アスカー Askar SQA85 鏡筒|トラブル・困りごと完全ガイド|星像・ピント・バックフォーカス・露付き・接続を一次情報で切り分け
アスカー Askar SQA85 鏡筒|トラブル・困りごと完全ガイド|星像・ピント・バックフォーカス・露付き・接続を一次情報で切り分け
Askar SQA85(85 mm F4.8 quintuplet Petzval astrograph)は、フルフレーム 44 mm のイメージサークルを一台でカバーする「フラットナー不要・5 枚玉」の鏡筒です。設計が良くできている分、フィールドでのトラブルの大半は「光学」ではなく「接続距離(バックフォーカス)」「フォーカサー操作」「環境(露・温度順応)」の領域に集中します。本記事ではメーカー公式マニュアル §6 Troubleshooting と Sharpstar 公式仕様、および公開済みの光学ベンチテストレポートを照合し、フィールドで実際に効く切り分けポイントを整理しました。一次情報の出典は各項目末に明記しています。
① まず仕様を 1 表で押さえる|ここからズレるとトラブルになる
原因切り分けの起点として、SQA85 の純正仕様の数字を 1 つの表にまとめます。本記事で示すしきい値(55 mm BF、32 mm ストローク、50 mm 露受け、4.62 kg 総重量など)はすべてこの表の数字に揃えてあります。
| 項目 | 仕様 | 出典 |
|---|---|---|
| 光学設計 | Quintuplet Air-Spaced Petzval(SD ガラス 2 枚) | 公式マニュアル §1 |
| 口径 / 焦点距離 / F 値 | 85 mm / 408 mm / F4.8 | 公式マニュアル §7 |
| イメージサークル | 44 mm(フルフレーム対応) | 公式マニュアル §7 |
| RMS スポット半径 | 中心 < 1.6 µm / 周辺 < 2.5 µm | 公式マニュアル §2 Key Features |
| 推奨バックフォーカス | 55 mm(対応 40〜70 mm) | Sharpstar 公式 / First Light Optics 仕様表 |
| フォーカサー | 2.8 インチ デュアルスピード ラック&ピニオン(ストローク 32 mm) | 公式マニュアル §2 / §7 |
| リアアダプタ | M68×1 / M54×0.75 / M48×0.75(ローテーター後端 M76×1) | 公式マニュアル §1 / 光学ベンチテストレポート page 3 |
| 露受けシェード | スライド式(ストローク 50 mm、内面フェルト貼り) | 光学ベンチテストレポート page 1 / page 8 |
| 鏡筒長 | シェード収納時 403 mm / 伸長時 439 mm | First Light Optics 仕様表 |
| 重量 | OTA 3.64 kg / リング・ダブテール込み総重量 4.62 kg(10.16 lb) | 公式マニュアル §7 / First Light Optics |
| ダブテール / ファインダーシュー | Vixen 規格ダブテール / 上面ファインダーベース 2 箇所 + 上部ダブテール 1 箇所 | 公式マニュアル §3.2 / 光学ベンチテストレポート page 1 |
出典: Askar SQA85 User Manual §1 / §2 / §7、Sharpstar 公式 SQA85 製品ページ、First Light Optics 仕様表、Marc Khatchadourian 光学ベンチテストレポート(Teleskop-Express)
② 接続・バックフォーカス系|SQA85 のトラブルが最も集中する領域
SQA85 はフラットナー内蔵の Petzval 設計のため、撮影鏡筒としては「ピントさえ合えば四隅まで丸い点像」が出ます。逆に言うと、四隅が伸びる・コマ状になる・点像なのに四角く欠ける等の症状はほぼ全て撮像面までの距離(バックフォーカス)またはネジ・アダプタ起因であり、光学そのものが原因であることは稀です。まずここから順に潰します。
原因 1|バックフォーカスが 55 mm からズレている
症状:視野の中心は丸い点像なのに、四隅で星が放射状・羽根状に伸びる
原因:センサー面までの距離が公式推奨の 55 mm(許容 40〜70 mm)から外れている。M48 アダプタの場合、カメラの T2 マウントからセンサー面までの距離 17.5 mm を含めて 55 mm 合算する設計
対処:使用するカメラ+アクセサリーの「センサー面まで」の距離を合算し、55 mm に合わせる。フィルタードロワー、OAG、ローテーター、延長リングを噛ませた場合の総和を必ず再計算する。許容範囲 40〜70 mm の中でも、四隅の伸びがゼロになるのは 55 mm 付近
出典: Sharpstar 公式 SQA85 仕様「Supports 40-70mm range (Recommended connection length is 55mm)」、First Light Optics 仕様「Rear-end connection distance: Supports 40-70mm range (Recommended connection length is 55mm)」
原因 2|アダプタの段選択(M68 / M54 / M48)を間違えている
症状:センサー周辺で減光がきつい/視野の隅が物理的にケラれる
原因:センサー周辺光束に対してネジ径が細すぎる。SQA85 のローテーター後端は M76×1 ネジで、ここに M68×1 / M54×0.75 / M48×0.75 の 3 段から選んで装着する設計。フルフレーム機(α7 / 6D 系・ZWO ASI2400/2600/6200 系)で M48 まで絞り込むと、対角線方向のフィルター遮蔽と相まってビネットが増える
対処:フルフレーム使用時は可能な限り太いネジ径(M68 > M54 > M48)を残してカメラまで降ろす。APS-C・フォーサーズなら M54 で十分。フィルター搭載時はフィルター径 2 インチ=有効径約 46 mm を踏まえてシステム全体の最小内径を点検
出典: 光学ベンチテストレポート page 3「The output of the camera rotator has an M76x1 thread in order to mount three adapters (supplied as standard) superbly machined: M48x0.75 – M54x0.75 – M68x1」、公式マニュアル §1 Key Features「M68, M54, and M48 threaded adapters」
原因 3|カメラ T2 リング(55 mm BF)でフォーカサーが中間に来ない
症状:素のカメラ+T2 リングだけなのに、ピントがフォーカサー端寄りでしか合わない
原因:カメラ側 T2 リングだけの場合、フォーカサーは設計上ストローク 32 mm のほぼ中間(約 17 mm)に来るのが正常。それでも端に張り付くのは、リング側で意図せず延長リングや余分なスペーサーが挿入されている可能性が高い
対処:カメラ前のアダプタ・リングを 1 つずつ外しながら、各部位の厚みを実測し合計が 55 mm になっているか検算する。光学ベンチテストでも「T2 リング装着時はフォーカサー中間(約 17 mm 位置)」が記録されている
原因 4|ガイドスコープ運用時に延長リングを忘れている
症状:OAG(オフアキシスガイダー)を使わずガイドスコープ運用に切り替えたら、ピントが合わなくなった
原因:OAG を外したぶんバックフォーカスが短くなり、フォーカサーが伸びきりでもピントが届かない
対処:OAG が占めていた厚みを補う延長リングを挿入する。光学ベンチテストでは6 mm〜25 mm 厚みの延長リングを噛ませる余裕があると記録されている。ガイドスコープ装着の場合はこの範囲で OAG の厚みを置き換える
原因 5|フィルタードロワー+OAG+フィルターホイールでストローク不足
症状:フルセットを組んだら、フォーカサーがほぼ伸びきり/引き切りで余裕がない
原因:SQA85 のフォーカサーストロークは 32 mm。フィルタードロワー+OAG+ホイールを直列で並べると、各段で数 mm ずつ厚みが積み上がり、ストロークが残らない
対処:(a) フィルタードロワーを使う場合は OAG をホイール内蔵タイプに置換、(b) アダプタの段数を整理し M68 直接接続でローテーター段を 1 段省く、(c) 必要ならAskar 純正の M54/M48 Backfocus Adjuster(±2 mm 調整 / 0.05 mm 刻み / 厚さ 18 mm)でフィルターの屈折補正分を吸収する設計に変える
出典: 公式マニュアル §7「Focuser Travel: 32 mm」、Sharpstar 公式 M54/M48 Backfocus Adjuster「can be adjusted ± 2mm of the backfocus / Each unit is a 0.05mm precision adjustment / 18mm thickness」、Sharpstar 公式 Multifunctional Filter Drawer「designed with M42, M48 and M54 thread」
原因 6|アダプタの噛み込み/斜め噛み(クロススレッド)
症状:同じ構成なのに四隅の星が一方向だけ伸びる/回転で星像変形の方向が変わる
原因:M68・M54・M48 各段でネジが斜めに入っていて、撮像面に対してセンサーが傾いている(チルト)。SQA85 はリアアダプタが「トゥース&リブ」加工で手回しできる構造のため、急いで締めると最初の数山が斜めのまま固定されてしまう
対処:各段で「逆回しで噛み合いを探す → 抵抗なく回るところから本締めする」順序を徹底する。締結後にローテーターを 90° 回転させて星像変形方向が一緒に回るなら撮像面のチルト、回らないなら光学側
出典: 公式マニュアル §1「all toothed and ribbed for easy manual rotation and secure attachment of various accessories」、公式マニュアル §6 Troubleshooting「Ensure all adapters are correctly threaded and tightened」
③ フォーカサー系|ストローク・ロック・電動化のつまずき
SQA85 は 2.8 インチのデュアルスピード(粗動・微動)ラック&ピニオンフォーカサーを搭載しており、CNC アンチリフレクション内面処理+つや消し塗装で迷光対策も施されています。逆に言うと、構造が高性能な分だけ「ロック忘れ」「テンション過剰」のような操作系の落とし穴が出やすい部分です。
原因 7|フォーカサーロックを締めたままピント調整しようとしている
症状:微動ノブが重い/回らない、または無理に回したらギアが空転する感覚
原因:SQA85 のフォーカサーには「フォーカスロックホイール」が付いており、撮影中の落下を防ぐためのロックを締めたまま回そうとしている
対処:ピント合わせの前にロックを緩める → 合焦後にロックを締める、の順を徹底。電動フォーカサー使用時もこの手順は同じ
出典: 光学ベンチテストレポート page 3「focus locking wheel」記載のフォーカサー構成
原因 8|フォーカサーテンションが緩い/きつい
症状:カメラ+ホイール装着時にフォーカサーが自重で下がる/逆にノブが極端に重い
原因:フォーカサーの引き出しテンション調整ネジが、装着機材の重さに合っていない。公式マニュアル §6 Troubleshooting でも「focuser tension」が「Difficulty achieving sharp focus」の Possible Cause として明示されている
対処:テンション調整ネジ(フォーカサー側面)で機材重量に合わせて締める。増し締めし過ぎは厳禁(公式マニュアル §5 Mechanical Parts に「Do not overtighten. The focuser mechanism is designed for durability; avoid applying excessive force」と明記)
出典: 公式マニュアル §6 Troubleshooting row 2「Difficulty achieving sharp focus / focuser tension / Adjust focuser tension if it feels too loose or too stiff」、公式マニュアル §5 Mechanical Parts「Periodically check all screws and fasteners to ensure they are snug. Do not overtighten」
原因 9|電動フォーカサー取付の組み合わせ違い
症状:純正の電動フォーカサーアダプタを買ったが、ZWO EAF / ToupTek / Pegasus / iOptron など別ブランドのモーターと噛み合わない
原因:SQA85 のフォーカサーは「ほとんどの市販モーターフォーカサーに対応」と公式に記載されているが、対応ブランドは具体的に ZWO、ToupTek、AstroAsis、QHY、Pegasus、iOptron 等が確認されている。AF キットはブランド組み合わせごとに別売りで、流用は基本的にできない
対処:使用する電動フォーカサー本体の銘柄を最初に決め、SQA85 + そのブランドの組み合わせ専用 AF Kit(プーリー・ベルト・ブラケット)を入手する
出典: 公式マニュアル §3.2「The focuser is designed to be compatible with most motorized focusers on the market」、光学ベンチテストレポート page 3「Threads are present on the body of the rack compatible with most motorized focusers on the market: ZWO, Toup Tek, astroasis, QHY CCD, Pegasus, Ioptron」
原因 10|粗動・微動の使い分けを誤って合焦できない
症状:微動だけで延々と回しても星像のシャープさが追い込めない/一気に粗動を回したら大きく外した
原因:SQA85 のフォーカサーはデュアルスピード(粗動 1:1 と微動 1:10)。Petzval 設計上、合焦位置は鋭く、粗動だけ/微動だけでは追い込みにくい
対処:「粗動で像が小さくなる位置の付近まで → 微動で最小スポットへ追い込む」の 2 段運用を徹底。公式マニュアル §4.1 にも「The coarse adjustment knob allows for rapid changes, while the fine adjustment knob provides minute adjustments for critical focus」と手順が明記されている
出典: 公式マニュアル §4.1 Focusing「Use the dual-speed focuser knobs to achieve precise focus. The coarse adjustment knob allows for rapid changes, while the fine adjustment knob provides minute adjustments for critical focus」、光学ベンチテストレポート page 3「1/10 dual speed rack and pinion (very smooth and precise)」
④ 機構・搭載系|マウントへの固定とリングまわり
SQA85 は鏡筒径に対してチューブリングがかなり接近した(コンパクトな)設計のため、片手で持ち上げると掴みにくく、不意の落下事故が起きやすい構造です。マウント取付と運搬時のグリップに気を配ります。
原因 11|マウントへのダブテール固定が緩い
症状:追尾中に星が流れる/視野が突然ジャンプする
原因:Vixen 規格ダブテールプレートのクランプが完全に締まっていない。公式マニュアル §3.1 でも「Ensure all clamps are tightened to prevent movement」と明記されている
対処:マウント側クランプを2 本ともしっかり締める。鏡筒の前後で軽くゆすって遊びがないか確認。Vixen ダブテール(標準 290 mm 長)の前後位置で重心を取ってから本締めする
出典: 公式マニュアル §3.1 Attaching to a Mount「Securely attach the dovetail plate to your compatible altazimuth or equatorial mount. Ensure all clamps are tightened to prevent movement」、光学ベンチテストレポート page 1「standard Vixen style 290mm dovetail plate」
原因 12|チューブリングの開閉ノブの使い方
症状:リングが鏡筒を強く締めすぎている/逆に緩くて鏡筒が回ってしまう
原因:SQA85 のチューブリングは蝶ネジ(eyelet screw)2 個で開閉する設計。工具不要で手締めできるため、感覚で締めすぎたり緩すぎたりが起きやすい
対処:鏡筒の重さ(OTA 3.64 kg)を保持できる必要最小限の力で締める。締め過ぎると鏡筒外周に痕が残るリスクがある
出典: 光学ベンチテストレポート page 4「Two eyelet screws allow the rings to be opened and closed easily and safely」、公式マニュアル §7「Item Weight: 10.16 pounds (4.62 kg)」
原因 13|運搬時に鏡筒を直接掴んで落下リスク
症状:鏡筒外周を直接掴むと、リングが鏡筒に接近している分グリップが浅く滑りやすい
原因:公開済みの光学ベンチテストレポートにも「the rings are very close to the tube, gripping is not easy and could drag the tube to the ground」と運搬時のグリップしにくさが指摘されている
対処:移動・取り回しは必ずダブテールプレートまたは別売りキャリングハンドル(取っ手)を握る。鏡筒本体側面のホールド禁止。運搬時は付属の Oxford 布製キャリングケースに収納
原因 14|ローテーターの締結が緩い/回転位置が決まらない
症状:カメラを手で回そうとしたら、ローテーターごと回ってしまう/逆に固くて回らない
原因:SQA85 はカメラローテーター(標準装備)に重い機材を載せた状態でも回転位置を保持する設計だが、サムスクリュー式のため締め忘れ・締めすぎが起きる
対処:構図確定後、カメラローテーターのサムスクリューで回転位置をロック。光学ベンチテストではローテーターと一体化したフォーカサー後段の鏡像ズレも問題なしと記録されており、しっかり締めれば追尾中にズレることはない
⑤ 露付き・温度順応・環境系|湿度の高い夜に効く運用
公式マニュアル §6 Troubleshooting の 3 行目「Dew or condensation on the objective lens」では、解決手順として① 露受けシェード全展開 → ② 外部ヒーターストラップ → ③ 気温順応が順番に明記されています。湿度の高い時期はこの 3 ステップを順に実施します。
原因 15|露受けシェードを完全に伸ばしていない
症状:撮影中に対物レンズに薄く曇り/結露が出る
原因:SQA85 のスライド式露受けシェードを伸ばしていない、もしくは中途半端な位置で固定している。シェードのストロークは 50 mm(光学ベンチテストレポート page 1)
対処:シェードを最大まで(50 mm 全展開)スライドさせて使う。公式マニュアル §6 Troubleshooting にも「Extend the sliding dew shield fully」と明記されている
出典: 公式マニュアル §6 Troubleshooting「Dew or condensation on the objective lens / Extend the sliding dew shield fully」、光学ベンチテストレポート page 1「The dew shield is sliding with a 50 mm stroke」
原因 16|外部ヒーターストラップを使っていない
症状:シェード全展開しても結露が止まらない
原因:放射冷却で対物レンズ表面が周囲気温より下がり、露点を下回っている
対処:対物レンズ周辺に外部ヒーターストラップを巻く(公式マニュアル §6 Troubleshooting で明示推奨)。光学ベンチテストレポートの実夜間運用記録では、シェード内面のフェルト貼りと併用して50% 出力のヒーターストラップで、湿度の高い夜・鏡筒を子午線付近に 3 時間以上向けても結露無しと報告されている
出典: 公式マニュアル §6 Troubleshooting「Consider using an external dew heater strap around the objective end of the telescope」、光学ベンチテストレポート page 8「the interior is covered with felt and due to the installation of a heating resistor set at 50%, I did not have any dew deposit on the front lens despite the cold test nights with a high humidity level and the tube pointed near the meridian for more than 3 hours」
原因 17|鏡筒を気温順応させていない
症状:持ち出し直後に星像がモヤモヤする/ピントを追い込んでも甘い
原因:暖かい室内から外気温の低い屋外に持ち出した直後は、鏡筒内部の空気が外気温と差を持ち、像の揺らぎ(チューブカレント)を起こす。同時に表面温度差で対物レンズが結露する
対処:公式マニュアル §6 Troubleshooting に明記の通り「Allow the telescope to acclimate to ambient temperature before use」。撮影開始の少なくとも 30 分前から外気にさらしておく(光学ベンチテストでは「mounted during the day allowing the entire configuration to be up to temperature during the night」と運用記録あり)
出典: 公式マニュアル §6 Troubleshooting「Allow the telescope to acclimate to ambient temperature before use」、光学ベンチテストレポート page 5「All the instrumentation necessary for taking photos was mounted during the day allowing the entire configuration to be up to temperature during the night」
⑥ 光学・周辺画質系|仕様内とトラブルの線引き
SQA85 は中心 RMS < 1.6 µm、周辺 RMS < 2.5 µmという極めて鋭い設計値を持ちますが、それでも「周辺減光は必ず存在する」「ハロー・フレアはゼロではない」など、F4.8 の明るい光学系として避けられない仕様内の現象があります。これらは「トラブル」ではなくフラット補正や構図で吸収します。
原因 18|周辺減光(ビネット)をフラットで補正していない
症状:フルフレームで撮影すると周辺がやや暗い/中心と縁で色被りが見える
原因:SQA85 は仕様通り、フルフレームで周辺減光が存在する。光学ベンチテストでは同心円状にビネット約 16%と測定されており、これは Sharpstar 公式の「Relative illumination」テーブルに沿った値
対処:フラットフレームを撮影してスタッキング時に補正する。16% 程度の同心円ビネットはフラットで容易に除去できる(光学ベンチテストでも「perfectly concentric which we will very easily remove with the taking of flats」と記録)。フラットなしで運用しない
原因 19|像面歪曲(フィールドカーバチャー)は仕様内 13%
症状:四隅で僅かに星像が伸びる/中心と四隅で星のサイズが微妙に違う
原因:SQA85 は Petzval 設計でフラットナー不要だが、F4.8 のオープン F 比のアストログラフとして光学ベンチテスト上像面歪曲 13%と測定されている。中心と周辺の星サイズはほぼ同等で、フラットフィールドとして非常に優秀な数字
対処:13% は「F4.8 のオープン系で四隅まで点像」の仕様内値で、ピント追い込みと適切な BF(55 mm)で十分小さく抑えられる。光学ベンチテストでも「homogeneous field with stars of similar sizes」と評価されている
原因 20|明るい星のオフセンターハロー
症状:視野内に明るい恒星(例:ベガ級)がある時、星周りに薄いハロー・色付きが見える
原因:F4.8 のオープン F 比では多少のオフセンターハローは避けられない。光学ベンチテストでもベガを中心と四隅で 60 秒露光した結果「very weak off-center halos, no flare」と記録されており、レンズコート由来のオフセンターハローは仕様内
対処:(a) 強烈な明るい恒星を視野外に避ける構図変更、(b) 短時間露出を多数加算する撮影方針、(c) 後処理で減算する。光学ベンチテストでは IC63(ゴーストネビュラ)や IC2118(魔女の横顔星雲)のような構図で対象内に明るい星がある場合の注意として記録されている
原因 21|眼視(天頂プリズム)で像が出ない
症状:50.8 mm の天頂プリズムを付けて眼視しようとしたらピントが出ない
原因:SQA85 は撮影専用のアストログラフ。5 番目のレンズがカメラローテーター後面から 40 mm 位置に組み込まれているため、31.75 mm/50.8 mm の天頂プリズムが構造的に挿入できない
対処:SQA85 は基本的に眼視運用しない。「写真撮影用」と割り切る。光学ベンチテストレポートでも「The SQA is an astrograph, there is no output at the 50.8mm sleeve to make visual / making visual with very open refractors is not in their DNA」と明確に整理されている
⑦ 保管・取扱・安全|長く使うためのメンテナンス
原因 22|対物レンズを頻繁に清掃してしまう
症状:レンズ表面に拭き傷/コートのスジが残った
原因:清掃のしすぎ。公式マニュアル §5 Maintenance は「Only clean the objective lens when absolutely necessary」と明記している
対処:埃は柔らかいブラシで払う → 必要時のみ専用クリーニング液 + マイクロファイバー布の順で最小限。素手でレンズ面に触れない。日常の手入れは「触らない・カバーする」が基本
原因 23|保管・運搬を適切なケースで行っていない
症状:運搬中の振動でアダプタが緩む/鏡筒外面に擦り傷
原因:付属の Oxford 布製キャリングケース(プリフォーム入りリインフォース・ナイロン)に収納していない
対処:公式マニュアル §5 に明記の通り「Store the telescope in its original padded case or a similar protective container when not in use to protect it from dust, moisture, and physical damage. Store in a cool, dry place」。車載運搬時はケース込みでさらにシートベルト等で固定する
出典: 公式マニュアル §5 Maintenance Storage「Store the telescope in its original padded case or a similar protective container when not in use to protect it from dust, moisture, and physical damage. Store in a cool, dry place」、光学ベンチテストレポート page 1「The set comes with a magnificent reinforced nylon case (AM5 type)」
原因 24|太陽を望遠鏡で直視する(重大警告)
症状:不可逆な眼の傷害(失明含む)
原因:適切な対物太陽フィルターなしで太陽を望遠鏡で覗くこと自体が禁忌
対処:公式マニュアルは「DO NOT LOOK AT SUN THROUGH TELESCOPE. IT WILL CAUSE IRREVERSIBLE DAMAGE TO YOUR EYES」と冒頭で明示警告している。SQA85 は撮影用アストログラフでもあるため、日中の試写・観望含めて太陽方向には絶対に向けない
⑧ 主要接続部位の概念図|M76→M68→M54→M48 の並び
SQA85 のリアアダプタの並びを 1 つの図に整理しました。各段のネジ径とフォーカサーストロークの関係を視覚化しています。
⑨ 関連商品|本記事で扱った機種・運用に必要な周辺機器
記事内で取り上げた SQA85 本体および接続まわりで使う周辺機器(バックフォーカスアジャスター・フィルタードロワー)は、いずれも当店で取り扱いがあります。在庫・組み合わせ最適化のご相談は公式 LINE が早道です。
- Askar SQA85 鏡筒(85 mm F4.8 quintuplet Petzval astrograph) — 本記事の Pillar 商品。フラットナー不要・フルフレーム 44 mm 対応の主軸鏡筒
⑩ Askar SQA85|商品ページ・公式 LINE のご案内
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最終更新: 2026-06-26/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は Askar 公式マニュアル・Sharpstar 公式製品ページ・公開済み光学ベンチテストレポートに基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。
⑪ よくある質問(FAQ)
Q1. SQA85 の推奨バックフォーカスは何 mm ですか?
公式仕様で55 mm(許容範囲 40〜70 mm)です。M48 アダプタの場合は、カメラの T2 マウントからセンサー面までの距離(カメラごとに公表値あり)を含めて 55 mm に合算します。
出典: Sharpstar 公式 SQA85 仕様、First Light Optics 仕様表
Q2. フォーカサーストロークは何 mm ですか?
公式マニュアル §7 で32 mmと明記されています。光学ベンチテストでは T2 リング(55 mm BF)装着時に、フォーカサーが中間付近(約 17 mm 位置)に来ると報告されています。
出典: 公式マニュアル §7 Specifications、光学ベンチテストレポート page 4
Q3. フラットナーや補正レンズは別途必要ですか?
不要です。SQA85 はIntegrated Self-Flattened Designで 44 mm フルフレームをカバーします(公式マニュアル §1 / §2 Key Features)。外部フラットナーや BF 計算は不要で、ピントが合えば四隅まで点像になる設計です。
Q4. 眼視で使えますか?
基本的に眼視運用には適しません。SQA85 は撮影専用のアストログラフで、5 番目のレンズがカメラローテーター後面から 40 mm 位置に組み込まれているため、31.75 mm/50.8 mm の天頂プリズムが構造的に挿入できません。
Q5. 電動フォーカサーは何が使えますか?
公式マニュアル §3.2 に「most motorized focusers on the market」と記載があり、光学ベンチテストレポートでは具体的にZWO、ToupTek、AstroAsis、QHY、Pegasus、iOptron 各社のモーターと互換可と報告されています。AF Kit(プーリー・ベルト・ブラケット)はブランドの組み合わせごとに別売りです。
出典: 公式マニュアル §3.2、光学ベンチテストレポート page 3
Q6. 周辺減光が気になります。トラブルですか?
トラブルではありません。光学ベンチテストで同心円状に約 16% の周辺減光が測定されており、これは Sharpstar 公式の「Relative illumination」テーブルに沿った仕様内の数字です。フラットフレーム補正で容易に除去できます。
出典: 光学ベンチテストレポート page 5「vignetting (Fig.11) which does not exceed 16% perfectly concentric」
Q7. 露受けシェードのストロークは何 mm ですか?
50 mm のスライド式です。湿度の高い夜は必ず全展開(50 mm 引き出し)し、外部ヒーターストラップ併用が公式マニュアルの推奨手順です。光学ベンチテストでは内面のフェルト貼り+50% 出力のヒーターストラップで、湿度の高い 3 時間以上の運用でも結露無しと記録されています。
出典: 光学ベンチテストレポート page 1 / page 8、公式マニュアル §6 Troubleshooting
Q8. 鏡筒の総重量は何 kg ですか?AM5 / AM5N で運用できますか?
OTA 単体で 3.64 kg、リング・ダブテール込みの総重量で 4.62 kg(10.16 lb)です。撮影機材(カメラ・フィルター・OAG 等)を加えた実運用重量で、お使いの赤道儀の搭載重量(撮影用途は実用上カタログ値の 60〜70% 目安)に収まるかを確認してください。具体的な組み合わせ可否は LINE でご相談ください。
出典: 公式マニュアル §7 Specifications「Item Weight: 10.16 pounds (4.62 kg)」、First Light Optics 仕様
Q9. 保証はどうなっていますか?
弊社(株式会社天文堂)でご購入いただいた SQA85 は、弊社独自の初期不良対応 60 日+3 年保証でサポートいたします。フォーカサーのテンション調整・アダプタ噛み合いなどの個別調整も含めてご相談ください。
Q10. レンズの清掃はどれくらいの頻度で行えばいいですか?
公式マニュアル §5 Maintenance は「絶対に必要な時のみ」清掃することを明記しています。普段は触らない・保管時はキャップ装着・移動時は付属の Oxford 布製キャリングケースに収納、で日常メンテナンスとしては十分です。
出典: 公式マニュアル §5 Maintenance「Only clean the objective lens when absolutely necessary」
参考にした一次情報
- Askar SQA85 Astrograph Instruction Manual(公式マニュアル全文・8 ページ PDF)
- Jiaxing Sharpstar Optical Instrument Co., Ltd. — Askar SQA85 公式製品ページ
- Sharpstar 公式 SQA85 User's Manual ダウンロードページ(2024-09-24 更新)
- Sharpstar 公式 M54/M48 Backfocus Adjuster 製品ページ
- Sharpstar 公式 Multifunctional Filter Drawer 製品ページ
- First Light Optics 公式仕様表(Askar 仕様転載)
- Marc Khatchadourian, Askar SQA85 光学ベンチテストレポート(Teleskop-Express 公開・8 ページ PDF)
- ManualsLib SQA85 User Manual 公開ページ
本記事で扱った商品ページはこちら
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最終更新: 2026-06-26/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は Askar 公式マニュアル・Sharpstar 公式製品ページ・公開済み光学ベンチテストレポートに基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。