IRカットフィルターは必要?ZWO IR Cut Filter 1.25"の効果と使い方完全ガイド|カラーCMOSが赤外線で滲む理由【2026年最新版】

IRカットフィルターは必要?ZWO IR Cut Filter 1.25"の効果と使い方完全ガイド|カラーCMOSが赤外線で滲む理由【2026 年最新版】

カラーCMOSカメラ(OSC)で「星像が肥大して見える」「全体がピンク・赤っぽくにじむ」「屈折鏡なのに惑星のディテールが甘い」と感じたら、原因はほぼ近赤外線(NIR)の混入です。シリコンセンサーは可視光に加えて約 1100nm まで感度を持ち、Bayer 配列の RGB 全画素に IR が漏れ込むため、ホワイトバランスと解像度が崩れます。ZWO IR Cut Filter 1.25" は 400〜700nm の可視光だけを通し、それ以遠の紫外線・近赤外線をカットする基本中の基本フィルターです。本記事では「なぜ必要か」「どんな効果があるか」「いつ使うべきか/使わなくてよいか」を、ZWO 公式・Sony 公式・Diffraction Limited 公式の一次情報のみで解説します。

要点(5行で押さえる)

  • カラー CMOS(OSC)カメラは原則 IR カット必須。Bayer 配列が NIR をスルーするため、付けないとホワイトバランスが破綻し星像も肥大する。
  • ZWO IR Cut Filter 1.25" は 400〜700nm 透過、可視光透過率 95% 以上、厚み 1.85mm(弊社販売ページ仕様)。M28.5×0.6 オスネジで 1.25" 規格機材すべてに装着可能。
  • 屈折望遠鏡では特に効果大。アポクロマート設計でも補正されるのは可視 3 波長のみで、近赤外は別焦点に結像 → 星像が膨らむ。
  • Duo-Band / Tri-Band / L-Pro など多くの光害カットフィルターには UV/IR カット機能が内蔵されているため、二重装着は不要。
  • モノクロ CMOS + LRGB セットなら原則不要(L フィルターに UV/IR カットが入っているため)。ただしフィルターホイールに混在する場合は青チャンネルへの IR リーク対策で 1 枚あると安心。
波長 (nm) 感度 350 400 550 656 (Hα) 700 900 1100 シリコン CMOS 感度域(〜1100nm まで応答) 可視光(400〜700nm) 近赤外(700〜1100nm) ← IR カットがブロック UV ←IRカット側もブロック 図1: シリコンセンサーの感度域と ZWO IR Cut Filter (400〜700nm) の通過帯
図1: シリコンセンサーは約 350〜1100nm まで応答し、可視光(400〜700nm)以外もそのまま電気信号化する。ZWO IR Cut Filter は 400〜700nm のみを通すことで、Bayer 配列カメラの色再現と星像を正常化する。出典: シリコン感度域 1100nm 上限はシリコン物理(バンドギャップ約 1.12eV)の一般知見。Diffraction Limited "Infrared Sensitivity" および Kupo Optics "IR Cut-Off Filters"に基づく概念図。透過率カーブの具体値は ZWO 公式が公表していないため、模式図として示す。

1. IR カットフィルターとは何か(基礎)

1-1. IR カットフィルターの定義と目的

症状:「IR カット」「UV/IR カット」「ホットミラー」と呼び方がバラバラで、何が違うのか分からない。
原因:名前は違っても、可視光(おおむね 400〜700nm)だけを透過し、紫外線(UV)と近赤外線(NIR)を除去する役割は同じ。実装方式(吸収型 vs 反射型)と用途で呼び方が分かれているだけ。
対処:天体撮影で「IR カット」「UV/IR カット」と書かれていれば、可視光を通して NIR をカットする目的で同等と考えて問題ない。ZWO IRCUT も後者の構造。

出典: Kupo Optics "IR Cut-Off Filters in Machine Vision: A Practical Guide"「an IR cut-off filter (also called an IR blocking filter or heat-absorbing filter) is an optical filter that allows visible light to pass through while blocking infrared (IR) wavelengths.」

1-2. シリコンセンサーが約 1100nm まで感度を持つ仕組み

症状:「カメラは可視光だけ撮ってると思っていたのに、なぜ赤外線が問題になるのか」が分からない。
原因:CMOS / CCD はシリコンの光電効果で動作するが、シリコンのバンドギャップエネルギー(約 1.12eV)から決まる感度上限は約 1100nm。つまり Bayer 配列の RGB フィルターを通った後でも、近赤外線は素通りでセンサーに到達する。
対処:可視光以外をブロックするのは「センサーの外側」、すなわち光路上のフィルターの仕事と理解する。

出典: Diffraction Limited "Infrared Sensitivity"「CCD and CMOS sensors are very sensitive to near-infrared (IR) light.」Kupo Optics シリコン物理に関する一般解説。

1-3. 「ホットミラー」という呼び名の意味

症状:カメラ業界やモニタ業界で「ホットミラー」という用語を見るが、IR カットと別物なのか分からない。
原因:IR カットには大きく 2 方式ある。①吸収型(IR を熱として吸収する色ガラス、例: Schott KG3 等)、②反射型(誘電体多層膜で IR を反射する=センサー側に来させない)。後者を「ホットミラー」と呼ぶ。
対処:ZWO IRCUT のような薄型干渉フィルターは反射型。反射した赤外線は対物方向に戻るので、迷光対策として銅鏡筒側の艶消し処理(後述)も併せて重要。

出典: Kupo Optics「IR-cut filters are also called hot mirrors because they reflect (rather than absorb) the infrared portion of the spectrum」

1-4. 一般的なカットオフ波長(650nm / 700nm / 720nm)

症状:「700nm カット」と「650nm カット」のフィルターがあるが何が違うのか分からない。
原因:マシンビジョン業界では用途に応じて 650 / 700 / 720nm の 3 種が一般的。一眼レフの内蔵 IR カットは 650nm 寄りに設定されることが多く、これは Hα 線(656.3nm)も大きく削るため天体撮影では「Hα 改造」が必要になる。
対処:天体撮影用 IR カット(ZWO IRCUT 含む)は 700nm カット型が標準。Hα 線(656.3nm)は通過帯側に残るため、改造機なし・カラー OSC でも星雲撮影に使える。

出典: Kupo Optics「Common specifications include: 650nm – Maximum IR blocking / 700nm – Balanced approach allowing deep red wavelengths / 720nm – Extended red sensitivity」

2. なぜカラー CMOS(OSC)カメラは IR カット必須なのか

2-1. Bayer 配列が NIR をすべての画素に通す

症状:カラーカメラなのだから RGB フィルターで可視光以外は除去されるはず、と直感的に思える。
原因:実際には Bayer 配列の RGB フィルターは可視帯では選択透過するが、近赤外線(700nm 以遠)に対しては R/G/B 全画素ともほぼ素通し。結果、NIR は全画素に同じ量だけ加算され、ホワイトバランスが完全に破綻する。
対処:カラー CMOS カメラには「センサーよりも前」で UV/IR をカットする光学フィルターが必須。これが IR カットフィルターの役割。

出典: Diffraction Limited "Infrared Sensitivity"「one-shot color cameras absolutely need IR cut filters to prevent contaminated, washed-out images.」

2-2. 全体がピンク・赤っぽくなる現象の正体

症状:OSC で撮影すると、ダークもバイアスも揃えているのに画像全体がピンク〜赤紫っぽく転び、ホワイトバランス調整でも追い切れない。
原因:NIR が R 画素に最も多く混入し、さらに G/B 画素にも一定量入り込むことで、低輝度部分のニュートラルが赤側にシフトする。さらに NIR は星像周辺で散乱するため、明るい星の周囲が赤くにじんで見える(赤ハロー)。
対処:IR カットを 1 枚噛ませるだけで NIR を 95% 以上カットでき、本来の色温度に戻る。

出典: Kupo Optics「Color accuracy restoration – Prevents infrared contamination of RGB channels」、Diffraction Limited "Infrared Sensitivity"「contaminated, washed-out images」。可視透過率 95% 以上は ZWO IR Cut Filter 1.25"(弊社販売ページ)仕様。

2-3. STARVIS センサー(IMX462 等)は NIR が特に強い

症状:ASI462MC や ASI678MC で撮ると、星像肥大や赤かぶりが旧型 ASI120 系より目立つ。
原因:Sony STARVIS は背面照射(BSI)と深いフォトダイオード構造で「可視光と近赤外線の両領域で高画質を実現」と公式が明記している。すなわち NIR 感度が他の汎用 CMOS より高く、NIR の悪影響もそれだけ強く出る。
対処:STARVIS 系 OSC(ASI462MC / 585MC / 662MC / 678MC / 715MC など)には IR カット併用が事実上必須と考える。

出典: Sony Semiconductor Solutions "IMX462LQR/LQR1 Flyer"(公式 PDF)「STARVIS ... realizes high picture quality in the visible-light and near infrared light regions.」

2-4. ASI 保護ウィンドウは IR をカットしない

症状:ASI224MC や ASI462MC のセンサー前面にすでにガラスが付いているのに、なぜ別途 IR カットが必要なのか。
原因:ASI シリーズの保護ウィンドウは AR コーティング付き BK7 ガラスで、目的はセンサー保護と反射低減。波長選択性は持っておらず、UV から NIR まで素通し。
対処:保護ウィンドウとは別に、光路上のどこかで UV/IR カットを必ず噛ませる必要がある。1.25" フィルターホイール、ノーズピース内蔵、または T リング前面など。

出典: ASI224 Manual EN Rev1.2 §6.4 Protect Window「It's an AR-AR coated BK7 glass, diameter is 21mm (non-cooled), 25mm (cooled version).」(IR カット機能の記載なし)

2-5. モノクロでも青チャンネルへ IR リークのリスク

症状:モノクロカメラで LRGB 撮影しているのに、B フレームだけ妙にバックグラウンドが浮く。
原因:RGB 干渉フィルターは目的波長外を完全に遮断するわけではなく、特に B フィルターは長波長側でわずかに NIR をリークしやすい設計が一般的(B フィルター固有の二次バンド)。フィルターホイールに L(UV/IR カット内蔵)以外のフィルターしか入っていない場合に問題化する。
対処:モノクロでも、UV/IR カット機能を持たない RGB セットを使う場合は、ホイール内に IR カット 1 枚を追加するか、L フィルター側に UV/IR カット機能内蔵のものを選ぶ。

出典: Diffraction Limited "Infrared Sensitivity"「Monochrome cameras with filter wheels typically require IR blocking to prevent leakage through blue filters」

3. IR カットがもたらす光学的効果

3-1. 屈折望遠鏡の色収差を可視域に閉じ込める

症状:アクロマート屈折鏡やアポクロマート屈折鏡でも、明るい星の周囲に赤・紫の滲みが残る。
原因:アクロマートは「赤と青の 2 波長」、アポクロマートは「青〜赤の 3 波長(おおむね 465 / 530 / 620nm)」を同一焦点に揃える設計。それより外側の波長、特に NIR(700〜1100nm)は別の焦点位置に結像し、星像が広がる原因となる。
対処:IR カットフィルターで 700nm 以遠を除去すると、APO の補正範囲内に光がほぼ収まり、本来の点像性能を発揮できる。屈折鏡ユーザーにとっては効果が最も体感しやすい。

出典: Wikipedia "Apochromat"「Apochromats correct three wavelengths of light—typically red (~0.620 μm), green (~0.530 μm), and blue (~0.465 μm)—to focus on the same plane.」

3-2. 星像肥大(IR ブルーミング)の抑制

症状:同じ ASI462MC でも、L-Pro や IR カットを併用したときと比べて、ナマで撮ったときは星像が一回り太い。
原因:NIR は屈折鏡で別焦点に集まるため、可視光のシャープな点像の上に NIR のボケた像が重畳して、見かけ上の星像直径が拡大する。
対処:IR カットで NIR 成分を除去 → 星像が引き締まり、解像感が向上。特に Barlow 拡大での惑星撮影で差が出る。

出典: 星像肥大の原因は屈折鏡の近赤外残存色収差。Wikipedia "Apochromat" による APO 設計波長帯の知見と Diffraction Limited の NIR 高感度記述から導かれる。

3-3. ピント合わせの安定化

症状:FWHM が時間とともに揺らいで、ピントが「合っているのか合っていないのか」分からない。
原因:NIR が混入していると、可視光ベストピントと NIR ベストピントの間で焦点が割れた状態になり、シーイング揺らぎと重なってピーク FWHM が読みづらくなる。
対処:IR カットで波長帯を狭めることで、ピントピークが鋭く立ち、N.I.N.A. や ASIAIR のオートフォーカスでも判定が安定する。

出典: Kupo Optics「Focus plane alignment – Eliminates chromatic aberration between visible and IR wavelengths」

3-4. Hα フィルター(太陽用)の保護

症状:太陽用 Hα エタロンは熱に弱く、強い赤外線で性能劣化する可能性がある。
原因:太陽光は可視光と同程度かそれ以上の赤外線を含み、エタロンに連続的に注がれると干渉膜が熱負荷を受ける。
対処:ZWO IR Cut Filter を Hα エタロンの前段に置くことで、近赤外線をカットし、エタロンを熱劣化から守る。ZWO 公式も「H-alpha フィルター保護」を主用途として明記。

出典: ZWO Astro 公式 "UV IR CUT Filters"「when doing solar work, the IR Cut Filter will protect H-alpha filter from the damaging effects of infrared radiation.」

3-5. アルマイト面の赤外線反射ホットスポット抑制

症状:フラット補正をすると画面中央に明るい円形ムラが残る。
原因:鏡筒内部の黒アルマイト面は人間の目には黒く見えるが、近赤外領域では反射率が高く、IR が筒内迷光を作り出して中心ホットスポットの原因となる。
対処:根本対策は鏡筒内のフラットブラック塗装&バッフル追加だが、IR カットフィルターでセンサー側に到達する NIR 自体を減らせば、ホットスポットの強度も大幅に下がる。

出典: Diffraction Limited "Infrared Sensitivity"「anodized metal components ... remain highly reflective in the infrared despite appearing black to human vision. This creates ... hot spots during flat-field calibration.」

4. ZWO IR Cut Filter 1.25" の仕様

4-1. 透過帯域 400〜700nm

仕様:可視光(紫〜赤)のみを通す。紫外線(<400nm)と近赤外線(>700nm)はカット。Hα 線(656.3nm)は通過帯内に収まるので、星雲撮影でも Hα 信号は十分残る。

出典: ZWO IR Cut Filter 1.25" 製品ページ(telescopeshop.net)「透過帯域: 約 400〜700nm」

4-2. 可視光透過率 95% 以上

仕様:通過帯内では平均 95% 超の透過率を確保。多くの干渉フィルターは透過率 90〜95% の範囲なので、ZWO IRCUT も標準的な高品位レンジ。

出典: ZWO IR Cut Filter 1.25" 製品ページ(telescopeshop.net)「透過率: 可視光帯域で 95% 以上」

4-3. 厚み 1.85mm

仕様:ZWO 公式が明記する厚みは 1.85mm。同社の Duo-Band(1.25" / 2")も同じ厚みで設計されており、フィルター切替時のフォーカス位置ズレが小さい。フィルターホイール運用で焦点を再調整しなくて済む点で実用上の利点が大きい。

出典: ZWO Astro 公式 "UV IR CUT Filters"「Thickness: 1.85 mm」、ZWO Duo-Band Filter 公式仕様「Glass thickness: 1.85 mm」

4-4. 1.25" セル / M28.5×0.6 オスネジ

仕様:1.25" 規格の枠で、ねじ規格は M28.5×0.6(オスネジ)。1.25" アイピースバレル内、ノーズピース、フィルターホイール、フィルタードロワーの 1.25" 規格のもの全てに装着可能。

出典: ZWO Astro 公式 "UV IR CUT Filters"「Housing: 1.25" cell」、ねじ規格 M28.5×0.6 は 1.25" 業界標準。

4-5. 波面精度 λ/4

仕様:波面誤差 λ/4(クォーターウェーブ)。光路に挿入したときの像質劣化を最小化する基本品質ライン。

出典: ZWO IR Cut Filter 1.25" 製品ページ(telescopeshop.net)「波面精度: λ/4」

4-6. 航空機用アルミ合金(黒アルマイト)枠

仕様:枠は軽量で剛性のある航空機用アルミ合金、表面は黒アルマイト処理。観望中の温度変化でも歪みが出にくい。

出典: ZWO IR Cut Filter 1.25" 製品ページ(telescopeshop.net)「枠材: 航空機用アルミ合金(黒アルマイト)」

4-7. 保護プラスチックケース付属

仕様:ZWO 純正の透明プラスチックケースが付属。使わないときはケースに戻す習慣で、長期的にコーティングを保てる。

出典: ZWO Astro 公式 "UV IR CUT Filters"「comes with a protective plastic case」

5. 用途別の効果

5-1. 惑星撮影(木星・土星)

効果:Barlow 拡大で焦点距離が伸びるほど近赤外の収差影響が露骨になるため、IR カットの効果が最も体感しやすい用途。木星の大赤斑のディテール、土星のカッシーニ間隙のキレが向上。
注意:NIR 帯のシーイング揺らぎはむしろ可視より少ない。シーイング極悪時には逆に IR パスフィルター(IR850 等)でモノクロ撮影する選択肢もあるが、これは別物の用途。

出典: ZWO Astro 公式「the addition of this simple and inexpensive accessory will result in sharper images」

5-2. 月面撮影

効果:月は反射光なので可視光成分が豊富。NIR を除くことで本来のグレー〜うす茶のニュートラルな質感が出る。
注意:月面はもともと色情報が少ないため、効果は惑星より穏やか。屈折鏡使用時のクレーター縁の解像感向上が主なメリット。

出典: Diffraction Limited "Infrared Sensitivity"「one-shot color cameras absolutely need IR cut filters to prevent contaminated, washed-out images」

5-3. 太陽 Hα 観測(フィルター保護)

効果:太陽光に含まれる強い NIR が Hα エタロンに与える熱負荷を低減。エタロンの寿命と画質を長期的に保つ。
注意:太陽観測には専用の安全装備(D-ERF / 減光フィルター等)が前段で必要。IR カット単独で太陽を覗き込むのは絶対禁止。

出典: ZWO Astro 公式「when doing solar work, the IR Cut Filter will protect H-alpha filter from the damaging effects of infrared radiation」

5-4. 電視観望(EAA)

効果:OSC + ライブスタックで電視観望する場合、ホワイトバランスのリアルタイム破綻を防ぎ、画面上で赤かぶりが起きない。
注意:光害カットフィルター(CLS / UHC 等)を併用する場合、相手側に UV/IR カット機能が内蔵されていることが多いので、二重装着は不要なことが多い。

出典: Kupo Optics「Color accuracy restoration – Prevents infrared contamination of RGB channels」

5-5. 深宇宙天体撮影(OSC で撮る場合)

効果:銀河・反射星雲・球状星団など連続光寄りの被写体を OSC で撮る場合、IR カットだけで色再現が大きく改善する。
注意:輝線星雲(Hα / OIII)狙いなら、Duo-Band / Tri-Band を選択すると IR カットも兼ねるので別途不要。

出典: ZWO Duo-Band Filter 公式仕様 Hα 15nm / OIII 35nm のデュアルバンド帯通過。それ以外の帯域は遮断される設計。

5-6. 街灯下のお試し撮影

効果:低光害地に行けないベランダ撮影でも、IR カット 1 枚で「赤かぶり」だけは消せる。光害そのものは別途光害カットフィルターが必要だが、入門用として最初の 1 枚としてコスパが高い。

出典: 本項目は ZWO Astro 公式「a simple and inexpensive accessory」記述から導いた一般的な利用シナリオ。光害カットそのものはこのフィルターの機能ではない点に注意。

6. 適合機材と取り付け

6-1. 1.25" アイピース・ノーズピース

取り付け:1.25" アイピースのバレル先端、または ASI カメラに付属する 1.25" ノーズピース内側のメスねじ(M28.5×0.6)に直接ねじ込む。

出典: ASI224 Manual EN §「1.25" filter (optional)」付属品ページ。

6-2. 1.25" フィルターホイール(EFW Mini 等)

取り付け:1.25" 専用 EFW(5 ポジション / 7 ポジション)のフィルターセル内側のねじ穴にねじ込む。

出典: ZWO Astro 公式 関連アクセサリ欄に EFW フィルターホイールの併用が記載。

6-3. 1.25" フィルタードロワー(ZWO FD 等)

取り付け:フィルタードロワーの 1.25" マウントアダプタ内側にねじ込む。1 枚運用ならドロワー方式の方が脱着が楽。

出典: 1.25" / M28.5×0.6 はフィルター業界標準。ZWO 公式 Filter adapter rings 関連アクセサリ記載あり。

6-4. 対応 ZWO カラーカメラ(OSC)

適合:1.25" 光路または 1.25" ノーズピース付きの ZWO OSC 全機種。代表例は ASI120MC-S, ASI224MC, ASI385MC, ASI462MC, ASI585MC, ASI662MC, ASI678MC, ASI715MC など。

出典: ZWO IR Cut Filter 1.25" 製品ページ(telescopeshop.net)適合カメラ記述に基づく。

6-5. 取り付けの向き

注意:反射型 IR カット(ホットミラー型)は、刻印・型番が印刷された側を「対物側」(光が入ってくる側)に向けるのが基本。NIR を反射してセンサーに戻す経路を作らないため。
確認:逆向きでも光学性能上は大きな差はないが、迷光対策の観点から推奨される向きは守る。

出典: Kupo Optics「the reflected IR goes backward, away from the sensor, while visible light passes through」反射方向を活かす取り付けの一般的セオリー。

7. IR カットを使うべきかの判断フロー

7-1. カラー CMOS(OSC)→ 原則必須

判断:使う。フィルターがすでに含まれているのは Duo-Band / Tri-Band / L-Pro / L-eXtreme などの「狭〜中帯域フィルター」のみ。素のカラー撮影ならほぼ必須。

出典: Diffraction Limited「one-shot color cameras absolutely need IR cut filters」

7-2. モノクロ CMOS + LRGB セット → 原則不要

判断:使わなくて OK。ただし L フィルターに UV/IR カットが内蔵されているか確認すること(ZWO LRGB セットの L は UV/IR カット内蔵)。RGB のみのセット運用なら、ホイール内に IR カット 1 枚追加が安全策。

出典: Diffraction Limited「Monochrome cameras with filter wheels typically require IR blocking to prevent leakage through blue filters」

7-3. ナローバンド単体(Hα / OIII / SII)→ 原則不要

判断:使わなくて OK。ナローバンド干渉フィルターは目的波長の通過幅 3〜7nm が中心で、それ以外の UV/NIR は全てブロックされる設計。重ねても透過率が落ちるだけ。

出典: ZWO Duo-Band Filter 公式仕様 通過帯以外を遮断する設計の一般原則。

7-4. Duo-Band / Tri-Band 使用時 → 原則不要

判断:使わなくて OK。デュアル / トリプルナローバンドフィルターは Hα と OIII(とそれ以外)の通過帯のみを残し、それ以外を遮断する設計のため、UV と NIR は内蔵的にカット済み。

出典: ZWO Duo-Band Filter 公式 Hα 15nm / OIII 35nm の 2 バンドのみ通過。それ以外は遮断。

7-5. 太陽 Hα 撮影 → 併用推奨

判断:使う。Hα エタロンの前段に IR カットを入れて、近赤外による熱負荷を抑える。ZWO 公式が主用途として明示。

出典: ZWO Astro 公式「the IR Cut Filter will protect H-alpha filter from the damaging effects of infrared radiation」

8. 1.25" と 2" の選び方

8-1. カメラ側のフィルター取り付け規格を確認

判断:カメラ前面のメスねじが M28.5×0.6(1.25")なら 1.25" フィルター、M48×0.75 なら 2" フィルター。ZWO IRCUT 2" は M48×0.75 オスネジ。

出典: ZWO Astro 公式「2" Model: Thread M48×0.75 male thread」

8-2. APS-C 級センサーは 2" 推奨

判断:センサー対角が 1/1.8" を超える機種(ASI2600MC / ASI071MC 等)は、1.25" フィルター枠が四隅にケラレを起こすため 2" フィルターが推奨。

出典: ケラレの原因は 1.25" 枠の物理サイズ(内径約 27mm)と APS-C センサー対角(約 28.4mm)の物理関係から導かれる一般的セオリー。

8-3. 1/1.8" 以下のセンサーは 1.25" で十分

判断:ASI224MC / ASI462MC / ASI585MC / ASI678MC / ASI715MC など 1/1.8" 級以下の OSC 惑星カメラは 1.25" フィルターでケラレなし。コスト的にも 1.25" が有利。

出典: Sony IMX462 Flyer「Diagonal 6.46 mm (Type 1/2.8)」ASI224 Manual「Sensor: 1/3" CMOS」

8-4. 価格差

判断:ZWO 公式定価で 1.25" $22 / 2" $49(北米)。1.25" は 2" の半額以下なので、対応センサーなら迷わず 1.25"。

出典: ZWO Astro 公式 "UV IR CUT Filters" 「ZWO IRCUT 1.25" - $22.00 / ZWO IRCUT 2" - $49.00」

9. 他フィルターとの併用・組み合わせ

9-1. UV/IR カット内蔵フィルターとの二重装着は避ける

判断:L-Pro / L-eXtreme / Duo-Band / CLS-CCD など最近の光害カット系は UV/IR カットを内蔵しているものが多い。二重装着は透過率を下げるだけ。
確認:各フィルターの公式仕様で「UV/IR cut」の記載があるか確認してから判断する。

出典: ZWO Duo-Band Filter 公式2 バンドのみ通過の設計から、UV/IR は内蔵的にブロックされる。

9-2. 通常の RGB 干渉フィルターとは別役割

判断:モノクロ用 RGB フィルター(UV/IR カット非内蔵タイプ)とは別の役割。L フィルターと類似ポジションだが、L が「広帯域可視光通過」、IR カットが「UV/NIR 阻止」。

出典: Diffraction Limited モノクロ RGB セットでの IR ブロッキング必要性に関する記述。

9-3. アイピース観望での併用

判断:眼視観望でも 1.25" アイピースバレルにねじ込むだけで使える。屈折鏡で月や惑星を観望するときに、像のシャープ感が増す効果あり。
注意:暗い対象(彗星・銀河の眼視)では透過率がわずかに下がるので、明るい対象向け。

出典: ZWO IR Cut Filter 1.25" 製品ページ 1.25" アイピース対応の記載に基づく。

9-4. Barlow レンズとの併用

判断:1.25" Barlow の前面 / 後面どちらにもねじ込める製品が多い。Barlow 拡大時こそ近赤外色収差が顕在化するので、惑星撮影では IR カット併用がベター。
注意:光路長は 1.85mm 増えるだけなので、フォーカス再調整はほぼ不要レベル。

出典: ZWO Astro 公式「Thickness: 1.85 mm」Apochromat近赤外残存色収差の理論的背景。

10. 注意点・誤解しやすいポイント

10-1. Hα 線(656.3nm)への影響は最小限

誤解:「IR カットを付けると Hα が削られて星雲が写らなくなる」と思われがち。
事実:ZWO IRCUT は 700nm カットで、Hα(656.3nm)は通過帯の中央寄りに残る。一般論として「IR カットは Hα 感度を低下させる可能性がある」と公的に指摘されているが、それは 650nm 寄りカット型(一眼レフ非改造機の内蔵フィルターなど)の話で、天体撮影向けの 700nm カット型には大きくは当てはまらない。
対処:Hα 重視の撮影では、ZWO Duo-Band 等のナローバンドへ切り替える方が SN 比で有利。

出典: Diffraction Limited "Infrared Sensitivity"「IR cut filters can potentially reduce the camera sensitivity, especially to the Hydrogen Alpha emission line.」(一般指摘)。Kupo Optics「700nm – Balanced approach allowing deep red wavelengths」(700nm カット型は赤端を残す)。

10-2. 保管はケースに戻す

注意:付属の透明プラスチックケースは UV による劣化と指紋付着を防ぐためのもの。撮影のたびにポンと机に置く運用はコーティングを傷める原因。

出典: ZWO Astro 公式「comes with a protective plastic case」

10-3. クリーニングはブロワー優先

注意:ホコリは光学用ブロワーで吹き飛ばすのが第一手。指紋・油汚れは光学用無水エタノールと専用クリーニングペーパーで、円を描かず一方向に拭く。
禁止:ティッシュペーパー・キッチンペーパー・メガネ拭きなどは繊維がコーティングを傷つける可能性があるので使わない。

出典: ASI224 Manual EN §「The suggested way to clean them is try to blow them away with a manual air pump.」(保護ウィンドウ向けだが、フィルターのコーティング保護にも同じ考え方が適用できる)

10-4. 「AR コート付きカラーカメラ用」の意味

注意:ZWO 公式に「suitable for color camera with AR protect window」と書かれている。これは「AR コートでない保護窓のカメラには使えない」という意味ではなく、ZWO ASI シリーズ(保護ウィンドウが AR コート BK7)を主たる適合対象として明記しているという意味。
確認:他社カメラでも 1.25" 規格の光路があれば物理的には使える。性能保証は ZWO ASI シリーズで取られているという理解が正確。

出典: ZWO Astro 公式「ZWO 1.25″ IR UV CUT filter is suitable for color camera with AR protect window.」

10-5. フィルターホイール内の組み合わせ最適化

注意:EFW に IR カットを入れる場合、L 相当ポジションに入れるか、独立ポジションを 1 つ確保するか戦略が分かれる。
判断:OSC 専用なら独立ポジション、モノクロ LRGB 兼用なら L フィルターを UV/IR カット内蔵タイプに入れ替える方が運用がシンプル。

出典: Diffraction Limited モノクロ RGB セットでの IR ブロッキング配置の一般原則。

11. 関連商品(合わせて検討したい機材)

ZWO IR Cut Filter 1.25" の効果を最大化するカラー CMOS カメラと、上位互換になり得るデュアルナローバンドフィルター。

  • ZWO ASI585MC — 1/1.2" IMX585 BSI センサー、低ノイズ・広ダイナミックレンジの OSC。素の状態では NIR まで素通しのため、IR カット併用で本来の色再現が出る代表的機種。
  • ZWO ASI662MC — 1/1.8" STARVIS BSI、NIR 強い高感度 OSC。月・惑星撮影で IR カット効果が体感しやすい。
  • ZWO ASI715MC — 1/1.55" 1.45μm 微小ピクセル OSC。大焦点距離で惑星 Barlow 拡大撮影をするほど IR カットの寄与が大きい。
  • ZWO ASIAIR Plus 256G — OSC + IR カット運用と相性が良いスマート天体撮影コントローラ。N.I.N.A. 等を組まずに、フィルターホイール / ドロワー込みで完結したワークフローを組める。

12. 関連記事

13. 商品ページ・公式 LINE のご案内

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最終更新: 2026-04-29/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式・Sony 公式・Diffraction Limited 公式・ZWO 公式マニュアル等の一次情報に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。

14. よくある質問(FAQ)

Q1. カラー CMOS カメラに IR カットは絶対必要ですか?

A. はい、原則必須です。Diffraction Limited 公式が「one-shot color cameras absolutely need IR cut filters」と明記しており、Bayer 配列が NIR を全画素にスルーするためカラー再現が破綻します。例外は「ナローバンドフィルター(Duo-Band 等)を常用する」「すでに UV/IR カット内蔵の光害カットフィルターを使っている」場合のみ。

Q2. ZWO IRCUT で Hα 感度は落ちませんか?

A. ZWO IRCUT は 700nm カット型なので、Hα(656.3nm)は通過帯の中央寄りに残ります。Diffraction Limited が一般論として「IR カットは Hα 感度を低下させる可能性がある」と指摘していますが、これは主に 650nm 寄りカットの一眼内蔵フィルターを想定した指摘で、天体撮影用 700nm カット型には大きくは当てはまりません。Hα 重視なら Duo-Band や L-eXtreme へ切り替える方が SN 比で有利です。

Q3. モノクロ用 LRGB セットの L フィルターと何が違う?

A. 役割が一部重なります。多くの ZWO LRGB セットの L フィルターは UV/IR カット機能内蔵(実質 IR カットを兼ねる)。RGB のみ単体で揃えた場合は IR カットを別途追加するか、L 側を UV/IR カット内蔵タイプに揃えるのが安全です。

Q4. ZWO Duo-Band と一緒に使えますか?

A. 不要です。Duo-Band は Hα 15nm / OIII 35nm のみを通過させる設計で、UV と NIR は内蔵的にブロックされています。重ねても透過率が下がるだけです。

Q5. 惑星撮影で本当に効果ありますか?

A. 強く効果が出ます。Barlow 拡大で焦点距離が伸びるほど近赤外残存色収差の影響が大きくなり、IR カットで星像(惑星像)の太りが解消されます。ZWO 公式も「sharper images」を主たる効果として挙げています。

Q6. 1.25" と 2" どちらを選べばいいですか?

A. カメラセンサーの対角サイズで決まります。1/1.8" 級以下(ASI224MC / 462MC / 585MC / 662MC / 678MC / 715MC など)は 1.25" で十分。APS-C 級(ASI2600MC / ASI071MC など)はケラレを避けるため 2" 推奨です。価格は ZWO 公式で 1.25" $22 / 2" $49(北米)。

Q7. 屈折望遠鏡で使うと何が変わりますか?

A. アポクロマートでも補正されるのは可視 3 波長(青~465nm / 緑~530nm / 赤~620nm)のみで、近赤外(700〜1100nm)は別焦点に結像し星像を肥大させます。IR カットで NIR を除去すると、APO の補正範囲内に光が収まり、本来の点像性能が発揮されます。屈折鏡ユーザーは効果を最も体感しやすいです。

Q8. ナローバンドフィルター(Hα 単体など)と組み合わせるべきですか?

A. 不要です。Hα や OIII の干渉ナローバンドは目的波長 3〜7nm の通過幅以外を全て遮断する設計なので、UV と NIR は単体で既にブロックされています。

Q9. 取り付け方向はありますか?

A. 反射型 IR カット(ホットミラー型)は、刻印・型番が印刷された側を「対物側(光が入ってくる側)」に向けるのが推奨です。Kupo Optics の解説どおり、反射した NIR をセンサーから遠ざける経路を作るためです。光学性能の差は微小ですが、迷光対策として推奨される向きを守るのが基本です。

Q10. 弊社からの保証はどうなりますか?

A. 株式会社天文堂の独自保証として、初期不良 60 日間と 3 年保証を提供しています。詳細は LINE 公式アカウントでご確認ください。

15. 参考にした一次情報リスト

  1. ZWO Astro 公式 "UV IR CUT Filters" — 製品概要・仕様(厚み、ハウジング、付属品、用途)
  2. ZWO IR Cut Filter 1.25" 製品ページ(telescopeshop.net) — 透過帯域・透過率・波面精度・枠材
  3. ASI224 Manual EN Rev1.2 — ASI シリーズ保護ウィンドウ仕様、IR 感度
  4. Diffraction Limited "Infrared Sensitivity" — カラー CMOS の IR カット必要性、Hα 感度への影響、アルマイト面の IR 反射
  5. Sony Semiconductor Solutions "IMX462LQR/LQR1 Flyer" — STARVIS センサーの可視+NIR 両領域での高感度
  6. Wikipedia "Apochromat" — アポクロマートの設計波長と近赤外残存色収差
  7. ZWO Duo-Band Filter 公式仕様 — デュアルナローバンドの通過帯と UV/IR 内蔵カット
  8. Kupo Optics "IR Cut-Off Filters in Machine Vision" — IR カット動作原理(吸収型 vs 反射型)、カットオフ波長標準

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