ASIAIR と PC 併用 遠征運用完全ガイド|ASIStudio 連携・FITS 後処理・SMB/USB-C 転送まで

ASIAIR と PC 併用 遠征運用完全ガイド|ASIStudio 連携・FITS 後処理・SMB/USB-C 転送まで

ASIAIR はスマホ/タブレットだけで撮影〜ガイド〜プレートソルブまで完結する「PC レス運用」を前提に設計されています。一方で、撮影後の FITS 後処理(スタック・ストレッチ)や、大量の画像転送、ASI カメラの USB 直結運用には PC(ASIStudio)の方が圧倒的に強い場面があります。本記事は ZWO 公式マニュアル・公式ガイド・スタッフ回答のみを根拠に、ASIAIR Plus / Mini と PC を「組み合わせて使う」ための遠征現場ワークフローを、ネットワーク接続・画像転送・ASIStudio 各モジュール・FITS 後処理まで一本にまとめます。

① なぜ「ASIAIR + PC」の併用が現実的なのか

ZWO の公式 Quick Guide は ASIAIR を「スマートフォンまたはタブレットのアプリから、撮影・ガイド・プレートソルブ・シーケンスを行えるポータブル WiFi 機器」と位置づけています出典: ZWO ASIAIR Quick Guide §1「The ZWO ASIAIR is a portable WiFi device ... preview, image, guide, plate solve and sequence, essentially controlling your imaging camera and telescope, all through an app on your phone or tablet」。つまり ASIAIR 単体で撮影は完結します。

一方、PC 側には ZWO が無償提供する ASIStudio という別のソフトウェアがあり、これは「ASICap(惑星)/ASIImg(DSO)/ASILive(ライブスタック)/ASIFitsView(FITS ビューア)/ASIDeepStack(スタック)」の 5 モジュールを統合したワンストップソフトです出典: ZWO ASIStudio Manual §1 Introduction「ASIStudio is a one-stop astrophotography software that integrates ASICap (planetary imaging), ASIImg (deep sky imaging), ASILive (deep sky imaging live stacking), ASIFitsView (fits image viewer), and ASIDeepStack (deep sky stacking)」

この 2 つは「対立する選択肢」ではなく、現場では役割分担して併用するのが合理的です。本記事の前提は次の通りです。

担当 機器 役割
リアルタイム制御 ASIAIR + スマホ/タブレット プレートソルブ、極軸合わせ、オートガイド、Autorun シーケンス
ファイル管理/確認 PC(USB-C/WiFi/LAN 経由) 撮影 FITS の転送、現場プレビュー、メタ情報チェック
後処理 PC(ASIStudio) ASIFitsView での確認、ASIDeepStack でのスタック、ASILive でのライブ表示
単体撮影(ASIAIR を使わない選択肢) PC + ASI カメラ USB 直結 ASIStudio(ASICap / ASIImg / ASILive)で完結

出典: ZWO 公式「What is ASIStudio and What Can It Bring Us?」(ASIStudio は ASIAIR と別のデスクトップ向け統合ソフトとして案内されている)

② ASIAIR Plus / Mini のハードウェア基本(PC 連携に関わる部分)

PC との連携方法を決める前に、ASIAIR Plus と ASIAIR Mini が物理的にどのポートを持っているかを押さえます。本表は ZWO 公式 Quick Guide とフォーラム上の ZWO スタッフ回答に基づき記載しています。

項目 ASIAIR Plus(256GB) ASIAIR Mini
USB ポート USB 2.0 ×2 + USB 3.0 ×2 USB 2.0 ×4(USB 3.0 ポートなし)
USB-C ポート あり(PC 接続でファイル転送用途) あり(5V 給電にも利用可)
有線 LAN Gigabit Ethernet あり なし
DC 出力 4 系統 × 12V/3A(2.1×5.5mm センターポジティブ)。ただし本体入力上限が 6A のため 4 系統同時に 3A 引くのは不可 4 系統 × 12V DC 出力。4 ポート合計の上限が約 3A
DC 入力 DC 12V/最小 11.5V、最大 6A(推奨 5A 以上) 12V または 5V(最小 5V@2.5A、待機消費 約 2.5W)
内蔵ストレージ 256GB eMMC(うちシステム約 12GB、利用可能 244GB 前後) 32GB SD カード(オリジナル ASIAIR と同方式)
DSLR シャッター あり あり
WiFi 2.4GHz + 5GHz デュアルバンド(AP モードは 2.4/5GHz、Station モードは 2.4GHz のみ) 2.4GHz + 5GHz デュアルバンド、外部アンテナ

出典: ZWO ASIAIR Quick Guide §3「Getting to know your ASIAIR」(電源・SD カード仕様)、ZWO 公式「Four ways to connect the ASIAIR PRO to network」(Station モード 2.4GHz 制約)、ZWO Forum PMTeam@ZWO 回答「We support Type-C interface for connecting peripherals (such as PC) for file transfer.」

PC 連携にとって決定的な差は 3 点です。

  • 有線 LAN の有無:Plus には Gigabit Ethernet があるため、PC を有線で同一 LAN に置けば WiFi 帯域に依存せず SMB で大容量転送ができる。Mini は無線のみ。
  • USB 3.0 の有無:Plus は USB 3.0 ×2 を備え、ASI Pro 系(USB 3.0 高速読み出し)の本来のスループットを引き出せる。Mini は USB 2.0 のみで、惑星動画など極端な高フレームレートでは Plus が有利出典: ZWO Forum ASIAIR Plus vs Mini 比較スレッド(USB 3.0 の有無による惑星動画モードの差異)
  • 内蔵ストレージ:Plus は 256GB eMMC、Mini は 32GB SD カード方式。長時間遠征では Plus の容量が圧倒的に有利。

③ 遠征現場で PC をつなぐ 4 通りのネットワークモード

ZWO 公式は ASIAIR PRO の接続方法として 4 通り(AP モード/Station モード/有線 LAN/ポケット WiFi 経由)を案内しています。これらはそのまま Plus / Mini にも適用できます出典: ZWO 公式「Four ways to connect the ASIAIR PRO to network」

方式 1|AP モード(ASIAIR を WiFi アクセスポイントにする)

用途:遠征地(インターネット環境なし)での標準運用。
仕組み:ASIAIR を電源 ON 後 15 秒待つと、SSID「ASIAIR_XXXXXXXX」が現れる。既定パスワードは 12345678。スマホ/タブレット/PC からこの SSID に接続する。
PC を併用する場合:タブレットで ASIAir アプリを動かしている隣で、PC も同じ ASIAIR_XXXXXXXX に接続すると、PC は ASIAIR の SMB 共有(\\10.0.0.1)から撮影済み FITS を吸い出せる。AP モードは 2.4GHz / 5GHz 両対応のため、PC が 5GHz 対応なら大容量転送も実用的。

出典: ZWO 公式 同上「Power on the ASIAIR PRO, and wait for 15 seconds ... the hotspot name similar as 'ASIAIR_XXXXXXXX', the default password is '12345678'」「Supports both 2.4GHz and 5GHz」

方式 2|Station モード(家のルータ/モバイルルータ経由)

用途:自宅ベランダ撮影や、現場でモバイルルータを持ち込んでいる場合。
仕組み:一度 AP モードでアプリから ASIAIR に接続したのち、「WiFi Station Mode」を有効化し、橋渡しさせたい WiFi SSID とパスワードを入力する。以降、ASIAIR は既存の WiFi に「ぶら下がる」ため、PC・スマホ・タブレットは普段使いの WiFi に接続したまま ASIAIR を操作・転送できる。
制約:Station モードは 2.4GHz のみ対応。5GHz の家庭 WiFi だけしかない環境では使えない。

出典: ZWO 公式 同上「The station mode only supports for 2.4GHz.」

方式 3|有線 LAN(Plus 専用・最も安定)

用途:自宅でルータと ASIAIR Plus を LAN ケーブル直結。
仕組み:Plus の Gigabit Ethernet にケーブルを刺し、ルータの LAN ポートに接続。ASIAir アプリ設定で「Wired Ethernet」が「Connected」になることを確認。PC も同じ LAN にいれば、ファイルマネージャから ASIAIR の IP アドレスを叩いて SMB アクセス可能。
メリット:WiFi 帯域競合・干渉の影響を受けず、Gigabit 速度で FITS を吸い出せる。長時間 Autorun の安定性も最高。

出典: ZWO 公式 同上「Built-in Gigabit Ethernet port provides 'better reliability and higher data throughput than a wireless connection.'」

方式 4|USB-C 直結(Plus のみ・撮影後のファイル吸い出し専用)

用途:撮影が終わったあと、ASIAIR の電源を入れたまま PC に USB-C 直結して大容量 FITS をまとめて吸い出す。
仕組み:ASIAIR Plus 背面の USB-C ポート(公式に「PC」用途として案内)に USB-C ↔ USB-A ケーブルで PC を接続。ZWO スタッフの公式回答では「Type-C インタフェースを PC 等のペリフェラル接続によるファイル転送のためサポートする」と明記されている。
制約:USB-C ↔ USB-C ケーブルは非対応の報告があり、USB-C ↔ USB-A が無難。また ASIAIR Plus の USB-C は USB 2.0 プロトコル実装で、公式仕様の文書化は十分とは言えない。確実な高速転送を狙うなら方式 3 の有線 LAN が無難。

出典: ZWO Forum PMTeam@ZWO 回答「We support Type-C interface for connecting peripherals (such as PC) for file transfer.」/ZWO Forum モデレータ回答「USB-C is a 'physical' connector specs. It can implement various protocols, USB 2...」(USB 2.0 動作)

④ 撮影画像を PC に取り込む 5 通りの方法

ZWO 公式は転送方法として「USB メモリ/WiFi/SMB/有線 LAN/SMB」の 3 通り(PRO 向け 4 通り)を案内しており、Plus にはさらに USB-C 直結が加わるため実質 5 通りになります出典: ZWO 公式「How to transfer images from ASIAIR (UPDATED)」「We provide three ways to copy the pictures to the computer」

方法 A|USB-C ↔ USB-A 直結(ASIAIR Plus 専用・最も速い)

手順:ASIAIR Plus の「PC」ラベル USB-C ポートに USB-C ↔ USB-A ケーブルで PC を接続。Windows なら自動的に外付けドライブとして認識される。あとはドラッグ&ドロップでコピー。
備考:USB-C ↔ USB-C ケーブルは公式に動作不可とされているため、必ず USB-A 側を用意する。
注意:USB-C ポートは USB 2.0 プロトコルで動作するため、Gigabit 有線 LAN と比べて純粋な転送速度では差が出る場面もある。撮影直後に「とりあえず吸い出す」用途には最も手軽。

出典: ZWO Forum PMTeam@ZWO 回答「We support Type-C interface for connecting peripherals (such as PC) for file transfer.」

方法 B|外付け USB メモリ/USB ハードディスク

手順:FAT32/exFAT/NTFS でフォーマットした USB メモリを ASIAIR の USB ポートに挿し、アプリ内「Image Management」から USB メモリへコピー。撮影終了後に USB メモリを抜いて PC に挿し直す。
容量制限:外付け USB ストレージは最大 1TB まで対応(512GB 推奨)。
注意:ZWO 公式フォーラムのスタッフ回答は「外付けは USB ドライブ(USB メモリ)を推奨」としている。また同スレでは「電源 ON 前に挿しておく必要があり、起動後の抜き差しで認識されなくなる」という報告がユーザから上がっており(公式仕様ではない)、安全のため最初から挿しておくのが無難。

出典: ZWO 公式 同上(USB メモリでの転送が「the most recommended method」)/ZWO Forum PMTeam@ZWO 回答「If you want to connect an external drive, we recommend that you use a USB drive.」

方法 C|WiFi 経由 SMB(\\10.0.0.1

手順(Windows):PC を ASIAIR の SSID に接続したのち、エクスプローラのアドレスバーに \\10.0.0.1 または \\ASIAIR と入力して Enter。共有フォルダ「Image」を開いてコピー。
手順(macOS):Finder → 移動 → サーバへ接続 → smb://10.0.0.1(または smb://ASIAIR)。
注意:共有は read-only。ASIAIR 側から削除はアプリで行う。

出典: ZWO 公式 同上「open the computer File Manager and type \\10.0.0.1」「macOS: choose Go > Connect to Server. Then type network address」

方法 D|有線 LAN 経由 SMB(Plus のみ)

手順:ASIAIR Plus を LAN ケーブルでルータに接続し、アプリで Wired Ethernet 接続を確認。アプリで割り当てられた IP アドレスを控え、PC のファイルマネージャから \\<IP アドレス>\Image でアクセス。
メリット:WiFi 干渉の影響を受けず、Gigabit 帯域で大量の FITS を高速転送できる。長時間遠征から帰宅後の「一晩分まとめて」転送に最適。

出典: ZWO 公式 同上「Connect the ASIAIR to your network via a LAN cable port」「Type the IP address in File Manager」

方法 E|SD カードリーダ直挿し(旧 ASIAIR/Pro/Mini)

手順:ASIAIR 電源を落として SD カードを抜き、付属の SD カードリーダで PC に挿す。エクスプローラで BOOT パーティション → Images フォルダを開いてコピー。
重大な注意:Windows が SD カードに対して「フォーマットしますか?」のダイアログを出すことがあり、ここで「フォーマット」を選ぶと ASIAIR の起動システムが破壊される。必ず「キャンセル」を選ぶ
備考:ASIAIR Plus は内蔵 eMMC のため、この方法は使えない(Plus はカード抜き差し不可)。

出典: ZWO 公式「3 Ways to Import Images」「You MUST select CANCEL at this point else you will format the ASIAIR boot system.」

5 方法の使い分け

方法 対応機種 速度 遠征現場での向き不向き
A: USB-C 直結 Plus 中(USB 2.0 動作) 撮影直後に PC で吸い出すのに最適
B: 外付け USB メモリ 全機種 USB 規格依存 PC を持ち込まない遠征に最適
C: WiFi/SMB 全機種 WiFi 帯域に依存 遠征中にプレビュー目的で少量転送
D: 有線 LAN/SMB Plus 高(Gigabit) 帰宅後の一括転送に最適
E: SD カードリーダ 原 ASIAIR/Pro/Mini カード規格依存 Plus では使えない(eMMC のため)

⑤ PC 側のソフト:ASIStudio をインストールして使い分ける

ASIStudio は ZWO が無償提供する PC 側統合ソフトで、5 つのモジュールに分かれています。インストール条件と各モジュールの役割を整理します。

インストールと前提

対応 OS:Windows 7 / 8 / 10(32bit / 64bit)、macOS 10.12 以降、Ubuntu 18.04 以降。
推奨インストール先:システムディレクトリ以外、かつ SSD への導入。
Windows での前提:ASI カメラを PC 直結で使う場合、ZWO のネイティブカメラドライバのインストールが必要。
macOS での前提:ネイティブドライバは不要。「Could not be authenticated」エラーが出る場合は ZWO 公式の解説手順に従う。
更新時の注意:ASIStudio のアップデート前に、必ず ASIStudio/ASICap/ASILive 等のすべての ASI 系プログラムを終了する。終了していないとインストールが失敗する。

出典: ZWO ASIStudio Manual §3①「ASIStudio currently supports Win7 / Win8 / Win10 (32bits / 64bits), Mac OS 10.12 and above, Ubuntu 18.04 and above. We recommend you install ASIStudio in non-system directories and SSD solid-state drives.」「make sure that all ASI programs (ASIStudio, ASICap, ASILive, etc.) are closed, otherwise the installation may fail」

ASICap — 惑星・月・太陽の動画撮影

ASICap は太陽系内(惑星・月・太陽)の動画撮影に特化したモジュールで、解像度・露光時間・ゲイン(0〜300 の全レンジ調整可)の調整 UI を持ちます。ADC(大気分散補正)チューニング機能や、オートガイドにも対応。
遠征現場での使い所:ASIAIR で DSO を流しつつ、惑星モードに切り替える場合は PC + ASICap に持ち替えて USB 直結で撮る、というハイブリッド運用が成立します。

出典: ZWO 公式「What is ASIStudio」「ASICap specializes in solar system imaging with quick, precise captures.」「ADC ... tuning support」「Autoguiding capabilities」

ASIImg — DSO(深宇宙)撮影

ASIImg は DSO 撮影向け。Autorun(連続撮影シーケンス)、ヒストグラムの自動・手動ストレッチをサポート。ZWO 公式は「ASIAIR の開発経験を活かして ASIImg の開発が進んでいる」と説明しており、ASIAir アプリの PC 版に近い位置づけです。
遠征現場での使い所:ASIAIR が手元にない/持ち込めない場合や、ASCOM 経由で多メーカー機材を組み合わせたい場合の代替。ASIAIR で完結する場合は不要。

出典: ZWO 公式 同上「ASIImg specializes in deep space astrophotography. ... do autorun and help you stretch the histogram」

ASILive — ライブスタック(EAA)

ASILive は PC 画面上にライブフレームを表示し、撮影中にパラメータを調整できるモジュールです。Dark / Flat / Bias のキャリブレーションフレームを取得・保存・適用してライブスタックすることが可能で、ライブスタック中のスタック前/後プレビュー、最後のスタックを取り消す機能、星マーキング・ホットピクセル除去などの上級オプションを備えます。
遠征現場での使い所:観望会・撮影会で、参加者にリアルタイムにスタック画像を見せたいときに有効。ASIAIR にはライブスタック相当の機能がアプリ内に組み込まれているため、PC を持ち込まない遠征ではアプリだけで完結します。

出典: ZWO 公式 同上「see the image stacked in real time with stretch and denoise automatically」

ASIFitsView — FITS ビューア

ASIFitsView は FITS ファイルを高速に閲覧できるビューア。ピクセルビニング(BIN1 / BIN2 / BIN4)の切替表示にも対応しており、ASIAIR で撮った FITS を「とりあえず軽く確認する」用途には最適です。
遠征現場での使い所:撮影直後に「ピントが合っているか」「ガイドが流れていないか」を素早く確認する一次チェックに使います。

出典: ZWO 公式 ASIStudio 製品ページ「ASIFitsView allows to fast and easily view FITS files.」(ZWO 公式 ASIStudio の機能一覧)

ASIDeepStack — 16-bit FITS スタック

ASIDeepStack は ZWO 公式のスタックモジュールで、入力は 16-bit FITS のみに限定されています。Lights / Darks / Flats / Bias の 4 種を取り込み、一括スタック・キャリブレーションを行い、JPG と FITS の両方を出力します。
遠征現場での使い所:本格的な後処理は PixInsight 等に渡す前提でも、現場で「今夜の Light フレームが使い物になりそうか」を確かめる一次スタックには十分強力。

出典: ZWO 公式 ASIDeepStack チュートリアル「only supports 16-bit fits files for now」「jpg and FIT format files are saved in the set path」

⑥ ASIDeepStack で ASIAIR の FITS をスタックする実例

ASIAIR で取得した FITS ファイルを、遠征から帰った直後(あるいは現場での休憩時間)に PC 上の ASIDeepStack で一次スタックする流れを具体的に示します。④章の転送方法を踏まえた、もっとも現実的なワークフローです。

手順 1:ASIAIR から PC へ FITS を取り込む

④章のいずれかの方法でファイルを取り込みます。遠征現場で素早く確認したいなら 方法 A(USB-C + SMB) または 方法 D(有線 LAN + SMB)、帰宅後にまとめて取り込むなら 方法 B(USB ドライブ転送) が現実的です。ZWO 公式の手順では SMB アクセス時にユーザ名を any として接続することが明記されており、Windows のエクスプローラから直接 `\\10.0.0.1` を叩く運用を推奨しています。

出典: ZWO 公式「3 ways to import images from ASIAIR into the computer」「username 'any'」「Address: \\10.0.0.1」

手順 2:ASIDeepStack に 4 種のフレームを取り込む

ASIDeepStack を起動し、Lights / Darks / Flats / Bias の 4 種のフォルダを指定します。入力は 16-bit FITS のみ。ASIAIR 側の保存設定は標準で FITS 16-bit のため、そのまま読み込めます。なお ZWO 公式は ASIDeepStack のキャリブレーションについて「Lights only も対応」と明記しており、Darks/Flats/Bias が用意できなくても Light フレームだけで一次スタックは可能です。

出典: ZWO 公式 ASIDeepStack チュートリアル「only supports 16-bit fits files for now」

手順 3:スタック → JPG と FITS で出力

ASIDeepStack はスタック結果を JPG(プレビュー用)と FITS(後処理用)の両方で保存パスに書き出します。ストレッチ・デノイズはスタック後に GUI 上で調整可能。PixInsight や Siril などへの本格的な後処理に持ち込む際は、スタック済み FITS を入力として使えます。

出典: ZWO 公式 ASIDeepStack チュートリアル「jpg and FIT format files are saved in the set path」

⑦ 単体運用との選び分け(ASIStudio 単体 vs ASIAIR)

「PC + ASIStudio のみ」と「ASIAIR + アプリのみ」と「両者を併用する」――どれを選ぶべきかは、運用環境と機材構成で決まります。

運用パターン 向いているシーン 弱点
PC + ASIStudio 単体 自宅・観測所など電源・場所に余裕。ASCOM 経由で多メーカー機材を統合したい。PC 画面で大きく確認したい。 PC・モニタの設営と電源確保が必須。雨天・夜露に弱い。
ASIAIR + アプリ単体 遠征。荷物を最小化したい。スマホ・タブレット 1 台で完結させたい。 画面が小さい。本格的な後処理は別途 PC が必要。対応機材は ZWO 公式リストに準拠(INDI 経由で iOptron / Celestron / Sky-Watcher / Losmandy 等のマウント対応)。
ASIAIR + PC ASIStudio 併用 遠征現場で撮影は ASIAIR、撮影合間の確認・一次スタックは PC + ASIFitsView / ASIDeepStack。観望会で参加者に大画面で見せたい。 PC 側にも電源が必要。荷物が増える。

出典: ZWO ASIAIR User Manual V1.1 §Mount Compatibility「iOptron / Celestron / Sky-Watcher / Losmandy ... via INDI」

⑧ 遠征チェックリスト(持ち物・設定確認)

ASIAIR + PC 併用前提で、現場でハマらないための持ち物と事前確認項目をまとめます。

持ち物(最小構成)

  • ASIAIR 本体(Plus または Mini)
  • 12V 電源(Plus: 12V/3A 入力+4 ポート 12V 出力/Mini: 合計 3A 程度の出力)。リチウムイオン電源やシガーソケット経由のポータブル電源を選ぶ場合は、本体側の入力規格と合致しているか必ず確認。
  • USB ケーブル(ASIAIR ⇔ カメラ・ガイダー・フォーカサー)
  • スマホ・タブレット(ASIAir アプリ)
  • PC(ASIStudio 用):Windows 7/8/10、macOS 10.12 以降、Ubuntu 18.04 以降のいずれか
  • USB-C ケーブル または LAN ケーブル(PC との転送用)
  • USB ドライブ(バックアップ・大容量転送用)

出典: ZWO ASIStudio Manual「System Requirements: Windows 7/8/10, macOS 10.12 or higher, Ubuntu 18.04 or higher」

事前確認チェックリスト

  • □ ASIAIR のファームウェアを最新版に更新済み
  • □ PC 側に ASIStudio をインストール済み(オフライン環境ではインストーラの事前 DL 必須)
  • □ PC 側のカメラドライバ(ASIStudio に同梱)も最新版
  • □ ASIAIR を AP モードで使うか Station モードで使うかを確定(5GHz を使うかどうかも含む)
  • □ 自宅で SMB 接続テスト済み(\\10.0.0.1 または \\ASIAIR
  • □ アプリ「ファイル」画面から PC への転送が成功するかをリハーサル済み
  • □ eMMC / SD カードの空き容量を確認(Plus は 256GB 内蔵、Mini は 32GB SD カード)

出典: ZWO 公式「3 ways to import images from ASIAIR into the computer」(SMB アクセスの公式手順)

⑨ よくある運用トラブルと対処

SMB 接続できない(Windows)

症状:エクスプローラから \\10.0.0.1\\ASIAIR を叩いても「ネットワークパスが見つかりません」とエラーになる。
原因:① WiFi 接続先が ASIAIR の AP になっていない/② Windows の SMB 1.0/CIFS クライアント機能が無効/③ ASIAir アプリ側で SMB 機能が有効化されていない。
対処:まず WiFi 接続先を「ASIAIR_xxxx」の AP に切り替える。続いて「Windows の機能の有効化または無効化」から SMB 1.0/CIFS クライアントを有効化(公式は明記しないが、Windows 10/11 で必要なケースあり)。最後にアプリの「設定 → ストレージ → SMB アクセス」を確認。ユーザ名は any

出典: ZWO 公式「3 ways to import images from ASIAIR into the computer」「username 'any'」「Address: \\10.0.0.1」

USB-C 接続で PC からファイル取り出しができない(ASIAIR Plus)

症状:ASIAIR Plus の「PC」表示の USB-C ポートに PC を繋いでも、USB ストレージとして見えない/速度がやけに遅い。
原因:当該ポートは物理的には USB-C 形状だが、内部的には USB 2.0 プロトコルで動作する(ZWO スタッフが公式フォーラムで明言)。USB 3.x のフル帯域は期待できない。
対処:大容量データを早く吸い出したいなら、有線 LAN + SMB(方法 D)か、USB ドライブ経由のアプリ転送(方法 B)に切り替える。USB-C 直結はあくまで小〜中容量や現場確認用と割り切る。

出典: ZWO 公式フォーラム PMTeam(ZWO スタッフ)回答「the PC port on ASIAIR Plus uses USB 2.0 protocol」

WiFi が遠くで切れる

症状:ASIAIR の WiFi が、望遠鏡から少し離れたテーブルに置いた PC・タブレットに届かない。
原因:AP モードの 5GHz は障害物・距離に弱い/Station モード時の電波到達距離。
対処:AP モードを 2.4GHz に切り替える(ASIAir アプリの WiFi 設定)。あるいは、ASIAIR Plus なら有線 LAN ポートでルーター・PC と直結する。

出典: ZWO ASIAIR User Manual V1.1「The 5GHz frequency band is supported only in AP mode.」

⑩ 関連商品

本記事で扱った ASIAIR は、機種選びで「Plus か Mini か」で迷う方が多い 2 機種です。撮影スタイル・遠征の頻度・電源確保のしやすさで選び方が変わります。

  • ZWO ASIAIR Plus 256GB:eMMC 256GB 内蔵・Gigabit Ethernet あり・12V 出力 4 ポート(3A)・5GHz AP 対応。本格的な遠征・複数夜連続撮影向け。
  • ZWO ASIAIR Mini:32GB SD カード・有線 LAN なし・12V 出力 4 ポート(合計 3A)。軽量・コンパクトで、ベランダ撮影・ライト遠征向け。

⑪ 関連記事

ASIAIR と PC 併用に関連する記事もあわせてどうぞ。

⑫ 商品ページ・公式 LINE のご案内

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最終更新: 2026-05-18/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式マニュアル・公式 FAQ・ZWO 公式ブログに基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。

⑬ FAQ

Q1. ASIAIR で撮った画像は PC でも開けますか?

はい。ASIAIR が保存する FITS ファイルは標準的な 16-bit FITS 形式なので、ASIFitsView・ASIDeepStack はもちろん、PixInsight・Siril・DeepSkyStacker など主要な天体画像処理ソフトでそのまま開けます。出典: ZWO 公式 ASIDeepStack チュートリアル「only supports 16-bit fits files」

Q2. ASIStudio は ASIAIR と同時に使えますか?

同じ撮像カメラを同時には使えません(USB は排他)。ただし「ASIAIR でメインの DSO 撮影を回しつつ、別の PC で ASIFitsView を起動して撮ったばかりの FITS をプレビューする」という併用は問題ありません。撮像カメラを ASIAIR から外して PC に繋ぎ替えれば、惑星モード(ASICap)で同じカメラを使うこともできます。出典: ZWO 公式「What is ASIStudio」

Q3. ASIAIR Plus の USB-C「PC」ポートはどれくらいの速度が出ますか?

ZWO 公式フォーラムでスタッフが「ASIAIR Plus の PC ポートは USB 2.0 プロトコルで動作する」と回答しています。USB-C 形状ですが速度的には USB 2.0 相当で、大容量のデータを早く取り出したい場合は有線 LAN + SMB か、USB ドライブ経由の転送(アプリ「ファイル」機能)を選んだほうが現実的です。出典: ZWO 公式フォーラム PMTeam(ZWO スタッフ)回答

Q4. ASIStudio は Mac でも使えますか?

はい。ASIStudio Manual に「macOS 10.12 以降に対応」と明記されています。Windows 7/8/10、Ubuntu 18.04 以降も同様にサポートされています。出典: ZWO ASIStudio Manual「System Requirements: Windows 7/8/10, macOS 10.12 or higher, Ubuntu 18.04 or higher」

Q5. ASIAIR Mini と Plus、PC 併用前提ならどちらが良いですか?

PC 併用前提なら「有線 LAN による SMB 転送」が選択肢になる Plus が圧倒的に有利です。Mini は有線 LAN ポートを持たないため、PC への転送は WiFi 経由か USB ドライブ経由に限定されます。一方、機材を最小化したい遠征派・ベランダ派なら Mini + アプリ単体運用で完結することも多いです。出典: ZWO ASIAIR User Manual V1.1(Plus と Mini の仕様差)

Q6. ASIDeepStack は ASIAIR 以外で撮った FITS でも使えますか?

はい。入力が 16-bit FITS 形式であれば、ASIAIR 以外で撮ったファイルでもスタックできます。ZWO 公式は「only supports 16-bit fits files for now」と明記しており、形式さえ合えば撮影機材は問いません。出典: ZWO 公式 ASIDeepStack チュートリアル

⑭ 参考にした一次情報

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最終更新: 2026-05-18/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式マニュアル・公式 FAQ・ZWO 公式ブログに基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。