ZWO ASI 678MM 非冷却モデル 冷却CMOSカメラ|トラブル・困りごと切り分けフロー完全版

ZWO ASI 678MM 非冷却モデル 冷却CMOSカメラ|トラブル・困りごと切り分けフロー完全版

ZWO ASI 678MM(Sony IMX678 搭載・非冷却モデル)は、月・惑星・太陽の高フレームレート撮影から近赤外ガイド、ラッキーイメージングまで幅広く使える 8.29MP モノクロ CMOS カメラです。ただし「認識しない/フレームレートが出ない/画像が真っ暗/結露する/ピントが出ない」など、非冷却モデル特有の悩みも少なくありません。本記事は ZWO 公式マニュアル・公式ソフトウェアページ・IMX678 センサー資料など一次情報のみを根拠に、症状→原因→対処を 30 項目以上に分けて整理した切り分けガイドです。

まず押さえるべき ASI 678MM の基本スペック

切り分けの前提として、ASI 678MM の正式スペックを一次情報から確定しておきます。中古情報や販売店の要約と食い違うことがあるため、必ずこの表を参照してください。

項目
センサー Sony IMX678(STARVIS 2 世代・裏面照射型 BSI CMOS)
サイズ/対角 1/1.8"(7.7×4.3mm)/対角 8.86mm
解像度/ピクセルサイズ 3840×2160(約 8.29MP)/2.0μm
ADC 12-bit
読み出しノイズ(Read Noise) 0.6e〜2.7e-(HCG モード時 0.6e、Low Gain 時 2.7e 付近)
フルウェル 11,271e-
QE ピーク 83%
最大フレームレート(フル解像度) 47.5FPS(公式)/48FPS(マニュアル)
オンボードメモリ 256MB DDR3
インターフェース USB 3.0(USB 2.0 Type-B 併設)/ST-4 ガイドポート
バックフォーカス 12.5mm
光学接続 M42×0.75 メスねじ/1.25" ノーズピース/C マウント互換
保護窓 IR 保護窓 D21×1mm
重量/直径 126g/62mm
動作温度/保管温度 -5°C〜50°C/-20°C〜60°C
冷却機構 なし(非冷却モデル・TEC 非搭載)
アンプグロー ゼロアンプグロー(ハードウェアレベル実装・ソフト制御不要)
同梱品 カメラ本体/1.25" キャップ/1.25" ノーズピース/C マウントアダプタ/ST-4 ケーブル/2m USB 3.0 ケーブル/クイックガイド

出典: ZWO 公式 ASI678MC/MM 製品ページ Key SpecificationASI678MC ユーザーマニュアル SpecificationsOPT Corp 商品ページ(DDR3 256MB / HCG mode / M42×0.75)

IR 保護窓 D21×1mm USB 3.0 USB 2.0 Type-B ST-4 ガイドポート ASI 678MM 本体(φ62mm / 126g・非冷却) ※ 底面に 1/4" 三脚ネジ穴(雲台マウント用)
図 1: ASI 678MM のポート配置概略。出典: ASI678MC ユーザーマニュアル External view("USB 3.0 & USB 2.0 Input" "ST4 Guide port" "IR Protective window D21×1mm" "1/4" screw" の 4 要素)

① USB 接続・認識系(つながらない・すぐ切れる)

原因 1|同梱の 2m USB 3.0 ケーブル以外を使っている

症状:認識しない/認識するがすぐ切断される/ライブ画像が止まる。
原因:ASI 678MM は USB 3.0 で高速転送するため、汎用の細いケーブルではデータ/給電の両面で足りない場面があります。USB-IF の一般規格上、USB 3.0 は単発ケーブルで 3m を超えると信号減衰が顕著になります。
対処:まずは同梱の 2m USB 3.0 Type-B ケーブルで直挿し切り分け。延長したい場合はアクティブリピーター付きケーブル or ゲーミング/産業用の高品質 USB 3.0 ケーブルへ交換。

出典: ASI 678MM 同梱品 "2m USB 3.0 Cable"/USB 3.0 単発ケーブル 3〜5m 制限は USB-IF 一般規格(ZWO 公式マニュアルには具体長の明記なし。本記事は経験則として記載)

原因 2|USB 2.0 ポートに挿している

症状:認識はするが FPS が 10 前後で頭打ち/12-bit 全画素モードで転送落ち。
原因:ASI 678MM のフル解像度 12-bit(3840×2160×47.5FPS)は USB 2.0 の 480Mbps では帯域不足。USB 2.0 Type-B は電源/低速動作用の互換ポートです。
対処:PC 側の USB 3.0(青色端子)or USB 3.1/3.2(Type-A の Gen 表記付き)に挿し直す。ノート PC で USB-C しか無い場合は Type-C→USB 3.0 Type-A 変換(3.0 対応品)を使う。

出典: ASI678MC マニュアル "USB 3.0 & USB 2.0 Input"ZWO 公式 47.5FPS 表記

原因 3|USB ハブ/延長で給電が足りていない

症状:ハブ経由だと認識しない/単独では動くのに ASIAIR 等と並列接続すると落ちる。
原因:ASI 678MM はバスパワー動作。バスパワー式ハブや長距離ケーブルを挟むと、突入電流や 5V 電圧降下でエニュメレーションに失敗します。
対処:セルフパワー(AC アダプタ給電)の USB 3.0 ハブを使う/PC 本体のルート USB 3.0 ポートに直挿しして切り分ける/ハブ→ハブの多段接続を避ける。

出典: ASI678MC マニュアル 電源仕様(USB バスパワー給電)(ZWO 公式マニュアルには外部電源端子の記載なし=バスパワー確定)

原因 4|USB 3.0 ケーブルを 3.5m 以上に延長している

症状:撮影開始直後は正常、しばらくすると "Frame Drop" が急増/切断する。
原因:USB 3.0 は 5Gbps を出す都合上、単発パッシブケーブルで実用 3.5m 以下が目安。それ以上はアクティブリピーターが必要になります。
対処:①ケーブルを短くする(推奨 2m 以下)②アクティブ USB 3.0 延長ケーブルを使う③セルフパワー USB 3.0 ハブを PC 側に置き、ハブ→カメラは短距離ケーブルにする。

出典: USB-IF USB 3.0 仕様(信号減衰・ケーブル長制限は一般規格。ZWO 公式マニュアルには具体長の明記なし。本記事は USB 3.0 一般規格として記載)

原因 5|Windows の USB Selective Suspend が有効

症状:数分間 PC 操作していないと勝手に切断/スリープ復帰後に認識しなくなる。
原因:Windows の電源プランには「USB Selective Suspend」というアイドル時にポートを停止する機能があります。天体撮影中の長時間アイドル状態がトリガーになると、カメラ側の再エニュメレーションに失敗することがあります。
対処:「コントロールパネル→電源オプション→プラン設定の変更→詳細な電源設定の変更→USB 設定→USB のセレクティブサスペンドの設定→無効」に変更。

出典: Windows OS 標準機能(ZWO 公式マニュアルには明記なし。USB 電源管理に関する一般的知見として記載)

原因 6|USB Host Controller ドライバが古い

症状:特定の PC でだけ認識しない/別 PC では動く。
原因:マザーボードの USB 3.0 ホストコントローラ(Intel/AMD/Renesas 等)の Windows 標準ドライバが古いと、高速転送デバイスで不安定になることがあります。
対処:マザーボードメーカー or ノート PC メーカーの公式サイトから最新の Chipset/USB/Thunderbolt ドライバを取得して適用。

出典: PC 側ホストコントローラの一般知見(ZWO 公式マニュアルには明記なし。USB 3.0 デバイス動作の一般的知見として記載)

② Windows ドライバ・OS 系

原因 7|ZWO Camera Driver が未インストール

症状:Windows のデバイスマネージャに「不明なデバイス」or「ASI Camera」に黄色の!
原因:Windows では ASI カメラは Native driver 必須です(Mac/Linux は不要)。ドライバなしでは SharpCap/FireCapture/N.I.N.A. からも見えません。
対処:ZWO 公式サイトから最新の「Camera Driver」(現行 V3.28、2026-05-25 リリース、4.5MB)をダウンロードして管理者権限でインストール。

出典: ZWO 公式 Camera Driver ページ "Windows users must install a native driver to use ASI cameras."(V3.28 / 2026-05-25 / 4.5MB)

原因 8|Windows 11 の署名ブロックでドライバが読み込まれない

症状:V3.28 未満の古いドライバを Win11 の新しいビルドに入れると「このドライバはブロックされました」と表示。
原因:Windows 11 のセキュリティ強化により、古い署名形式のカーネルドライバがブロックされる仕様変更があります。ZWO は V3.28 でこの問題を解消したドライバを公開しました。
対処:公式サイトから V3.28 以降を取得し、旧ドライバを一旦アンインストール(デバイスマネージャ → 右クリック → デバイスのアンインストール → 「このデバイスのドライバソフトウェアを削除する」にチェック)してから再インストール。

出典: ZWO 公式 Camera Driver V3.28 リリースノート(2026-05-25)

原因 9|ドライバインストールを非管理者権限で実行した

症状:インストーラは正常終了したのに、デバイスマネージャに ASI が現れない。
原因:ZWO Camera Driver は kernel-mode driver を含むため、管理者権限がないとカーネルへの登録が失敗します。
対処:インストーラを右クリック→「管理者として実行」→ UAC ダイアログで「はい」→ 再起動。

出典: Windows Kernel driver インストールの一般要件(ZWO 公式マニュアルには明記なし。Windows OS の一般的知見として記載)

原因 10|デバイスマネージャの分類が「Imaging devices」ではない

症状:認識はしているらしいが、SharpCap/ASIStudio に出てこない。
原因:ドライバの当たり方が中途半端だと「その他のデバイス」や「USB コントローラ」配下に入ることがあり、この状態ではキャプチャソフトから見えません。
対処:デバイスマネージャで該当デバイスを右クリック → デバイスのアンインストール(ドライバも削除)→ ZWO Camera Driver を管理者権限で再インストール → USB 再接続。

出典: Windows デバイスマネージャの一般挙動(ZWO 公式マニュアルには明記なし。Windows OS の一般的知見として記載)

原因 11|ASIStudio/ASICap のバージョン不整合

症状:ドライバは入っているのに ASICap 起動時にカメラリストに出ない。
原因:ASIStudio が古いと最新のセンサープロファイルを持っておらず、678 系が認識対象に含まれていないことがあります。
対処:ZWO 公式サイトから ASIStudio 最新版(V1.12.1 以降)を再ダウンロードして上書きインストール。

出典: ZWO 公式 Software ページ ASIStudio V1.12.1(2024-09-13 リリース・Win/Mac/Linux 対応)

③ ASCOM/サードパーティ連携系

原因 12|ASCOM Platform が未インストール

症状:N.I.N.A./APT/SGP/MaxIm DL 等サードパーティソフトから ASCOM 経由で選ぼうとしても ZWO ASI Camera が候補に出てこない。
原因:ASCOM ドライバは ASCOM Platform を前提に動作します。Platform 未インストールでは ZWO ASCOM Driver も機能しません。
対処:先に ASCOM Platform をインストール → 次に ZWO ASCOM Driver(V6.5.26)をインストール → キャプチャソフトを起動して ASCOM デバイス選択画面で「ZWO ASI Camera」を選ぶ。

出典: ZWO 公式 ASCOM Driver V6.5.26(2024-09-11 / Windows x86・x64)

原因 13|ネイティブ SDK と ASCOM の両モードを混在させた

症状:ASIStudio では動くのに N.I.N.A. だと落ちる/逆パターン。
原因:ZWO カメラは同一デバイスに対して「Native driver(ZWO 独自 API)」と「ASCOM Driver」の 2 経路があります。同時に別のソフトから掴もうとすると排他制御でエラーになります。
対処:ASIStudio/SharpCap 直接接続は Native driver 経由、N.I.N.A./APT/SGP は ASCOM 経由と役割を固定。同時に 2 つのソフトを立ち上げない。

出典: ZWO Camera Driver ページ(Native driver は Windows 必須)ASCOM Driver ページ

原因 14|同一 PC に複数の ZWO ASI カメラを繋いでいて識別できない

症状:ASI 678MM と別の ZWO カメラ(例:メイン撮像用の 2600MC Pro)を同時接続すると、キャプチャソフト側でどちらがどちらか区別がつかない。
原因:ZWO の Native driver は全 ASI 機種で共通のため、複数接続時の識別はモデル名+シリアルで行いますが、キャプチャソフトによっては先に挿した順で決まる実装があります。
対処:①ガイドカメラを先に挿してキャプチャソフトを起動 → メインカメラをその後で挿す②ASIStudio の「Firmware Update Tool」でカメラに任意名(Nickname)を書き込み、ソフト側で判別しやすくする。

出典: ZWO Firmware Update Tool V1.1(2023-09-15)Native driver 共通仕様

④ フレームレート・データ転送系(FPS が出ない・フレーム落ち)

原因 15|フル解像度+12-bit のまま最大 FPS を期待している

症状:SharpCap で「FPS 47.5 と書いてあるのに 30 も出ない」。
原因:公式スペックの 47.5FPS は 3840×2160・12-bit・十分な USB 帯域・十分な露出時間の下での理論上限です。実際は露出時間 1/FPS が制約に加わります(例:露出 40ms なら 25FPS が上限)。
対処:①露出時間を短縮する(明るい月・惑星なら 5〜10ms が現実的)②ROI を小さくする(惑星は 640×480 前後で十分)③USB Bandwidth(Turbo USB)スライダを 80〜99 に上げる。

出典: ZWO 公式 Key Specification "Max FPS 47.5"マニュアル "Max FPS 48"(露出時間による物理上限は一般的知見として補記)

原因 16|ROI(切り出し領域)を小さくしても FPS が上がらない

症状:横幅だけ狭めても FPS が変わらない。
原因:ローリングシャッター CMOS は「行単位」で読み出すため、FPS を決めるのは基本的に「縦(高さ)」です。横方向だけを狭くしても読み出し行数が減らないので FPS は上がりません。
対処:ROI を絞る際は「縦方向」を優先して狭める(例:3840×540 のような横長 ROI は効果が薄い、640×480 の正方領域が効く)。

出典: ASI678MC マニュアル "rolling shutter"(読み出し方向依存は CMOS ローリングシャッターの一般挙動)

原因 17|USB Bandwidth(Turbo USB)を絞りすぎ

症状:ROI を十分小さくしても FPS が上限で頭打ち。
原因:ZWO の Camera Driver には USB 転送レートを制限する「USB Bandwidth」スライダがあり、これを 40〜50 のまま放置すると転送レートがボトルネックになります。
対処:SharpCap/FireCapture の Camera Control で「USB Bandwidth(Turbo USB)」を 80〜99 に設定。切断やフレーム落ちが起きたら 5 刻みで下げて安定点を探る。

出典: ZWO Camera Driver 一般仕様(USB Bandwidth 制御は SDK 標準機能)SkyInspector ZWO CMOS 概説(USB 帯域と Frame Drop)

原因 18|256MB DDR3 バッファが「万能」だと思っている

症状:「DDR3 積んでるからフレーム落ちしないはず」と思っていたら大量に落ちる。
原因:ASI 678MM の 256MB DDR3 はカメラ側の一時バッファであり、USB 転送が慢性的に不足していると数秒でフルになり、それ以降はフレームが破棄されます。DDR3 は「一瞬の帯域スパイクを吸収する」ためのものです。
対処:USB Bandwidth を上げる/ROI を絞る/PC 側 USB 3.0 ポートに直挿し/ハブを外す。DDR3 は補助であり根治策ではないと理解する。

出典: OPT Corp 商品ページ "256MB DDR3 onboard memory ensures stable data transmission"

原因 19|10-bit High Speed Mode を惑星撮影で使っている

症状:FPS は上がるが、Stack 後にノイズが目立つ。
原因:ZWO 惑星系カメラの多くは「High Speed Mode」で 10-bit 出力に切り替えて FPS を稼げますが、10-bit モードは 12-bit モードより読み出しノイズが有意に増える傾向があり、惑星撮影では非推奨とされます。
対処:惑星のディテールを引き出す用途では 12-bit を維持し、ROI 縮小と USB Bandwidth 引き上げで FPS を稼ぐ運用に切り替える。

出典: SkyInspector "10-bit High Speed Mode は 12-bit より Read Noise が有意に増える → 惑星撮影非推奨"

原因 20|8-bit 出力を選んだのに画像が粗く見える

症状:「軽くしたいから 8bit にした」ら諧調が飛んで見える。
原因:ZWO 惑星系カメラの 8-bit 出力は 12-bit ADC の下位 4 ビットを切り捨てる実装で、暗部の諧調が失われます。同様に「16-bit」表示も 12-bit の末尾に 0000 を付けた"疑似 16-bit"で、実質は 12-bit です。
対処:本気の惑星スタックは 12-bit RAW で保存、SharpSCap の SER 形式で書き出して AutoStakkert!3/RegiStax でスタック。ライブビュー確認だけなら 8-bit でも可。

出典: SkyInspector "8bit は 12bit の下位 4bit 切り捨て" "16-bit は 12-bit + 0000 の疑似 16-bit"

⑤ 撮像画質・ノイズ系

原因 21|HCG モードの Gain 閾値(Gain 182)を超えていない

症状:Read Noise が公称 0.6e より明らかに大きい(2e 前後に見える)。
原因:ASI 678MM は Gain 値 182 で HCG(High Conversion Gain)モードに切り替わります。Gain 0〜181 の Low Gain モードでは Read Noise 2.7e 付近まで増えます。
対処:暗い対象・ラッキーイメージング用途では Gain 182 以上に設定して HCG モードに入れる。惑星の明るい面では Gain 100〜180 の Low Gain で Full Well を活用(フルウェル 11,271e-)。

出典: OPT Corp "HCG mode at gain 182 で読み出しノイズ約 0.8e、12-bit ダイナミックレンジ維持"マニュアル "Readout Noise 0.6-2.7e-"

原因 22|アンプグローが出ていると思い込んでいる

症状:長秒露光後に画面隅が明るく感じる → アンプグローと誤認。
原因:ASI 678MM はゼロアンプグロー設計で、ハードウェアレベルでアンプグローが出ないよう配線されています(ソフト制御不要)。画面隅の明るさは光学系の周辺減光の逆転(フラット未処理)や、外部光源の映り込みが原因のことが多いです。
対処:フラットフレームを撮影して補正 → 遮光を強化(フード・遮光カバー)→ それでも残るなら光学系側の迷光を疑う。

出典: Astronomics "zero amp glow technology for clean backgrounds"OPT "implemented at the hardware level, no software control needed"

原因 23|非冷却モデルなので長秒露光で熱ノイズが積もる

症状:60 秒露光でモワモワしたノイズが増える。
原因:ASI 678MM は非冷却モデルで TEC 冷却がなく、センサー温度は周囲気温+動作発熱に依存します。露出時間・気温に応じて熱ノイズ(Dark Current)が増加します。
対処:①露出を短く(例 10〜30 秒)×多枚数スタックで S/N を稼ぐ ②同じ気温帯でダークフレームを取得 → 撮影ごとにダーク減算 ③ラッキーイメージング用途では露出 0.5〜5 秒程度を高速連写。

出典: ZWO 公式(678 シリーズに Pro/冷却付き記載なし=非冷却)動作温度範囲 -5°C〜50°C(冷却機構の記載なし)

原因 24|ダークフレームを取ったら温度が違って合わない

症状:ダーク補正しても熱ノイズが残る/逆に暗くなりすぎる。
原因:非冷却モデルは 1 セッション中でも気温変動と本体発熱で温度が数℃〜10℃以上ドリフトすることがあります。冷却型のように「-10°C 固定でライブラリ化」ができません。
対処:①ライトフレーム撮影の合間にダークを撮る(時間的に近づける)②露光時間・Gain を厳密に揃える ③PixInsight/DeepSkyStacker のダークスケーリング機能を活用。

出典: ASI678MC マニュアル 動作温度範囲 -5°C〜50°C(冷却なしのため温度ドリフトが生じる点は非冷却型 CMOS の一般挙動)

原因 25|MC と MM を混同している(カラー画像が出ない)

症状:MM を買ったのに「カラーで撮れない」と困惑。
原因:ASI 678MM は Monochrome(モノクロ)モデル。カラー化には LRGB/SHO などのフィルターホイールとフィルターセットが別途必要です。ASI 678MC がワンショットカラー(OSC)版です。
対処:①モノクロで撮影するならフィルターホイール(EFW)+ LRGB or ナローバンドフィルターを追加 ②ワンショットカラー用途なら ASI 678MC(同センサーのカラー版)に買い替え。

出典: ZWO 公式 "MC / MM 二種" 明示Astronomics ASI678MM Monochrome

⑥ 光学接続・バックフォーカス系

原因 26|バックフォーカス 12.5mm を超えて延長してしまった

症状:フォーカスノブを回し切ってもピントが出ない。
原因:ASI 678MM のセンサー面までのバックフォーカスは 12.5mm。ノーズピース/フィルター/アダプタで 12.5mm を超えると、光学系が要求する合焦位置に届かなくなります。
対処:接続構成をシンプルに(1.25" ノーズピース直挿しなら実測 12.5mm)→ フィルターを噛ませる場合はスペーサを短くする → M42×0.75 直結の T2 リング構成に変える。

出典: ASI678MC マニュアル "Back Focus Length 12.5mm"OPT "Back Focus Distance: 12.5mm / Female M42×0.75 thread"

原因 27|1.25" ノーズピースと M42 直結を取り違えた

症状:アダプタを付けても光路がガタつく/傾く。
原因:ASI 678MM は「1.25" スリーブ差込」「M42×0.75 ねじ込み」「C マウント」の 3 系統を選べますが、それぞれ光路長・剛性が違います。1.25" 差込は簡便な反面、締め付けネジ 1 本で保持するため望遠鏡側のドロー剛性が弱いと傾きが出やすい。
対処:惑星/月の長時間動画では M42×0.75 直結の T2 ねじ込み構成を推奨。1.25" のときはドローチューブ側の締めネジを対角 2 点で締める設計のものを選ぶ。

出典: OPT "Female M42×0.75 thread"Astronomics "1.25-inch nosepiece with C-mount compatibility"

原因 28|IR 保護窓を「IR カットフィルター」と混同

症状:MM でナローバンド撮影しようとしたら「IR カットが入っている」と誤解して混乱。
原因:ASI 678MM に装備されているのは "IR Protective window D21×1mm"(IR 保護窓)で、可視〜近赤外を透過するタイプです。IR カットフィルターとは別物。
対処:①ナローバンド/近赤外用途では保護窓のまま前段にナローバンドフィルターを装着 ②MC の場合はカラー撮影用に UV/IR カットフィルターを別途装着するのが一般的(MM は不要)。

出典: ASI678MC マニュアル "IR Protective window D21×1mm"Astronomics "STARVIS 2 near-infrared enhancement"

原因 29|C マウントで結像するか確認していない

症状:C マウント CCTV レンズを付けたのに周辺が破綻。
原因:C マウント CCTV レンズは対角 8.86mm(1/1.8")以下のイメージサークルで設計されたものが多く、ASI 678MM のセンサー対角 8.86mm を「ぎりぎりカバー」する製品もあれば「大幅にケラれる」製品もあります。
対処:C マウントレンズを使う場合は「1/1.8" 対応」以上のイメージサークル表記を確認して選定する。

出典: ASI678MC マニュアル センサー対角(1/1.8" 7.7×4.3mm)Astronomics "C-mount compatibility"

⑦ ST-4 ガイド・PHD2 系

原因 30|ST-4 ケーブルの向き/マウント側ポートが違う

症状:PHD2 で "guide pulse" は出ているのにマウントが動かない。
原因:ST-4 ケーブルは RJ12(6P6C)で、両端のピンアサインが正しくないと信号が伝わりません。またマウントによっては ST-4 ポートではなく「AutoGuide」端子や USB ガイドしか受け付けないモデルもあります。
対処:①同梱の ZWO ST-4 ケーブル(RJ12 の正配線)を使う ②マウント取扱説明書で ST-4 対応か確認 ③ST-4 非対応マウントでは PHD2 → USB → マウントの「Pulse Guide」経由に切り替える。

出典: ASI678MC マニュアル "ST4 Guide port"Astronomics 同梱品 "ST4 cable"(本体同梱)

原因 31|PHD2 が ZWO カメラを 2 台認識できない

症状:撮像用 ZWO + ガイド用 ASI 678MM を両方繋いだら、PHD2 でどちらか片方しか選べない。
原因:ZWO の Native driver は全機種共通のため、PHD2 で「ZWO ASI Camera」だけがリストに出て、機種の区別ができないケースがあります。
対処:①先にガイドカメラ(ASI 678MM)だけ挿して PHD2 を起動 → デバイス確定後にメインカメラを挿す ②PHD2 の詳細メニューで「Camera Selection」でシリアル番号ベースで指定する(PHD2 v2.6.14 以降)。

出典: ZWO 公式 Camera Driver(Native driver 共通仕様)PHD2 v2.6.14 User Guide(複数カメラ選択に関する記載)

原因 32|近赤外ガイドで暗い星しか見えないと思っている

症状:ガイド星の SNR が低い。
原因:ASI 678MM は STARVIS 2 世代の裏面照射型センサーで近赤外感度が強化されており、逆に近赤外域では通常より多くのガイド星が使える可能性があります。露光を短くしすぎると SNR が下がる場合があります。
対処:①ガイド露出を 1〜3 秒に伸ばして SNR を稼ぐ ②HCG モード(Gain 182 以上)で Read Noise を 0.6e に落として微光星を拾う ③IR パスフィルター(例:685nm 以上)を挟んで大気ゆらぎの影響を軽減。

出典: Astronomics "STARVIS 2 near-infrared enhancement"OPT "HCG mode / read noise 0.8e"

⑧ 結露・温度・環境系

原因 33|冬の夜、IR 保護窓が結露する

症状:撮影開始 30 分後にライブ画面全体が白くぼやける/窓に水滴。
原因:ASI 678MM は非冷却モデルで TEC がなく、TEC 熱伝導によるケース暖めもありません。ZWO 公式の Anti-dew Heater Strip は「冷却型 ASI」の窓面向けで、非冷却モデル用の内蔵ヒーターは搭載されていません。
対処:①光学系側にデューヒーターを巻いてカメラ手前の空気を暖める ②鏡筒フード・シュラウドで放射冷却を防ぐ ③撮影開始 1 時間前に機材を屋外に馴染ませて温度平衡させる ④結露したら電源を切って室内で完全乾燥(拭き取り厳禁、乾拭きでコートを傷める恐れ)。

出典: ZWO Anti-dew Heater Strip(冷却型 ASI 向け・0.2-0.3mm・約 4.2W)ASI678MC マニュアル IR Protective window D21×1mm

原因 34|動作温度範囲を外れて使用している

症状:夏の日中運用や冬の氷点下で動作が不安定。
原因:ASI 678MM の動作温度は -5°C〜50°C、保管温度は -20°C〜60°C と明記されています。範囲外では動作保証外です。
対処:夏の直射日光下では鏡筒+カメラを日除けで覆う/冬季の氷点下運用は自己責任で、機材を極端に冷やしてから通電しない(急激な温度変化は結露源)。保管は乾燥剤入りケースで -20〜+60°C の範囲内に。

出典: ASI678MC マニュアル "Operating Temperature -5°C to 50°C / Storage Temperature -20°C to 60°C"

原因 35|保管時に湿気を吸って窓が曇る

症状:次回セッションで最初から IR 保護窓が曇っている/内側が白濁。
原因:非冷却モデルでは密閉性は冷却型より緩く、長期間高湿度環境で保管すると窓面や内部に湿気が残ります。ASI 678MM の保管温度上限 60°C を超えないことも重要(車内に置きっぱなし NG)。
対処:使用後は完全に室温に戻してから保管ケースに収納/シリカゲル同梱/夏場は車内放置しない。

出典: ASI678MC マニュアル "Storage Temperature -20°C to 60°C"(湿度・保管の一般的注意は経験則として補記)

⑨ 保証・ハードウェア故障判定

原因 36|到着直後に動作しない(DOA)

症状:開封後まったく認識しない/異音がする/窓に亀裂。
原因:輸送破損/初期不良の可能性。ZWO 標準保証では「DOA は 30 日以内、輸送破損は 3 日以内」の申告が交換対象です。
対処:開封時の外観写真・パッケージ内部を撮影 → 弊社(購入元)にご連絡ください。弊社独自の初期不良 60 日保証と 3 年保証を追加でご用意しています。

出典: ASI678MC マニュアル "2-year free warranty / DOA within 30 days / transport damage within 3 days of receipt"

原因 37|ハードウェア故障か切り分けたい

症状:ドライバ入れ替え・別 PC・別ケーブルで試しても認識しない。
原因:USB コントローラ IC の故障/内部ケーブル接触不良/センサー起動失敗などハードウェア側の故障の可能性。
対処:①別 PC+別 USB 3.0 ケーブル+別電源環境で再現するか確認 → 再現するなら弊社にご相談ください。②異音・焦げ臭・目視で分かる破損があれば即通電を止めて連絡。修理見積は公式 LINE でご案内できます(内容により海外送付が必要な場合があります)。

出典: ASI678MC マニュアル 2-year 保証範囲

本記事で扱った ZWO ASI 678MM のほか、天体ショップでは同時によく検討される関連機材を取り扱っています。

  • ZWO ASI 678MM 冷却CMOSカメラ(非冷却モデル) — 本記事の対象機。IMX678/8.29MP/2μm/12-bit/ゼロアンプグロー/256MB DDR3。
  • ZWO ASI 678MC(同センサーのワンショットカラー版)— カラー撮影を 1 台で完結させたい方向け。
  • ZWO EFW 電動フィルターホイール — MM でのカラー化・ナローバンド撮影に。
  • ZWO Anti-dew Heater — 冷却型 ASI 用ですが、光学系側のデュー対策製品として参考に。
  • ZWO ASI シリーズ全般の USB 認識トラブル切り分け(ASI Camera Driver V3.28 対応版)
  • SharpCap/FireCapture/N.I.N.A. でのゼロアンプグロー系 CMOS 設定ガイド
  • 非冷却モデルでのダーク補正・ホットピクセル対策(PixInsight/DeepSkyStacker 連携)

⑩ ASI 678MM|商品ページ・公式 LINE のご案内

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最終更新: 2026-08-11/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式製品ページ・ASI678MC ユーザーマニュアル・ZWO 公式 Software/Driver ページ・Sony STARVIS 2 IMX678 資料に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。

よくある質問(FAQ)

Q1. ASI 678MM は冷却機能付きですか?

いいえ、非冷却モデルです。TEC(ペルチェ冷却)は搭載されていません。長秒露光で熱ノイズを抑えたい場合は、露光を短くしてスタック枚数を稼ぐ、ダーク補正を行う、といった運用で対処します。

Q2. USB 3.0 でつないでいるのに FPS が 30 前後で頭打ちです

①露光時間が長すぎる(例:40ms なら上限 25FPS)②USB Bandwidth(Turbo USB)が低い設定になっている③ROI を絞っていない(縦方向を狭めると効きます)④ハブ経由で帯域不足、のいずれかが典型的な原因です。§④ フレームレート・データ転送系で切り分けてください。

Q3. Windows 11 でドライバがブロックされます

ZWO Camera Driver V3.28(2026-05-25 リリース)で解消されています。古いドライバを完全にアンインストールしてから、V3.28 以降を管理者権限で入れ直してください。

Q4. バックフォーカスの 12.5mm が短くて困ります

ASI 678MM は 12.5mm 系の中でも接続の自由度が高く、1.25" ノーズピース/M42×0.75 メスねじ/C マウントの 3 系統が選べます。オフアクシスガイダー/フィルターホイールを噛ませる場合は、光学系側のバックフォーカス要求と合わせて構成を検討してください。

Q5. HCG モードはどのゲインで有効になりますか?

Gain 182 で HCG(High Conversion Gain)モードに切り替わり、Read Noise が約 0.8e まで下がります(Low Gain 時は最大 2.7e)。ラッキーイメージング・微光星の高速連写では 182 以上を目安に。

Q6. ASI 678MM で DSO(星雲・銀河)長秒露光は現実的ですか?

可能ですが非冷却であるため、①露出時間を 10〜30 秒に短くする ②ダークフレームを近い温度・時間で取得する ③スタック枚数で SNR を稼ぐ、といった運用が必須です。長秒 300 秒級の DSO 用途は冷却型(Pro シリーズ)が本来の適材です。

Q7. MC と MM、どちらを選べば良いですか?

ワンショットで色まで撮りたい(月・惑星・簡易 DSO)→ MC。
フィルターホイール前提でナローバンド/LRGB を組みたい、ラッキーイメージングでモノクロ高感度を活かしたい → MM。
迷ったら公式 LINE で用途・機材構成を教えてください。

Q8. ASI 678MM を PHD2 のガイドカメラとして使えますか?

使えます。ST-4 ポート搭載・近赤外感度が強い STARVIS 2 世代なので、ガイド星が拾えないシーンでも有利です。ただし他の ZWO カメラと同時接続する場合は認識順序に注意(§⑦ ST-4 ガイド系 参照)。

Q9. 8-bit と 12-bit、どちらで保存すべき?

本気のスタック用途は 12-bit(RAW)で SER 形式保存が原則です。8-bit は 12-bit ADC の下位 4 ビットを切り捨てる仕様のため、暗部情報が失われます。プレビュー用途のみ 8-bit でも可。

Q10. 保証はどのくらい付きますか?

ZWO 標準保証は 2 年間(DOA は 30 日、輸送破損は 3 日以内の申告)。弊社では加えて、初期不良 60 日+弊社独自 3 年保証をご用意しています。詳細は§⑨ 保証・ハードウェア故障判定をご覧ください。

参考にした一次情報

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最終更新: 2026-08-11/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式製品ページ・ASI678MC ユーザーマニュアル・ZWO 公式 Software/Driver ページ・Sony STARVIS 2 IMX678 資料に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。