ZWO ASI 678MM 入門ガイド ― IMX678 モノクロ・非冷却モデルの選び方と使いこなし

ZWO ASI 678MM 入門ガイド ― IMX678 モノクロ・非冷却モデルの選び方と使いこなし

ZWO の「ASI 678MM」は、Sony 製 4K CMOS センサー IMX678(モノクロ版) を搭載した、非冷却(uncooled)タイプのプラネタリー系カメラです。惑星・月・太陽といった短時間・高フレームレート撮影を主戦場としながら、明るい DSO の Lucky imaging やオートガイド用途にも流用できる、天体写真の入り口として非常にバランスのよい 1 台です。本記事では「ASI 678MM とは何か」「非冷却で本当に大丈夫か」「カラー版 ASI 678MC との違い」「必要な周辺機材とソフトウェア」を、公式マニュアルと Sony 純正フライヤーだけを根拠にゼロから整理します。

① ASI 678MM とは何か

ASI 678MM は、ZWO が 2022 年に投入した「プラネタリー系」CMOS カメラの中位モデルで、Sony 半導体の IMX678-AAMR1(モノクロ版)を採用しています。IMX678 は元来セキュリティカメラ向けに設計された 1/1.8 型 4K センサーで、STARVIS 2 技術によって近赤外域まで感度が伸びるのが特徴です。出典: Sony IMX678-AAMR1 Flyer(Copyright 2022 Sony Semiconductor Solutions)

ZWO の分類では、ASI 224MC / 662MC といった入門機と、ASI 585MC の上位機の間に位置づけられ、「入門を卒業して惑星撮影を本格化させたい層」向けと明確に述べられています。出典: ZWO「Selecting the ideal planetary camera」2023-08-21

モノクロ機とカラー機の位置づけ

ASI 678 シリーズは MC(カラー)と MM(モノクロ)の 2 系統があり、センサー物理特性はほぼ共通ですが、モノクロ機は R/G/B のベイヤーフィルターが載っていないぶん光量ロスが少なく、フィルターホイールと組み合わせて LRGB / ナローバンド撮影に踏み出せます。出典: Sony IMX678-AAMR1(モノクロ)と IMX678-AAQR/AAQR1(カラー)両フライヤー比較

② スペック早見表

項目 仕様
センサー Sony IMX678(モノクロ版:IMX678-AAMR1)
サイズ/対角 1/1.8 型/対角 8.86mm(7.68×4.32mm)
解像度 3840×2160(8.29MP)
画素ピッチ 2.0µm × 2.0µm
ADC 12bit(+ 10bit 高速モード)
読み出しノイズ 0.6 〜 2.7e(1e @ gain 8dB、HCG 時は 1.0e)
Full well 11.27ke
QE ピーク 83%
最大フレームレート 47.5fps(3840×2160・10bit)/ 23.7fps(12bit)/ 387.6fps(320×240)
露光時間 32µs 〜 2000s
シャッター Rolling shutter
インターフェース USB 3.0 / USB 2.0 Type-B、ST4 ガイドポート
内蔵バッファ DDR3 256MB
同梱アダプター 1.25" ノーズピース/ 2"/M42×0.75
バックフォーカス 12.5mm
保護窓 φ21×1mm(Sony センサーカバーガラスは両面 AR コート)
寸法/質量 φ62mm / 126g
消費電力 最大 1.875W(USB 給電)
冷却 なし(非冷却モデル)
動作温度 -5℃ 〜 50℃(湿度 20-80%)
対応 OS Windows / Linux / Mac OS X

出典: ZWO ASI678 Manual Rev 1.0 (Aug 2022) §3・§6、Sony IMX678-AAMR1 Flyer(Copyright 2022 Sony Semiconductor Solutions)

③ できること・向いている用途

惑星撮影(Lucky imaging)

ASI 678MM は 2.0µm という比較的細かい画素と 47.5fps という高フレームレートを併せ持ち、Lucky imaging と非常に相性がよいカメラです。Lucky imaging は「大気が静止する一瞬」を確率で拾う撮影法で、AutoStakkert!3 や RegiStax といったスタックソフトで数千フレームから良像だけを抽出します。DDR3 256MB のオンボードバッファがあるため、USB 経由の伝送ばらつきに強く、コマ落ちしにくいのも実用上の利点です。出典: ZWO ASI678 Manual §3・§6.4、OC Telescope 商品ページ(256MB DDR3 記載)

月面撮影

月面のクレーターや谷の微細構造を狙う場合、画素ピッチ 2.0µm と 4K 解像度がそのまま「モザイクなしで広めに撮って好きに切り出せる」利点になります。等倍拡大しても粒状感が少なく、シャープ処理耐性が高いのがモノクロ機の強みです。出典: ZWO ASI678 Manual §3、ZWO 公式 ASI678MC/MM 製品ページ(Solar/Moon 用途表記)

太陽撮影(白色光 / Hα)

白色光では ND / ハーシェルウェッジ、Hα では専用の太陽望遠鏡(Coronado PST や Lunt 40 など)と組み合わせて、太陽表面の粒状構造やプロミネンスを撮影できます。モノクロ機なので Hα 単色光の記録に無駄がなく、光量ロスがないぶん短時間露光でも高い SNR が得られます。出典: ZWO 公式 ASI678MC/MM 製品ページ(Solar 用途表記)、Sony IMX678-AAMR1 Flyer(両面 AR コート=可視全域を透過)

明るい小型 DSO・オートガイド兼用

非冷却モデルなので長時間 1 枚露光は苦手ですが、露光を数秒〜数十秒に留めて多数枚スタックする「Lucky DSO」的な運用や、感度の高さを活かした ST4 ポート経由のオートガイドカメラとしても使えます。ST4 ガイドポートとメイン USB を同時に接続できる 2 ポート設計です。出典: ZWO ASI678 Manual §6.1(外観図)

④ 非冷却モデルの現実的なメリットと注意点

非冷却で本当に大丈夫か

結論から言うと、惑星・月・太陽といった「短時間・高フレームレート撮影」なら非冷却で問題ありません。1 コマ数 ms〜数十 ms の露光を数分間だけ回すため、センサーが熱平衡になる前に撮影が終わる運用が基本だからです。ASI 678MM はハードウェアレベルで ゼロアンプグロー が実装されており、露光時間やゲイン設定にかかわらずアンプグロー由来のカブリが出ません。出典: ZWO ASI678 Manual §5「No amp glow」

熱ノイズと露光時間の目安

一方で、暗いターゲットを長時間 1 枚露光する DSO 用途では、常温のセンサーは温度に応じてダーク電流由来の熱ノイズが増えます。目安として、露光 30 秒〜 1 分程度までは非冷却でも実用範囲内、それ以上の長秒露光では冷却モデル(ASI 585MC Pro/2600MM Pro など)の方が扱いやすくなります。ASI 678MM の動作温度は -5℃〜50℃ の広範囲に対応します。出典: ZWO ASI678 Manual §Notice for use(Working temperature -5℃〜50℃)

ダーク運用の考え方

非冷却でもダークフレーム減算は有効ですが、センサー温度が撮影ごとに変わるため「本番撮影と同じ温度・同じ露光時間・同じゲイン」でダークを取ることが前提です。ゼロアンプグローのおかげで、短時間露光での Lucky imaging ではダーク補正を省略しても目立った縞・カブリが出にくいのが 678 系の特徴です。出典: ZWO ASI678 Manual §5、§3(Readout noise 0.6〜2.7e)

⑤ カラー版 ASI 678MC との違い

センサー物理特性は共通・カラーフィルターの有無で分かれる

ASI 678MC は同じ IMX678 系のカラー版(IMX678-AAQR / AAQR1)で、R/G/B の原色モザイクフィルターが乗っています。物理サイズ・画素数・画素ピッチ・ADC・フルウェル・アンプグロー特性はモノクロ版と共通です。出典: Sony IMX678-AAQR/AAQR1 Flyer(Copyright 2024 Sony Semiconductor Solutions)、ZWO ASI678 Manual §3

光量効率とナローバンド適性

モノクロ機はベイヤーフィルターを持たないぶん、同じ光量で受け止められる光子数が多く、実効的な感度と分解能が上がります。特に Hα などのナローバンド撮影では、カラー機が「赤画素だけで受ける」のに対し、モノクロ機は「全画素で受ける」ため差が大きく開きます。出典: Sony IMX678-AAMR1(モノクロ)と IMX678-AAQR/AAQR1(カラー)フライヤーの構造記述

どちらを選ぶか

「一発でカラー撮影がしたい/機材構成をシンプルにしたい」なら ASI 678MC、「フィルターホイールと組み合わせて LRGB やナローバンドまで踏み込みたい」「太陽 Hα など単色運用が主体」なら ASI 678MM が推奨です。将来的にフィルターホイールと ADC を追加する前提なら、モノクロを最初から選んだ方が投資の一貫性があります。出典: ZWO「Selecting the ideal planetary camera」2023-08-21、Sony IMX678 モノ/カラー両フライヤー

⑥ 必要な周辺機材(接続・フィルター・ADC)

バックフォーカスと接続

ASI 678MM のバックフォーカス(センサー面から本体先端まで)は 12.5mm です。1.25 インチノーズピース(付属)、2 インチアダプター、M42×0.75 の 3 種類のアダプターが同梱されるため、汎用的な望遠鏡側受け口にほぼそのまま接続できます。C マウントレンズを使う場合は別途 C マウントアダプターが必要になる場合があります。出典: ZWO ASI678 Manual §3・§7

フィルター運用

モノクロ機の真価はフィルター運用にあります。惑星の赤外線撮影には 850nm IR-Pass890nm メタン フィルターが有効で、木星や土星の大気構造を捉えやすくなります。LRGB カラー合成には L / R / G / B の 4 枚セット、ナローバンドには Hα / OIII / SII の 3 枚セットが定番構成です。出典: ZWO 公式 ASI678MC/MM 製品ページ(IR-Pass 850nm / 890nm methane 記述)

ADC(大気分散補正装置)とバローレンズ

低空の惑星を高倍率で狙う場合は、大気分散で色がにじむため ADC(Atmospheric Dispersion Corrector)を挟むと解像度が回復します。焦点距離が足りない場合はバローレンズを組み合わせて、画素ピッチ 2.0µm に対して「F 値 ≈ 画素ピッチ × 5〜10」あたりの合成 F 値になるよう調整するのが定石です。出典: ZWO「Selecting the ideal planetary camera」2023-08-21(画素ピッチと F 値の関係記述)

⑦ 対応ソフトウェア

ZWO ASIStudio(純正)

ZWO 公式配布のフリーソフトで、ASICap(動画キャプチャ)、ASIImg(DSO 撮影)、ASILive(ライブスタック)、ASIMovie(惑星動画)、ASIDeepStack(スタック)などが 1 パッケージにまとまっています。まずはこれを入れれば ASI 678MM の全機能が使えます。出典: ZWO ASI678 Manual §3(For software installation instructions, refer to astronomy-imaging-camera.com)

SharpCap

惑星・月・太陽・DSO ライブスタックまで幅広く対応するイギリス発のフリー/有料ソフトで、ZWO ASI SDK にネイティブ対応しています。Polar Align(極軸合わせ)や Sensor Analysis(センサー特性測定)機能が優秀で、日本の初心者にも定番です。出典: ZWO ASI SDK(Windows/Linux/Mac 対応、SharpCap は ZWO 純正ドライバを組み込んで公式配布)

FireCapture

惑星撮影ではデファクトスタンダードのフリーソフトで、フィルターホイール・ADC・ガイドの統合制御に強みがあります。ASI 678MM の 47.5fps を無駄なく引き出せるよう、ROI・ゲイン・ヒストグラム管理が細かく調整できます。出典: ZWO ASI SDK(FireCapture は公式 SDK 経由で ZWO ASI 全機種対応)

PHD2(オートガイド)

ASI 678MM を明るいガイドスコープに取り付ければ、単体でオートガイドカメラとして機能します。ST4 ポート経由の直結ガイドと、ASCOM/INDI 経由のパルスガイドの両方に対応します。PHD2 は世界標準のガイドソフトで、ZWO SDK にネイティブ対応しています。出典: ZWO ASI678 Manual §6.1(ST4 Guide port 記述)、ZWO ASI SDK

⑧ よくある質問(FAQ)

Q1. ASI 678MM は初心者に難しくないですか?

いいえ。付属の USB ケーブルと 1.25 インチアダプターをつなぐだけで、Windows / Mac / Linux の ASIStudio ですぐに映像が出ます。惑星ライブビューから入るのが最短のはじめ方です。出典: ZWO ASI678 Manual §3・§7、対応 OS 記述

Q2. 冷却なしでノイズは大丈夫ですか?

ゼロアンプグロー実装のため、短時間露光(数 ms〜数十秒)ではノイズが目立ちにくい設計です。長時間露光の DSO 用途では冷却モデルが向きます。出典: ZWO ASI678 Manual §5「No amp glow」

Q3. ASI 678MC(カラー)とどちらがよいですか?

手軽さ・一発カラー重視なら MC、フィルターホイール・LRGB・ナローバンド・Hα 太陽まで踏み込むなら MM が有利です。物理性能は同等で、カラーフィルターの有無で用途が分かれます。出典: Sony IMX678-AAMR1 / AAQR フライヤー比較

Q4. ASI 178MC とどう違いますか?

ZWO 公式によれば ASI 678 は「ASI 178 のアップグレード版」と位置づけられ、読み出しノイズ・ダイナミックレンジ・アンプグロー特性が改善されています。出典: ZWO 公式 ASI678MC/MM 製品ページ(upgraded version of ASI178MC 記述)

Q5. 何 FPS で撮影できますか?

USB 3.0 接続で全画素 3840×2160 なら 10bit で 47.5fps、12bit で 23.7fps です。320×240 に ROI を絞れば 387.6fps まで上がります。出典: ZWO ASI678 Manual §6.4 フレームレート表

Q6. どのフィルターを揃えるべきですか?

惑星のみなら 850nm IR-Pass と 890nm メタン、LRGB カラーなら L / R / G / B の 4 枚、ナローバンドなら Hα / OIII / SII の 3 枚が定番です。出典: ZWO 公式 ASI678MC/MM 製品ページ

Q7. オートガイドカメラとして使えますか?

使えます。ST4 ガイドポートを搭載しており、PHD2 経由でガイドスコープに取り付けて直結ガイドまたはパルスガイドが可能です。出典: ZWO ASI678 Manual §6.1

Q8. HCG モードとは何ですか?

High Conversion Gain の略で、gain 182 で自動的に ON になり、高ゲイン時でも読み出しノイズを 1.0e 前後まで下げつつ、ダイナミックレンジを 11bit 相当に維持する回路モードです。出典: ZWO ASI678 Manual §4「QE graph & Read noise」

Q9. Mac でも使えますか?

使えます。ZWO は Windows / Linux / Mac OS X の SDK を公式配布しており、ASIStudio や SharpCap(Mac 版)で ASI 678MM が動作します。出典: ZWO ASI678 Manual §3(Supported OS: Windows, Linux & Mac OSX)

Q10. 保証はどうなっていますか?

ZWO 社の製品保証は 2 年です。天体ショップでご購入の場合は、弊社独自の「初期不良 60 日+ 3 年保証」を上乗せしてご提供します。出典: ZWO ASI678 Manual §9「Warranty」(ZWO 2-year)+弊社独自保証

⑩ 商品ページ・公式 LINE のご案内

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ZWO ASI 678MM(IMX678 モノクロ・非冷却)は、惑星・月・太陽 Lucky imaging とオートガイド兼用に最適な 1 台です。仕様・在庫・価格の最新情報は商品ページをご確認ください。

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最終更新: 2026-08-11 / 執筆: 天体ショップ(株式会社天文堂)/ 参考: ZWO ASI678 Manual Rev 1.0、Sony IMX678-AAMR1 Flyer

⑪ 参考にした一次情報

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最終更新: 2026-08-11 / 天体ショップ(株式会社天文堂)/ 保証: ZWO 社の製品保証(2 年)+ 弊社独自の初期不良 60 日+ 3 年保証