ZWO ASI585MC Air 完全ガイド|3-in-1 一体型スマート冷却カメラのはじめての運用【2026 年最新版】
ZWO ASI585MC Air 完全ガイド|3-in-1 一体型スマート冷却カメラのはじめての運用【2026 年最新版】
ASI585MC Air は、天体撮影カメラ・ガイドカメラ・ワイヤレススマートコントローラー(ASIAIR 相当)の 3 機能を 1 つのボディに統合した ZWO のワイヤレススマートカメラです。冷却付き CMOS ボディに Sony IMX585(STARVIS 2)主センサーと SC2210 モノクロガイドセンサーを内蔵し、ケーブル 1 本でスマホ・タブレットから極軸合わせ〜Autorun 撮影までの全工程を操作できます。本ガイドではメーカーマニュアルと公式製品情報のみを根拠に、「初めての 1 台」として選ぶための仕様、対応マウント、初回セットアップ、一晩の運用手順、注意点までを一次情報だけで整理します。
① ASI585MC Air とは何か|「3-in-1 統合スマートカメラ」を分解して理解する
ZWO ASI585MC Air は、同社が「Wireless Smart Camera」と定義する新しいカテゴリの製品です。ZWO 公式マニュアルの冒頭は次のように説明しています。
「This camera is a highly integrated smart Wi-Fi device that integrates a deep-space sensor, a guiding sensor and a smart astrophotography controller.」(本カメラは、深宇宙センサー・ガイドセンサー・スマート天体撮影コントローラーを高度に統合した Wi-Fi デバイスである)
出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §Foreword
従来、天体撮影を始めるには「冷却 CMOS カメラ」「オートガイド用のカメラ + ガイド鏡(あるいは OAG)」「ASIAIR や PC のコントローラー」の 3 つを個別に用意し、ケーブル・電源・制御ソフトをそれぞれ設定する必要がありました。ASI585MC Air はこれを 1 本のボディに畳み込み、次の 3 機能を 1 台にまとめています。
- 主センサー(Deep-Sky Imaging) ─ Sony IMX585 STARVIS 2 世代 CMOS、1/1.2''、3840×2160、native 12bit ADC、Full Well 40Ke。
- ガイドセンサー(Guiding) ─ SC2210_BW モノクロ、1/1.8''、1920×1080、Read Noise 0.6〜3.2e、QE peak 92% @500nm。
- ASIAIR 相当のスマートコントローラー ─ RAM 2GB DDR4、eMMC 256GB、Wi-Fi 802.11 b/g/n/ac(2.4G/5G)、USB 2.0 x4、DC12V x3、Type-C x1。
出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §1 Product Overview / §3.2 Specifications
ZWO は本製品の設計思想を「Thanks to the compact design, the ASI585MC Air only needs one USB cable for control. It reduces potential cabling issues and improves setup speeds. You don't need a separate OAG, guide camera and ASIAIR.」と説明しており、別体の OAG・ガイドカメラ・ASIAIR を用意せずに一体運用できる点を明示しています。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §1 Three-in-one design
② 主要スペック一覧|「数字」で ASI585MC Air を掴む
マニュアル §3.2 に記載されている公式スペックを、初心者が最初に押さえるべき数値だけに絞って整理します(全項目は公式マニュアル §3.2 を参照)。
| 項目 | 主センサー(IMX585 / カラー) | ガイドセンサー(SC2210_BW / モノクロ) |
|---|---|---|
| センサーサイズ | 1/1.2''(対角 13.2mm) | 1/1.8''(対角 8.81mm) |
| 解像度 | 3840 × 2160(約 8.3MP) | 1920 × 1080(約 2.07MP) |
| ピクセルサイズ | 2.9μm | 4μm |
| シャッター | ローリングシャッター | ローリングシャッター |
| 読み出しノイズ | 0.7〜6.67e(HCG gain 252 で 0.7e) | 0.6〜3.2e |
| ピーク量子効率 | 91% | 92% @500nm |
| フルウェル | 40Ke | 8.78Ke |
| ダイナミックレンジ | 12 stops(12bit ADC) | 11.43bit |
| 露出時間 | 32μs 〜 2000s | 32μs 〜 10s |
| 最大フレームレート(例) | 1920×1080 で 10.8fps、640×480 で 30fps(RAW8) | 1920×1080 で 8.5fps |
| Unity Gain / HCG Gain | Unity 198 / HCG 252 | Unity 68 / HCG 106 |
出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §3.2 Specifications / §3.4 ADC
ボディ・電源・ネットワーク側の共通スペックは次の通りです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| ボディ寸法 | Ø78mm × 高さ 108mm(アンテナ 94mm 別) |
| 重量 | 635g |
| 動作/保存温度 | 動作 -20〜50℃/保存 -20〜60℃ |
| 動作/保存湿度 | 動作 20〜90%/保存 30〜70% |
| 電源 | DC12V @ 3〜10A(D5.5×2.1mm、センタープラス)、11〜14V リチウムバッテリー可 |
| 最大消費電力 | 24.6W |
| 冷却 | 二段 TEC、環境比 -30〜-35℃(環境温度 30℃時の測定値) |
| Anti-dew ヒーター | 内蔵、消費電力 2.4W |
| DDR バッファ | 2GB DDR4 |
| 内蔵ストレージ | eMMC 256GB(USB 外付けストレージも対応) |
| Wi-Fi | 802.11 b/g/n/ac(2.4GHz / 5GHz)、外部デュアルバンドアンテナ、開放環境で理論到達 約 20m |
| アダプター/バックフォーカス | M42×0.75/Back Focus 12.5mm または 17.5mm |
| 主センサー前フィルター | UV/IR Cut コーティング(保護窓兼 IR カット、D48×2mm) |
③ STARVIS 2 / HCG / Zero Amp Glow ─ 主センサーの何が「新しい」のか
ASI585MC Air の主センサーは Sony が発表した「STARVIS 2」世代の裏面照射型(BSI)CMOS です。ZWO 公式解説では次の 3 点が撮影画質に効くと明記されています。
STARVIS 2 の高感度・広ダイナミックレンジ
ZWO は「ASI585MC Air's main sensor based on Sony STARVIS 2 technology. Sony's back-illuminated CMOS image sensor improves sensitivity and noise reduction ─ the key factors to enhancing image quality.」と説明しており、背面照射型構造により感度と低ノイズを同時に稼げる点を強調しています。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §1 STARVIS 2 technology
Zero Amp Glow(アンプグロー無し)
従来 CMOS では長時間露光の隅に「アンプグロー」と呼ばれる淡い赤外由来のグローが写りますが、ASI585MC Air は「zero-amp glow circuitry」により、高ゲイン・長時間露光でもこれが出ないと公式マニュアルで説明されています。ダーク補正の負担が減り、DSO の淡い階調が救済しやすくなります。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §1 No amp-glow
HCG モード(High Conversion Gain)と native 12bit ADC
ZWO 公式ブログレビューは「When the gain is 252, the HCG mode is automatically turned on and the Dynamic range reaches a level close to 12bit. The readout noise is as low as 0.7e.」と説明しており、Gain 252 で HCG モードが自動有効化され、12bit 相当のダイナミックレンジを保ったまま Read Noise を 0.7e まで下げられます。ZWO 公式仕様では Unity Gain = 198/HCG Gain = 252 と定義されています。出典: ZWO Official Blog: ASI585MC Air Full Review (2025/11/05) / ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §3.2
④ ASI585MC Air は誰に向くカメラか|ASIAIR 単体・ASI2600MC Air との違い
ZWO のスマート系ラインアップは、名前が似ていて選び分けが難しくなりがちです。公式仕様と製品ページ、ZWO のブログレビューから読み取れる範囲で、3 系統を並べます。
| 系統 | 主センサー | ガイド/コントローラー | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| ASI585MC Air(本記事) | IMX585 / 1/1.2''/8.3MP/2.9μm | SC2210 ガイド+ASIAIR 内蔵 | 300〜800mm 帯の屈折・軽量鏡筒、旅行・遠征運用、ケーブル最小化したい人 |
| ASI2600MC Air | IMX571 / APS-C/26MP/3.76μm | ガイドセンサー+ASIAIR 内蔵 | APS-C の広視野・高解像度が必要な DSO 撮影メイン運用 |
| ASIAIR Plus 256G(別体コントローラー) | なし(カメラは別途) | 単体コントローラー、既存カメラを流用 | 既に ZWO 冷却カメラを持っていて、コントローラーだけ追加したい人 |
出典: ZWO 公式製品ページ ASI585MM/MC Air / ZWO ASTRO USA 商品ページ / ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §3.2(各社スペック値)
ZWO 公式レビューでは、ASI585MC Air は「travel kit for everyone, from beginner to advanced astrophotographer」(初心者から上級者まで、旅行キットに理想的な 1 台)と位置付けられており、鏡筒サイズや設営時間を絞りたい初回導入層と、コンパクトなセカンド機を求める上級者の両方が想定読者です。出典: ZWO Official Blog: ASI585MC Air Full Review (2025/11/05)
⑤ ボディ外観・ポート構成|どこに何を差すか
マニュアル §3.1 External View に基づく、ボディ側の主要インターフェースは次の通りです。
| ポート・要素 | 数量 | 用途と注意点 |
|---|---|---|
| DC IN/OUT(D5.5×2.1mm) | 3 | DC12V @ 3〜10A(センタープラス)。3 口とも入出力兼用だが、入力に使えるのは同時に 1 つのみ。残り 2 口は露払いヒーターや赤道儀への電源出力に。 |
| USB 2.0(Type-A) | 4 | EAF・EFW・赤道儀の HC ポート等を接続。回転時のケーブルの絡み防止のため、余長のとりまわしに注意。 |
| USB Type-C | 1 | PC 直結用。撮影後に eMMC 内の画像を PC に転送する用途。転送中は絶対に抜かない。 |
| Wi-Fi アンテナポート | 1 | 同梱の外部デュアルバンドアンテナを手で装着してから電源投入。 |
| RESET ボタン | 1 | 5 秒長押しで Wi-Fi ホットスポット名・パスワード・ブリッジ設定を初期化。音声で「Device is reset, ready to connect」の通知後に指を離す。 |
| Power 表示(赤 LED) | 1 | 電源正常時は常時点灯、異常時は消灯。App から OFF に切替可能。 |
| ガイドセンサー用フォーカスノブ | 1 | ボディ外部の物理ノブ。ガイドセンサーのピント(無限遠)は日中に遠景で先に合わせておく運用が公式推奨。 |
| 磁気浮上式冷却ファン | 1 | 「Ultra-quiet magnetic levitation fan」(マニュアル §3.1 記載)。通気を塞がない設置を。 |
出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §3.1 External View / §3.2 / §6.2 Power Supply Connection
⑥ 同梱物と手元にあるべきもの
米国 Astronomics の商品ページに掲載されている ASI585MC Air の付属品リストは次の通りです(購入時期・仕向地により変わる可能性があります。開梱後は同梱チェックリストで必ず照合してください)。
- ASI585MC Air 本体(Wi-Fi アンテナ別)
- 外部デュアルバンド Wi-Fi アンテナ(本体長 94mm)
- DC 電源ケーブル(1m)+ 延長ケーブル(1.5m、オス-メス)
- USB ケーブル ×2
- T2 エクステンダー 21mm
- M48 アダプタ
- M42-M48 チルタープレート
- マジックテープストラップ
- 六角レンチ
出典: Astronomics ASI585MC Air 商品ページ(付属品)
本体側で別途用意しておくべきものは次の通りです。
- DC12V 電源(3〜10A、D5.5×2.1mm・センタープラス、または 11〜14V リチウムバッテリー)。範囲外の電源を接続するとカメラを不可逆的に破損すると公式が警告しています。
- スマホ/タブレット:iOS 12 以上、または Android 8 以上(RAM 4GB 以上)。ZWO 推奨は iOS 15+ / Android 12+ RAM 6GB 以上。
- 望遠鏡と赤道儀:後述の焦点距離帯・対応マウントを参照。
- ASIAIR App:App Store / Google Play で「ASIAIR」を検索、または ZWO 公式サイトから APK を入手。
⑦ 望遠鏡・赤道儀との組み合わせ|「2.9μm ピクセル」をどう活かすか
推奨焦点距離帯(image scale から逆算)
DSO 撮影の well-sampled(適切なサンプリング)目安は image scale ≒ 1.0〜2.0 arcsec/pixel と一般に説明されます。ASI585MC Air の 2.9μm ピクセルでこの範囲に収めるには、次式で計算した焦点距離帯が目安になります。
image scale [arcsec/pixel] = 206.265 × pixel size [μm] / focal length [mm]
- 2.0 arcsec/pixel を得るには 焦点距離 ≒ 299mm
- 1.0 arcsec/pixel を得るには 焦点距離 ≒ 598mm
公式レビュー・第三者レビューでは、2.9μm ピクセルは 300〜800mm 帯の屈折望遠鏡や高速ニュートン、コンパクト SCT にレデューサーを組み合わせた構成と相性が良いと報告されています。出典: Astrobackyard ASI585MC Air Review(焦点距離帯と image scale の目安)
対応マウント(EQMod・Wi-Fi 経由)
ASIAIR(本カメラ内蔵コントローラー含む)は多数の GoTo 赤道儀を EQMod あるいは Wi-Fi 経由で制御できます。マニュアル §6.4〜6.5 に掲載されている主な対応マウントは次の通りです(抜粋)。
| 系統 | 代表機種 | Baud Rate(マニュアル §6.4 記載) |
|---|---|---|
| Sky-Watcher EQ 系 | EQ5 / HEQ5 / EQ6 / EQ6-R PRO / AZ-EQ5GT / AZ-EQ6GT / EQ8 / EQM-35 Pro | 既定 9600、EQ6-R PRO / AZEQ5 は 115200 |
| Sky-Watcher AZ-GTi | AZ-GTi(Wi-Fi 経由) | 11880(UDP) |
| ZWO ハーモニックドライブ | AM5 | EQMod 既定に準拠 |
| iOptron | CEM26 / GEM28 / CEM40 / GEM45 / HEM27 / HEQ5 PRO 系列 等 | EQMod 既定に準拠 |
| Celestron | AVX / CGEM II / CGX | EQMod 既定に準拠 |
接続方法の 3 パターン
- ハンドコントローラー経由(RS-232 - USB 変換 or FTDI):SynScan V3/V4、NexStar、Go2Nova、Gemini、AutoStar、PMC-8(要シリアル切替)など。
- マウント本体の USB ポート直結:SynScan V5、AM5 等の一部モデル(USB Type-B → Type-A プリンタケーブル)。
- EQDir ケーブル:EQ5/HEQ5/EQ6 系の EQMod 接続。App で [EQMod Mount] または [EQMod with SkySafari] を選択。
出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §6.4
⑧ 初回セットアップ|Wi-Fi 接続とオンラインアクティベーション
Step 1|アンテナを装着してから電源投入
マニュアル §3.10 の指示通り、外部 Wi-Fi アンテナは同梱・別体状態で届きます。使用前に手で本体のアンテナポートに装着してから電源投入します。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §3.10 Antenna
Step 2|DC12V を給電
3 つある DC ポートのいずれか 1 つに DC12V @ 3〜10A(D5.5×2.1mm、センタープラス)または 11〜14V リチウムバッテリーを接続します。給電が正常なら赤い電源 LED が点灯します。範囲外の電源はカメラを不可逆的に破損すると明記されているため、DC 端子・電圧・極性・電流容量を必ず確認してください。同時に 2 つのポートから同時給電する運用は禁止されています。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §2 Notice for Use / §6.2 Power Supply Connection
Step 3|スマホ側で Wi-Fi 接続
スマホの Wi-Fi 設定でカメラのホットスポット(既定名 585AIR_<serial>、初期パスワード 12345678)に接続します。ホットスポット名とパスワードは ASIAIR App のネットワーク設定から後で変更できます。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §6.3 Network Connection / §7.2.2 Wireless Smart Camera
Step 4|ASIAIR App を起動しオンラインアクティベーション
ASIAIR App を起動すると、初回のみ「アクティベーション」画面が表示されます。マニュアル §2 Notice for Use には「Online authorization is only required for your first use of the camera. It needs an Internet connection so make sure the network at your place works well.」とあり、インターネット接続が必須です。アクティベーション中は App をバックグラウンドに送ったり閉じたり、カメラの電源を切ってはいけない、と公式が明記しています。
iPad などモバイル通信のない Wi-Fi 専用端末では、以下の 2 段階切替が必要です。
- App のアクティベーション画面が出たら、端末側で Wi-Fi を家庭ネットワークなどインターネット接続可能な回線に切り替え、App に戻り「Get authorization code online」をタップ。
- App が「Authorization code obtained successfully」と表示したら、端末側 Wi-Fi をカメラの Wi-Fi に戻し、App に戻って「Activate」をタップ。
出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §2 Notice for Use (7)(8) / §6.3 Network Connection
Step 5|ファームウェア更新の案内が出たら適用
ASIAIR App は起動時に本体ファームウェアの更新を検出し、通常は数分以内で完了します。もし更新が失敗した場合は「exit the ASIAIR App. Unplug the power cable from the wireless smart camera, then plug it back in to restart the device. Try the update process again.」(App を終了し、電源を抜き差ししてから再試行)と公式手順に記載があります。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §9.1 Firmware Update
Step 6|Gear Profile を作成
App の「Gear Profile」で、位置情報(緯度・経度は現地と一致していることを確認)、主鏡の焦点距離、ガイドセンサーの焦点距離を設定します。ガイドセンサーの焦点距離は「Fill in Main Scope FL」ボタンで主鏡の焦点距離を自動反映できます(本カメラは主・ガイド共に同一光路のため)。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §7.2.1 Gear Profile / §7.2.4 Guiding
⑨ 一晩の運用ワークフロー|Focus → Polar Align → GoTo → Guide → Autorun
ASIAIR App で ASI585MC Air を運用する場合の標準的な DSO 撮影フロー(マニュアル §7.3 準拠)は次の通りです。
1. 主鏡のピント合わせ
App 上部の「Main Camera」を接続し、右側の操作モードを「Focus」に切替。「Start」で連続撮像しながら手動フォーカサーで星が最小になる位置を探ります。EAF 装着時は「AF」ボタンで HFD 最小化の自動微調整が可能。マニュアルは「the smaller the HFD value under Bin1, the better」(Bin1 で HFD が最小のところが最良)と明記しています。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §7.3.1 Telescope Focusing
2. ガイドセンサーのピント合わせ
マニュアルの推奨は「before starting astrophotography at night, please adjust the guide camera to infinity focus. You can adjust it during the day with the help of extremely distant landscape objects.」(夜間の撮影前に、日中に遠景でガイドセンサーを無限遠に合わせておく)。本体外部の物理フォーカスノブで一度合わせておけば、以後の運用が安定します。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §7.2.4 Guiding / §7.3.1
3. 極軸合わせ(Polar Alignment)
赤道儀のホームポジション(北 or 南向き・極軸角度は現地緯度)を目安に、App の Polar Alignment を起動。カメラが 1 枚目を撮ってプレートソルブ、赤道儀を約 60 度回して 2 枚目を撮って再ソルブ、その差分から極軸偏差を算出します。「A total error within 5' (arc minutes) is acceptable, and the smaller, the better.」(総誤差 5 分角以内が許容範囲、より小さい方が望ましい)とマニュアルは明示しています。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §7.3.2 Polar Alignment
4. 対象選択と GoTo
Mount Control Panel の Search から Object Library を開き、Tonight's Best から高度の適した対象を選択して「GoTo」。オブジェクトライブラリには DSO(NGC / IC / M / SH2 / C / LDN)、太陽系天体、恒星、二重星、彗星など 14,000 天体以上が登録されています。既定では GoTo 完了後にプレートソルブでオートセンタリングが行われます。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §7.3.3 GoTo / §7.3.9.1 Mount Control Panel
5. プレビューと構図調整
「Preview」モードで短時間露光を 1 枚撮り、構図を微調整。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §7.3.4 Preview and Composition
6. ガイド開始
ガイド露出はマニュアル推奨で 1〜2 秒(0.001〜5 秒から選択可)。ASIAIR は multi-star guiding を自動選択できますが、手動で中間の明るさの星を選ぶことも可能です(最も明るい星は避ける、が公式の助言)。キャリブレーション後にガイド開始、10〜20 フレームは統計が安定しないため待ってから Clear で再評価します。RA/DEC の Aggressiveness はデフォルト 70%/100%、DEC Mode Auto から始めるのが推奨です。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §7.3.5 Start Guiding / §7.2.4 Guiding
7. Live Stack または Autorun / Plan
短時間で結果を見たいときは Live Stack。長時間の DSO 撮影は Autorun でライト・ダーク・フラット・バイアスを含むスケジュールを組みます。複数対象を一晩で回したいときは Plan モードで対象を並べておくと、順次自動撮影されます。Live Stack 中に画像サイズを変えると、それまでのスタックデータはクリアされる点に注意。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §7.3.6 Live Stack / §7.3.7 Autorun / §7.3.8 Plan Mode
8. 撤収時:ソフトシャットダウン → 電源断
App の「Wireless Smart Camera」設定に「Slide to Restart」「Slide to Shut Down」が用意されています。マニュアルは「Please wait patiently for 5-10 seconds before disconnecting the device from the power supply.」(電源を抜くのは Shutdown 後 5〜10 秒待ってから)と指示しています。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §7.2.2 Wireless Smart Camera
⑩ 冷却・結露・電源設計|「-30〜-35℃の冷却幅」を正しく解釈する
二段 TEC 冷却の実力
マニュアル §3.5 は「The two-stage TEC cooler can lower the CMOS sensor temperature by 30℃ to 35℃ relative to the ambient temperature (based on tests conducted in a 30℃ environment).」と明記しています。夏場の観測地気温 30℃なら約 -5〜0℃までセンサーを冷却できる計算です。ただし「As the ambient temperature falls, the Delta T would decrease.」(環境温度が下がると Delta T は小さくなる)と補足があり、冬場は冷却幅が縮む点を織り込んで目標温度を設定してください。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §3.5 Cooling System
Anti-dew ヒーターは 2.4W・App でオンオフ
保護窓の結露対策として、2.4W の Anti-dew ヒーターが内蔵されています。「users can enable or disable it through compatible software.」とあり、App 側でオンオフを切り替えられます。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §3.6 Anti Dew
電源設計の実務ポイント
- 冷却+加熱+赤道儀・EAF・EFW への出力を勘案し、電源側は 12V/5A 以上(マニュアルは 12V/5A アダプタを実例に挙げています)を目安に、余裕のある電流容量で選ぶと安定します。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §6.2 Power Supply Connection
- 3 つの DC ポートは入出力兼用ですが、入力に使えるのは同時に 1 つだけ。残りの 2 口を露払いヒーターや赤道儀の電源として使うと、電源ハブが減りケーブルもすっきりします。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §2 (2) / §6.2
- 低電圧状態での長時間運転は避けるようマニュアル §2 (12) が明示しています。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §2 Notice for Use (12)
⑪ PC 併用|ASIStudio / ASCOM (Alpaca) 経由の運用
ASIAIR App を使わずに、PC から本カメラを制御する経路もマニュアル §8 に整理されています。
- ASIStudio:ZWO 公式の Windows/MacOS(10.12+)/Linux(Ubuntu 16.04+ 推奨) 対応スイート。ASIImg で本カメラの主センサーが表示され、そのまま撮影に入れます。
- ASCOM (Alpaca):ASCOM Platform 6.6 以上を導入した後、MaxIm DL / NINA / PHD2 から「Alpaca」経由で本カメラを Discovery。主センサーとガイドセンサーはそれぞれ独立して認識されます。
⑫ よくある注意点|「破損しない・データを失わない」ための運用ルール
マニュアル §2 Notice for Use に列挙されている注意点のうち、初心者が最も見落としやすい項目を抜粋します。
- 電源範囲外の入力は不可逆的な破損:DC12V @ 3〜10A(センタープラス)または 11〜14V リチウム以外を差し込まない。
- USB ドライブ・Type-C を通信中に抜かない:eMMC からの書き出し中/PC への転送中に抜くとデータ損失・ストレージ故障の可能性。
- アクティベーション中にアプリを閉じない・電源を切らない:ライセンス取得の失敗リスク。
- 高温環境の連続動作後は本体に触らない:ボディが熱くなる可能性を公式が示唆。
- 雨・雪・濃霧・雷・強風など気象条件が悪い環境で使わない:屋外機材の保管環境も温湿度指定内で。
- 直射日光下に長時間置かない:ボディ表面の変色対策。
- 低電圧での長時間運転を避ける:撤収時のバッテリー残量にも留意。
- 腐食性の洗浄液を使わない:表面クリーニングは非腐食性の推奨クリーナーで。
出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §2 Notice for Use (1)〜(12)
また、保管中にストレージ内の画像を失っても補償対象外である旨、明記されています(§2 (6) 注記)。長時間の遠征では、撤収前に USB ストレージや PC への吸い出しを済ませる運用を推奨します。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §2 Notice for Use (6)
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最終更新: 2026-07-08/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式マニュアル・公式製品ページ・公式ブログの一次情報に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。
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⑮ よくある質問(FAQ)
Q1. Wi-Fi の初期パスワードは何ですか?
A. 初期パスワードは 12345678、ホットスポット名は 585AIR_<シリアル番号> 形式です。App のネットワーク設定から任意の値に変更できます。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §6.3 / §7.2.2
Q2. Wi-Fi が見つからなくなりました。どうやってリセットしますか?
A. カメラを通電した状態で RESET ボタンを 5 秒長押しし、音声で「Device is reset, ready to connect」(マニュアル §9.2)と流れたらボタンを離します。ホットスポット名・パスワード・ブリッジ設定が初期化されます。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §3.1 (No.11) / §9.2 Wi-Fi Reset
Q3. 電源は 5V や 24V でも動きますか?
A. いいえ。公式指定は「DC12V @ 3〜10A(D5.5×2.1mm、センタープラス)」または「11V〜14V リチウムバッテリー」です。範囲外の電源は「may cause irreversible damage to the camera.」(カメラを不可逆的に破損する可能性あり)とマニュアル §2 (1) で明示されています。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §2 (1) / §3.7
Q4. どの焦点距離の望遠鏡と合わせるとよいですか?
A. 2.9μm ピクセルの image scale が 1.0〜2.0 arcsec/pixel に収まる、およそ 300〜598mm 帯が「well-sampled」の目安です。第三者レビューでは 300〜800mm 帯の屈折・高速ニュートン・SCT + レデューサー等との相性が良いと報告されています。出典: Astrobackyard ASI585MC Air Review
Q5. Autorun を回した後、撮影データは何 GB まで貯めておけますか?
A. 内蔵 eMMC は 256GB、加えて USB 2.0 経由で外付けストレージも認識できます(ZWO 公式製品ページでは外付け最大 1TB まで対応と明記)。ただしマニュアル §2 (6) は「ZWO is not responsible for any data stored in the product」(カメラ内保存データについて ZWO は補償しない)と記載しているため、遠征後は速やかに PC またはバックアップストレージへ転送する運用が安全です。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §2 (6) / §7.2.8 Storage / ZWO 公式製品ページ(外付けストレージ最大 1TB)
Q6. 冷却は何度まで下がりますか?
A. 「環境温度 30℃時の測定で環境比 -30〜-35℃」がメーカー公表値です。夏の観測地気温 30℃なら 0〜-5℃、冬は環境温度が下がる分 Delta T も小さくなる点に注意してください(§3.5 の但し書き参照)。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §3.5 Cooling System
Q7. PC からも制御できますか? ASIAIR App 以外の選択肢は?
A. はい。ASIStudio(Windows/MacOS/Linux)または ASCOM Platform 6.6 以上を経由して MaxIm DL / NINA / PHD2 から Alpaca 経由で制御できます(マニュアル §8)。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §8 Astrophotography with ASIStudio / §8.3 Additional Astrophotography Software
Q8. 別途 OAG やガイド鏡は必要ですか?
A. 本カメラはガイドセンサー(SC2210_BW)を内蔵しており、公式マニュアルは「You don't need a separate OAG, guide camera and ASIAIR.」(別体の OAG / ガイドカメラ / ASIAIR は不要)と明示しています。主鏡光路と同じ視野でガイドできる設計です。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §1 Three-in-one design
Q9. 保証はどうなっていますか?
A. 天体ショップでご購入の場合、弊社独自の初期不良 60 日+3 年保証を適用します(詳細は商品ページをご確認ください)。ZWO 社側の製品保証・返品ポリシーはマニュアル §10 Servicing & Warranty に案内されているとおり、ZWO 公式サイトの各地域向けページに準拠します。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §10 Servicing & Warranty
Q10. アプリのバックアップ/ファームウェアが更新失敗したらどうする?
A. 一度 ASIAIR App を終了し、カメラの電源ケーブルを抜き差ししてから再度アプリを起動し、更新を再試行します(§9.1)。出典: ZWO ASI585MC Air User Manual V1.0 §9.1 Firmware Update
参考にした一次情報
- ZWO Wireless Smart Camera ASI585MC Air User Manual V1.0(PDF)
- ZWO 公式製品ページ ASI585MM/MC Air
- ZWO ASTRO USA 商品ページ ASI585MM/MC Air
- ZWO 公式ブログ ASI585MC Air Full Review(2025/11/05)
- Astrobackyard 実機レビュー(image scale / 焦点距離帯の目安参照)
- Astronomics 商品ページ(付属品リスト参照)
本記事で扱った商品ページはこちら
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最終更新: 2026-07-08/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式マニュアル・公式製品ページ・公式ブログの一次情報に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。