mm または 5mm–12.8mm
EAF-C11-C14 セレストロン C11 / C14 SCT 4mm–12.8mm または 5mm–12.8mm

出典: ZWO US EAFN/EAF Pro Dedicated Accessories

⑤ 【最重要】ゼロ位置と最大ステップ数の校正

取付が終わったら、電源投入前に必ず「ゼロ位置」と「最大ステップ数」の校正をしてください。ZWO 公式マニュアル §8 Calibration には次の警告があります。

「EAF のステッピングモーターには大きなトルクがあります。フォーカサーの破損を防ぐため、最初にゼロ位置と最大ステップ数を設定することを推奨します」(原文: There is significant torque from the EAF stepper motor. We recommended setting the 0 position and the maximum number of steps as a first step to prevent possible damage to the focuser.)

校正を飛ばすと、オートフォーカス時にモーターがフォーカサーの機械的リミットを超えて押し続け、ラック&ピニオンの歯欠け・軸受の座屈・接眼部の脱落を招く可能性があります。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.4 §8 CalibrationZWO EAF Software Installation and Configuration

標準ブラケットの校正手順

  1. 接眼部(ドロチューブ)を完全に引き込んだ状態にする。この位置を「0 ステップ」として ASIAIR / ASIStudio / ASCOM の設定画面から Set Zero を実行する。
  2. 接眼部を最大まで繰り出した状態の 1〜2 mm 手前まで手動または微動でゆっくり動かし、その時点のステップ数を「最大ステップ数(Max Step)」として登録する。
  3. 最大ステップ数は「フォーカサーの全ストロークを超えない値」に設定する(マニュアル §8 の推奨)。安全マージンとして 5〜10% 引いた値を採用するとより安心。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.4 §8 Calibration(Standard Bracket 記載)

Curved Saddle(Sharpstar / FeatherTouch)の校正手順

  • ゼロ位置は「フォーカスホルダー中央付近」に設定する(フォーカサーストロークの真ん中を 0 に置き、両側に±できるようにする)
  • 最大ステップ数は「フォーカスシートストローク以内」に設定する

出典: ZWO EAF Manual EN V2.4 §8 Calibration(Curved Saddle Installation 記載)

昼間・遠景でおおよそのピント位置を控える

公式マニュアル §9 では、初回セットアップ時に「昼間、建物などの遠景を使ってピント合わせを行い、その時点のステップ数をメモしておく」ことを推奨しています。夜間にゼロから探すよりも遥かに早くピントに到達できます。屈折・SCT・ニュートン、いずれも同様に有効です。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.6 §9 Manual/Automatic Focus Control

⑥ ASIAIR での使い方(有線/Bluetooth 両対応)

有線(USB Type-C)接続時

ASIAIR の USB2.0 ポートに EAF Pro の Type-C ケーブルを挿すだけで自動認識されます。ASIAIR APP の右側ツールバーに EAF アイコンが表示され、そこから設定画面(Set Zero / Max Step / Reverse / Fine / Coarse ボタン等)にアクセスできます。有線接続の場合、EAF Pro は ASIAIR からの USB 給電で動き、内蔵バッテリーは同時に充電されます。

ASIAIR での手動フォーカス手順は、標準版 EAF と共通で次のとおりです(マニュアル §9)。

  1. プレビュー画像が「大きくぼやけている」状態のときは coarse(粗) ボタンで大きく動かす。
  2. 「少しぼやけている」状態になったら fine(細) ボタンで微調整する。
  3. Done(完了)でピント確定。
  4. 必要に応じ Goto ZERO で 0 位置に戻す。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.6 §9 Manual/Automatic Focus Control(ASIAIR 手順)ZWO ASIAIR Focus tutorial(公式)

Bluetooth 接続時(ASIAIR Plus RK 版・ASIAIR カメラ機種のみ)

Bluetooth 接続では USB ケーブルを外して EAF Pro 本体の電源スイッチを ON にします。ASIAIR APP の EAF 設定画面から Bluetooth デバイスをスキャンし、検出された EAF Pro を選択してペアリングします。ペアリング完了後は、以降の起動時に自動で再接続されます。

Bluetooth 接続時は EAF Pro が内蔵バッテリーで動作します。長時間セッションで残量が心配な場合は、途中で USB Type-C ケーブルを挿せば給電と充電が同時に走ります(無線通信は Bluetooth のまま維持)。

出典: ZWO 公式 EAFN/EAF Pro 製品ページ(Bluetooth 5.0 記載)/Astronomics EAF Pro 商品ページ

反転(Reverse)方向の設定

フォーカサーによっては、IN / OUT の物理的な方向とソフト側の指示方向が逆になっていることがあります。ASIAIR / ASCOM ドライバーの設定に「Reverse(逆転)」チェックボックスがあるので、次の要領で確認してください。

  1. ASIAIR で fine(細)ボタンを 100 ステップ「+」方向に押す。
  2. フォーカサードロチューブが繰り出される(伸びる)ことを確認する。
  3. 逆に引き込まれる場合は Reverse を有効化して再テスト。

Reverse を正しく設定しないと、後述のオートフォーカス時に V 曲線が反対側に振れて失敗するので、必ずオートフォーカス実行前に済ませてください。

出典: ZWO EAF Software Installation and Configuration(Reverse 記載)

⑦ オートフォーカスの基本設定(ステップサイズ・ルーティン)

V 曲線とオートフォーカスの原理

電動フォーカサーによるオートフォーカスは、露光を挟みながらフォーカサーを一定ステップずつ動かし、各サンプルの星像半径(HFR:Half Flux Radius)を測って V 字(もしくは双曲線)を描き、その最下点を「合焦位置」として算出します。V 曲線の質を決める主要パラメータは次の 3 つです。

  • ステップサイズ(Step Size): 1 サンプル間で動かすステップ数。小さすぎると V が浅くなり最下点が特定できず、大きすぎると V が粗く精度が落ちる。
  • サンプル数(Number of Steps / Sample Points): V 曲線を描く点の総数。両側で 4〜6 点ずつ、合計 8〜12 点あるとフィッティング精度が上がる(NINA 公式が推奨)。
  • 露光時間(Exposure): サンプル 1 点あたりの露光。星像 SNR を確保しつつ、飽和させない範囲で設定。

出典: NINA 公式 Auto-Focus ドキュメント(Curve Fitting / Step Size セクション)

ステップサイズの決め方(公式・NINA 準拠)

NINA 公式は次の手順でステップサイズを決めることを推奨しています。

  1. おおよそピントが合っている状態から、フォーカサーを外側/内側それぞれに動かし、「星像がまだ検出できる限界のオフセット」を探す。
  2. そのオフセット値の 80% を採用する。
  3. Initial Offset Steps(既定 4)で割った値が「Auto Focus Step Size」の目安。

ASIAIR 側では既定のステップサイズが 30 前後で、標準的な屈折望遠鏡ではそのまま実用になることが多いです。焦点距離が長い機材(例:C11 EdgeHD + FeatherTouch)ではステップサイズを 60 程度まで上げないと V 曲線が谷底に到達しないことがあります。

ASIAIR で「moved less than 900 steps」のようなエラーが出る場合は、ステップサイズが小さすぎて総移動量が下限を割っています。5〜10 刻みで段階的に増やして、エラーが消える最小値を採用してください。

出典: NINA 公式 Auto-Focus ドキュメント(Step Size / Initial Offset Steps 記載)

NINA の曲線フィット法(Curve Fitting)

NINA では次の 5 種類のフィット法が用意されています。

フィット法 説明 向いている場面
Trend Lines(既定) 左右それぞれ誤差加重直線を引き、交点を最下点とする サンプル外側まで振り切る場合、外れ値耐性が高い
Parabolic 誤差加重の放物線フィット 臨界焦点ゾーン近傍でサンプリングする場合
Hyperbolic 誤差加重の双曲線フィット 物理的にはフォーカス曲線は双曲線に近い。多くのユーザーの推奨
Parabolic + Trends 放物線と直線交点の平均 ハイブリッドで安定性を上げたい場合
Hyperbolic + Trends 双曲線と直線交点の平均 同上、多くの機材で汎用的

出典: NINA 公式 Auto-Focus ドキュメント(Curve Fitting セクション)

ASIAIR / ASIStudio でのオートフォーカス手順

マニュアル §9 の ASIStudio(旧 ASICap 系)AF 手順は次のとおりです。ASIAIR APP も原理・UI は同等です。

  1. カメラをオンにする。
  2. 縦ツールバーの EAF アイコンをタップ。
  3. 横ツールバーの AF アイコンをタップ。
  4. EXP(露光時間)と Bin モードを設定する。
  5. Run ボタンをタップして待つ(V 曲線が描画される)。
  6. 完了。ソフトが最下点にフォーカサーを移動する。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.6 §9 Manual/Automatic Focus Control(ASIStudio / ASIAIR 手順)

SGP(Sequence Generator Pro)での注意点

マニュアル §Autofocus Control には「SGP を使うときは、ASCOM ドライバの freewheel(フリーホイール)設定を 0 にすること。合焦速度に悪影響が出るのを防ぐため」と明記されています。SGP で AF がやたら遅い、または一貫性がない場合は、まずこの freewheel を確認してください。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.4 §Autofocus Control(SGP 記載)

臨界焦点ゾーン(CFZ)とステップサイズの関係

フォーカサーが「星像を許容範囲内に保てる合焦位置の余裕」を臨界焦点ゾーン(Critical Focus Zone, CFZ)と呼びます。伝統的な近似式では次のように与えられます(λ は光の波長、f は光学系の実効 F 値)。

CFZ ≈ 4.88 × λ × f² (単位:μm)

実効 F 値が小さい光学系(例:F/5 の高速屈折)ほど CFZ は狭くなり、ステップサイズを小さくして精度を上げる必要があります。逆に F/10 の SCT では CFZ が広く、ステップサイズを粗めにしても十分な合焦精度が得られます。1 ステップの機械的移動量が EAF Pro の減速比 1:128 と極めて細かい(≈2.812μm/ステップの前後)ため、EAF Pro は多くの光学系で十分な合焦分解能を持っています。

出典: 天文コミュニティ標準の Airy 回折限界近似式(CFZ = 4.88 × λ × f²)/Astronomics EAF Pro 商品ページ(micron-level positioning 記載)。ZWO 公式マニュアルには CFZ の数式は記載されていないため、本記事は一般的な光学工学の近似式として掲載しています。

⑧ バックラッシュ補償の考え方と実測

バックラッシュとは

フォーカサーのラック&ピニオンやヘリコイドには、機械的な「あそび(バックラッシュ)」があります。IN 方向に動かした後で OUT 方向に反転すると、モーターが数ステップ回転してもフォーカサードロチューブが実際に動き始めない領域が存在します。これを補償しないと、V 曲線の片側だけ谷底に到達せず、平坦なプロファイルになって AF が失敗します。

実測手順(マニュアル準拠)

公式マニュアル §Measuring the Focuser Backlash の手順は次のとおりです(ASICap を例に)。

  1. coarse ステップサイズを 1000、fine ステップサイズを 10 に設定する。
  2. Coarse ボタンを押して、フォーカサーを OUT 方向に 1000 ステップ動かす。
  3. fine ステップサイズを 10 のままに、IN 方向へ 10 ステップずつクリックしていく。
  4. ドロチューブが「実際に動き始めた」瞬間までのクリック回数を数える。
  5. クリック回数 × 10 が、実測バックラッシュ(ステップ数)となる。
  6. Set Backlash の設定ボックスに、実測値を入力する。
  7. より精密に測りたい場合は、fine ステップサイズを 5 にして再測定する。

ZWO 標準 EAF のフォーカサーでは、実測バックラッシュが 30〜40 ステップ前後のことが多いですが、フォーカサーの個体・機材構成で大きく変わるため、必ず自機で実測してください。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.4 §Measuring the Focuser Backlash

Absolute(絶対値)と Overshoot(オーバーシュート)の使い分け

NINA 公式ドキュメントは、バックラッシュ補償を 2 種類に整理しています。

  • Absolute(絶対値方式): 方向反転時に固定ステップ数を上乗せする。実測バックラッシュを正確に測る必要がある。バックラッシュが小さいフォーカサー向き。
  • Overshoot(オーバーシュート方式): 目標位置を通り越して行き過ぎさせ、必ず同じ方向から目標に戻る。実測値がある程度ずれていても許容範囲が広く、寛容。多くのフォーカサーで安全に使える。

迷ったら Overshoot を選び、実測バックラッシュより少し大きめの値を設定するのが安全策です。方向反転が挟まらないので、V 曲線の片側だけ歪む症状を根本的に回避できます。

出典: NINA 公式 Auto-Focus ドキュメント(Backlash Compensation セクション)

ソフト側とドライバ側の二重設定を避ける

ZWO EAF の ASCOM ドライバー自体にもバックラッシュ設定欄があります。撮影ソフト(NINA / SGP / ASIAIR)側とドライバー側の両方に値を入れると、補償が二重にかかって過補正になります。原則として「ソフト側に入れる」か「ドライバー側に入れる」かのどちらか一方を選び、他方は 0 に戻してください。ASIAIR は内部で AF ルーティン中にバックラッシュを自動処理するため、ASIAIR 使用時は ASCOM 側は関係しません。

出典: NINA 公式 Auto-Focus ドキュメント(Backlash Compensation セクション、二重設定の警告)

⑨ 温度センサーと温度補償

なぜ温度補償が必要か

望遠鏡の鏡筒・接眼部はアルミや真鍮で構成されており、気温が下がるほど熱収縮でわずかに短くなります。焦点距離 800mm クラスの屈折で夜半までに気温が 10℃ 下がると、鏡筒の伸縮量は焦点面で数十 μm オーダーになり、これは臨界焦点ゾーンを容易に超えます。何もしなければ、深夜になるほど星像が肥大していきます。

EAF Pro の温度センサー端子と別売プローブ

EAF Pro には 3.5mm オーディオジャック(センタープラス)の温度センサー端子が備わっています。ここに ZWO 純正の温度プローブ「EAF-Sensor」(100cm ケーブル、3.5mm 径)を接続することで、環境温度を撮影ソフトに渡せるようになります。EAF-Sensor は EAFN / EAF Pro / 旧 EAF いずれとも共通で使えます。

出典: ZWO US EAFN/EAF Pro Dedicated Accessories(EAF-Sensor 記載)/ZWO EAF Manual EN V2.6 §3 Specifications(Sensor/Hand Controller Interface 3.5mm audio, Centre Positive)

温度補償のセットアップ手順(ASCOM / NINA / SGP)

  1. EAF Pro に EAF-Sensor を接続する(3.5mm ジャック)。温度センサーは接眼部・鏡筒近傍にテープで固定し、外気にさらす。
  2. ASIAIR / ASCOM ドライバーで温度取得が有効になっていることを確認する(温度表示が動くこと)。
  3. 撮影ソフト側で温度補償の「係数(ステップ数 / ℃)」を実測して入力する(例: 5℃ 下がると 20 ステップ IN 方向に動かす必要があれば、係数 = -4 ステップ/℃)。
  4. 係数の求め方: 定温時にオートフォーカスで合焦位置を記録 → 気温が数℃ 変化した時点で再度 AF → ステップ差を温度差で割る。
  5. 撮影中は AF を「定期実行(例: 30 分ごと or 温度が 1℃ 以上変化したら)」に設定し、温度補償で微調整・AF で再校正のハイブリッド運用が安定。

出典: ZWO EAF Manual EN V2.6 §3 Specifications(温度センサー端子仕様)/NINA 公式 Auto-Focus ドキュメント(温度補償の一般手順)

フィルターオフセット(ナローバンド運用)

Hα / OIII / SII のようなナローバンドフィルター、LRGB のような広帯域フィルターでは、フィルターごとに厚みや反射率が異なるため、合焦位置が数十〜数百ステップずれます。ASIAIR / NINA / SGP には「フィルターオフセット」機能があり、L フィルターで AF して、他フィルターへは相対オフセットで飛ばす運用が可能です。

  • L(もしくは最も明るいフィルター)で AF を打ち、合焦ステップ数を記録
  • 他フィルターに切り替え、それぞれ 1 回ずつ AF を打って合焦ステップ数を記録
  • L との差分をフィルターオフセット表に入力
  • 以後、撮影シーケンス中はフィルター切替で自動オフセットが適用される

出典: NINA 公式 Auto-Focus ドキュメント(Filter Offsets 記載)

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本記事で扱った EAF Pro とその周辺機材(温度プローブ・ハンドコントローラー・対応 ASIAIR)は次のとおりです。ASIAIR Plus は RK 版と CM4 版で Bluetooth 対応が異なる点、必ず購入前に確認してください。

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最終更新: 2026-08-25/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式マニュアル(EAF Manual EN V2.4 / V2.6)と ZWO 公式製品ページ(EAFN/EAF Pro)に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。

よくある質問(FAQ)

Q1. EAF Pro を USB Type-C で有線接続すると、内蔵バッテリーは充電されますか?

A. はい、USB Type-C 給電(5V 500mA)を受けている間はデータ通信と充電が同時に行われます。長時間セッションで残量を気にせず使いたい場合は、有線接続を選択してください。

Q2. うちの ASIAIR は Plus ですが、EAF Pro と Bluetooth 接続できますか?

A. Plus の RK 版なら可能、CM4 版は不可です。本体ラベルの IC 番号末尾が「ASIAIRPLUS」なら RK 版、「RPICM4」なら CM4 版と判別できます(ZWO 公式製品ページ記載)。CM4 版でも USB Type-C 有線接続なら EAF Pro を使用できます。

Q3. EAF Pro のバッテリーはどのくらい持ちますか?

A. ZWO 公式試験値では「1 時間あたり 2 回のオートフォーカス動作、1 夜 8 時間、7 夜連続」で 1 週間持つとされています。実運用では低温や Bluetooth 常時接続の影響で短くなる可能性があるため、遠征前のフル充電を推奨します。

Q4. ゼロ位置と最大ステップ数を設定しないで使うとどうなりますか?

A. ZWO 公式マニュアル §Calibration に「大きなトルクによりフォーカサーを破損する可能性がある」と警告されています。ドロチューブが機械的リミットに到達しても停止指令が出ないため、無理に押し切ってラック&ピニオンやドロチューブ受けを損傷する恐れがあります。必ず取付直後・電源投入後すぐに校正してください。

Q5. オートフォーカスのステップサイズは何から決めればいいですか?

A. NINA 公式は「星像がまだ検出できる限界オフセットの 80% を、Initial Offset Steps(既定 4)で割った値」を推奨しています。ASIAIR は既定 30 前後で始まり、標準的な屈折望遠鏡ではそのまま使えることが多いです。「moved less than 900 steps」のエラーが出る場合は 5〜10 刻みで増やしてください。

Q6. バックラッシュ補償は ASIAIR 側とドライバ側の両方に入れていいですか?

A. NG です。二重補正で過補正になります。ASIAIR 使用時は ASIAIR 内部で自動処理されるので ASCOM 側は関係しません。NINA や SGP を使う場合は、ソフト側かドライバ側のどちらか一方だけに値を入れ、他方は 0 に戻してください。

Q7. 温度補償の係数(ステップ/℃)はどう決めますか?

A. 実測が最も確実です。夕方の定温時にオートフォーカスで合焦位置(ステップ数)を記録し、気温が数℃ 変化した時点で再度 AF、その差分を温度差で割った値を係数として入力します。運用中は「30 分ごと or 1℃ 変化ごとに再 AF」というハイブリッド設定が安定します。

Q8. EAF Pro を Sharpstar や FeatherTouch フォーカサーに取り付けるコツはありますか?

A. これらは曲面(Curved Saddle)タイプで、標準ブラケットとは取付方法が異なります。マニュアル §6 の指定どおり「元のロックネジ 1 本+スペーサー 3 個で固定」してください。EAF 底面には安定を確保する溝があり、単ネジ固定でも十分な保持力が得られます。

Q9. EAF Pro は N.I.N.A. や SGP で使えますか?

A. 使えます。ASCOM / INDI ドライバー経由で N.I.N.A.、SGP、TheSkyX、Maxim DL、SharpCap、FireCapture、FocusMax、Nebulosity など主要ソフトに対応しています(マニュアル §3 記載)。SGP を使うときは ASCOM ドライバの freewheel を 0 に設定してください(マニュアル §Autofocus Control 記載)。

Q10. EAF Pro を安く買う方法はありますか?

A. 公式 LINE で最新価格と在庫状況をご案内しています。「EAF Pro」とメッセージをお送りいただければ、その時点の最安値をお伝えします。ご購入前にお気軽にお問い合わせください。

参考にした一次情報

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最終更新: 2026-08-25/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式マニュアル(EAF Manual EN V2.4 / V2.6)と ZWO 公式製品ページ(EAFN/EAF Pro)に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。