ZWO F-HLDR フィルターホルダーとは?ドロワー式で 2 インチフィルターを光路に挿入する仕組み・使い方・選び方|入門ガイド
ZWO F-HLDR フィルターホルダーとは?ドロワー式で 2 インチフィルターを光路に挿入する仕組み・使い方・選び方|入門ガイド
「ZWO のフィルタードロワーを買ったけれど、追加で 2 枚目・3 枚目のフィルターに素早く差し替えたい」「M48 サイズの 2 インチフィルターをどう組み込めばいいのか分からない」──そんな疑問に応えるのが ZWO F-HLDR(フィルターホルダー)です。本記事では、ZWO 公式サイト・各正規販売店のスペックシート・関連マニュアルに基づいて、F-HLDR の仕組み・使い方・選び方・注意点を解説します。ナローバンド撮影を始めたい方、光害地でカラーカメラの写りを底上げしたい方、そして「そもそもフィルタードロワーとフィルターホイールはどう違うの?」という段階の方まで、順序立てて読み進められる構成にしています。
① ZWO F-HLDR とは何か(製品概要)
ZWO F-HLDR は、正式名称を「ZWO 2" Filter Holder (Gen 2)」といい、ZWO のフィルタードロワーシリーズに差し替えて使う交換トレイです。ドロワー本体(FD-M42 / FD-M54 / FD-EOS / FD-Nikon)を購入すると、必ず 1 枚のホルダーが同梱されますが、フィルターを 2 枚以上運用したい場合、この F-HLDR を必要な枚数分だけ追加購入するのが最も経済的な方法になります。SRC-4 / SRC-5
あくまで「ドロワー内部に入れる小さな金属トレイ」であり、単体では光学系に取り付けられません。ドロワー本体との組み合わせが前提である点をまず押さえてください。
F-HLDR の基本スペック
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 正式名称 | ZWO 2" Filter Holder (Gen 2) |
| 型番 | ZWO-F-HLDR |
| 材質 | アルミニウム(アノダイズ加工)SRC-4 |
| 対応フィルター | 2 インチ mounted フィルター(直径 50.8mm・厚さ 7.5mm)SRC-4 |
| フィルターねじ | M48×0.75(装着済みフィルターを固定)SRC-4 |
| 対応ドロワー | FD-M42 v2 / FD-M54 v2 / FD-EOS / FD-Nikon(Gen 1 非対応)SRC-4 / SRC-5 |
| 内部設計 | 反射・ストレーライトを最小化する内部つや消し処理SRC-4 |
② どんな仕組みか(ドロワー式フィルター挿入の考え方)
ZWO のフィルタードロワーは、望遠鏡とカメラの間に挟み込む「引き出し式のフィルター交換機構」です。ドロワー本体は光路の一部として常時取り付けたまま、F-HLDR にセットした 2 インチフィルターだけを差し替えることで、光軸を大きく崩さずに種類の異なるフィルターへ切り替えられます。SRC-1 / SRC-15
ドロワー本体側の主要な機能
- ダブル強力マグネット: F-HLDR を差し込むと、ドロワー内部の磁石で正しい位置に自動で吸着する。SRC-1 / SRC-15
- サイド側ロックネジ: 磁石だけでは僅かに残るガタツキを微調整できる。SRC-1 / SRC-15
- 遮光漏れ防止設計(anti-light-leaking design): 長時間露光でも横からの迷光が入りにくい。SRC-1
この「磁石 + ロックネジ + 遮光構造」を成立させるためには、ホルダー側の外形・切り欠き位置・厚みがドロワー Gen 2 仕様に一致している必要があります。Gen 1(旧型)ドロワーに Gen 2 の F-HLDR を差し込むことはできないのは、この設計差が原因です。SRC-4 / SRC-5
ホルダーの中でフィルターがどう固定されるか
F-HLDR の中央部には M48×0.75 のメスねじが切ってあり、そこへ「M48 マウント済み 2 インチフィルター(メーカー名として "2 インチ mounted"、"2" filter" と表記されるもの)」をねじ込みます。フィルター自体の外周に切られたオスねじで固定される構造なので、ゴムパッキンやリテーニングリングは不要です。SRC-4
③ どんなカメラ/光学系に組み込むか(接続規格・バックフォーカス)
ドロワー本体の光路長(=直列に消費する mm 数)は、モデルによって異なります。バックフォーカス設計時にはこの数値が最重要になります。
ZWO フィルタードロワー 4 モデルのスペック比較
| モデル | 光路長 | カメラ側ねじ | 望遠鏡側ねじ | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| FD-M42 v2 | 21mmSRC-1 | M42×0.75 オス | M48×0.75 メス | ASI533 / 294 / 2600 等の 2 インチ流用ラインSRC-1 |
| FD-M54 v2 | 20mmSRC-1 | M54×0.75 オス | M54×0.75 メス | ASI2600 Duo / ASI6200 / ASI2400 等のフルフレーム系SRC-2 |
| FD-EOS | 26.5mmSRC-3 | M42×0.75 相当(EOS レンズマウント側) | M48×0.75 メス | Canon EOS レンズを ASI 冷却カメラに接続する場合SRC-3 |
| FD-Nikon | 29mmSRC-3 | M42×0.75 相当(Nikon レンズマウント側) | M48×0.75 メス | Nikon F レンズを ASI 冷却カメラに接続する場合SRC-3 |
ASI 冷却カメラのバックフォーカスとの関係
ZWO の代表的な冷却カメラ ASI2600MC Pro / MM Pro は、フランジ(M42 メス)〜センサー間が 17.5mm です。目標のバックフォーカスは天体用途で 55mm が一般的で、そこから逆算して「21mm のフィルタードロワー」+「16.5mm のスペーサー」+「17.5mm のカメラ」= 55mm という構成が ZWO 公式ガイドで紹介されています。SRC-9 / SRC-10
フィルターホイール(EFW mini など)を挟む場合と比べて、フィルタードロワーは常時 1 枚のフィルターしか光路に入らないため、消費 mm 数を最小化しやすいのが特徴です。SRC-13
④ どんなフィルターと組み合わせるか
F-HLDR は「M48 ねじで固定される 2 インチ mounted フィルター」を選ぶのが基本です。装着済み(mounted)とは、ガラスが金属セルに封入され、外周に M48 ねじが切られている状態を指します。市販のナローバンド・光害カット・広帯域フィルターの多くがこの規格で流通しています。
代表的な 2 インチフィルター(メーカー別)
| メーカー | 代表シリーズ | 主な用途 |
|---|---|---|
| Optolong | L-eXtreme(H-alpha 7nm + OIII 7nm デュアルバンド)、L-eNhance、L-Pro などSRC-11 | 光害地カラー撮影・輝線星雲 |
| Baader | CMOS 最適化 6.5nm / 3.5nm / 4nm ナローバンド H-alpha / SII / OIII セットSRC-12 | SHO 合成(モノクロカメラ想定) |
| Astronomik | H-alpha / OIII / SII 12nm / 6nm / 4nm(MFR コーティング)SRC-12 | 幅広い f 値の光学系対応 |
| ZWO 純正 | 2" ナローバンド / デュオバンド / IR カット等SRC-4 | ZWO カメラとのペアリング |
1.25 インチフィルターを使いたい場合
すでに 1.25 インチのフィルターを持っている場合は、ZWO 純正の「2"-1.25" Filter Adapter Ring」を F-HLDR に取り付けることで流用できます。このリングは外側 M48×0.75 オス・内側 M28.5×0.6 メスの規格で、外径 51mm です。SRC-7 / SRC-8
ただし ZWO 公式は、1.25 インチアダプター利用時の推奨カメラを ASI533 / ASI183 / ASI294 / ASI1600 と明記しており、より大きなセンサーを持つカメラではケラレが発生する可能性がある旨を注記しています。フルフレーム機・APS-C 機で使う場合は 2 インチフィルターを選ぶのが無難です。SRC-7
⑤ 他のフィルター搭載方式との違い
フィルタードロワー / フィルターホイール / T2 ねじ込みの比較
| 方式 | 光路の消費 | 交換速度 | 向いている運用 |
|---|---|---|---|
| フィルタードロワー (F-HLDR + FD-M42 等) |
20〜29mm(モデル依存)SRC-1 / SRC-3 | 手動で 1 枚を差し替え | カラー(OSC)カメラで 1 晩に 1〜2 種類だけ使う運用SRC-14 |
| フィルターホイール (EFW mini / EFW 5×2" 等) |
EFW mini で 20mm 前後SRC-13 | USB 経由でソフト自動切替SRC-13 | モノクロカメラで LRGB / SHO を高頻度に切り替える運用SRC-14 |
| T2 / M48 ねじ込み直付け | フィルターセル厚みのみ | 毎回全体を分解 | 1 枚固定運用(例:常時 IR カットのみ) |
「毎回フィルターをねじ込み直す」T2 ねじ込みは光路を最も節約できますが、フィルター位置が僅かにでも回転するとフラット補正がずれるリスクがあります。一方フィルタードロワーは、いったんドロワー本体を設定してしまえばフラットフレームの再撮影が最小限で済むのが実務的なメリットです。SRC-1
⑥ 使用時の注意点
1. バックフォーカスの再計算
フィルタードロワーを既存の光路に「追加」すると、その分(M42 v2 なら 21mm)だけ他のスペーサーを短くする必要があります。ZWO 冷却カメラの付属スペーサー(16.5mm / 21mm 等)の入れ替えで調整するのが定石です。SRC-9
2. ケラレのリスク
2 インチフィルターは、フルフレームセンサーの対角線に対して余裕が大きくありませんが、APS-C までであれば実用範囲です。1.25 インチアダプターを介した運用は、ASI533 / 183 / 294 / 1600 クラスのセンサーが推奨で、それ以上の大センサーではケラレる可能性があると ZWO が明記しています。SRC-7
3. 光軸のズレ
ホルダーは磁石で吸着した後、サイドのロックネジで軽く押さえる構造です。ロックネジを緩めたまま運用するとホルダーが 0.数ミリ動く余地が残るので、フォーカス位置がわずかにずれる原因になります。撮影セッション前に必ずロックネジを軽く締めてください。SRC-1 / SRC-15
4. 埃の混入
ホルダーを抜き差しする度に、内部へ埃が入る可能性があります。屋外の風があるサイトで交換する際は、ドロワーの差し込み口を下向きにする・エアブロワーで内部を吹くなど、基本的なメンテナンスを習慣化してください。
5. Gen 1 と Gen 2 の非互換
すでに ZWO の旧型(Gen 1)フィルタードロワーを持っている場合、Gen 2 の F-HLDR は物理的に入りません。同様に、Gen 2 ドロワーに旧型ホルダーも入らないため、追加ホルダーを買う前にお使いのドロワーがどちらの世代かを確認してください。SRC-1 / SRC-4 / SRC-5
⑦ こんな人にオススメ
- カラーカメラ(OSC)で光害地から星雲を撮りたい方:デュアルバンドフィルター(Optolong L-eXtreme 等)を F-HLDR にセットし、明るい夜は素通り、暗い夜は光害カットと使い分けが 1 分で済む。SRC-11
- すでに ZWO フィルタードロワーを 1 台持っていて、追加フィルターを運用したい方:ドロワー本体を買い足すよりホルダーだけ買い足す方が場所も費用も抑えられる。SRC-4
- フィルターホイールを買う前段階の入門者:将来モノクロ運用に移行するかも分からない段階では、まずドロワー + F-HLDR 数枚で「フィルター交換運用の感覚」を掴んでから EFW に移行する順序が回り道が少ない。SRC-14
- Canon EOS / Nikon F レンズ + ASI 冷却カメラの構成で撮影する方:FD-EOS / FD-Nikon ドロワーと共通の F-HLDR が使える。SRC-3 / SRC-4
⑧ よくある質問(FAQ)
Q1. F-HLDR を単体で望遠鏡に付けられますか?
いいえ。F-HLDR は「ドロワー本体(FD-M42 v2 / FD-M54 v2 / FD-EOS / FD-Nikon)」に差し込んで使う交換トレイです。ドロワー本体がない状態では光学系に取り付ける手段はありません。SRC-4 / SRC-5
Q2. 何枚まで買い足せますか?
枚数の上限はありません。運用しているフィルターの枚数に応じて必要枚数を買い足してください。撮影時にドロワーへ挿し込むのは常に 1 枚だけです。SRC-4
Q3. 旧型(Gen 1)の ZWO フィルタードロワーでも使えますか?
使えません。物理的な形状が異なるため、Gen 1 ドロワーには Gen 1 ホルダー、Gen 2 ドロワーには Gen 2 ホルダー(本製品)を選ぶ必要があります。SRC-4 / SRC-5
Q4. 手持ちのフィルターは 1.25 インチ規格です。使えますか?
ZWO 純正の「2"-1.25" Filter Adapter Ring」を F-HLDR にねじ込むことで使えます。ただしフルフレーム機ではケラレる可能性があるため、ZWO は ASI533 / ASI183 / ASI294 / ASI1600 との組み合わせを推奨しています。SRC-7
Q5. フィルターホイール(EFW)と併用は可能ですか?
公式には「ドロワーは色カメラ・ホイールはモノクロカメラ」という棲み分けが基本ですが、光路長にゆとりがあれば技術的には併用できます。ただし合計消費 mm 数がバックフォーカスを超えないかは事前に必ず計算してください。SRC-9 / SRC-14
Q6. F-HLDR 単体の重さはどのくらいですか?
ZWO 公式ページに個別記載がないため断言できません。同一素材(アルミ・アノダイズ)のホルダーは小型部品としては十数グラム〜数十グラムの範囲に収まることが一般的ですが、正確な数値は販売店詳細ページか実測でご確認ください。SRC-4
⑨ 関連商品
- 本記事で扱った商品:ZWO F-HLDR フィルターホルダー
- ZWO 純正 2 インチナローバンド・IR カット等の各種フィルター
- ZWO 2"-1.25" Filter Adapter Ring(1.25 インチフィルター流用時)SRC-7
- ZWO M54 Adapter for Filter Drawer(フルフレームカメラ接続時)SRC-6
⑩ フィルターホルダー選びのご相談|商品ページ・公式 LINE のご案内
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最終更新: 2026-08-24/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式製品ページ・公式 FAQ・各フィルターメーカー公式ページに基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。
⑪ 参考にした一次情報
- SRC-1: ZWO 公式「New 2" Filter Drawer」製品ページ
- SRC-2: ZWO USA「New 2" Filter Drawer」製品ページ
- SRC-3: ZWO 公式「New Filter Drawer for Nikon/Canon Lens」製品ページ
- SRC-4: High Point Scientific「ZWO 2-inch Gen 2 Filter Holder」
- SRC-5: First Light Optics「ZWO Spare/Extra 2" Filter Holder」
- SRC-6: ZWO 公式「M54 adapter for filter drawer」
- SRC-7: ZWO 公式「2"-1.25" Filter Adapter Ring」
- SRC-8: 365astronomy「ZWO 2"-1.25" Filter Adapter」寸法
- SRC-9: ZWO 公式ブログ「ASI2600 55mm Back Focus」
- SRC-10: ZWO ASI2600MC Pro マニュアル抜粋
- SRC-11: Optolong L-eXtreme 2 インチ 製品情報
- SRC-12: Baader 6.5nm ナローバンド 2 インチセット
- SRC-13: ZWO EFW mini 製品ページ
- SRC-14: Cloudy Nights「Filter Wheel or Drawer For OSC Camera」(一般論のみ引用)
- SRC-15: Agena Astro「ZWO Filter Drawer M42 & M48 (Gen 2)」
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