ZWO 585MM(ASI585MM)比較・選び方|非冷却版 vs Pro 冷却版 vs 他モノクロ CMOS の完全ガイド【2026 年版】

ZWO 585MM(ASI585MM)比較・選び方|非冷却版 vs Pro 冷却版 vs 他モノクロ CMOS の完全ガイド【2026 年版】

ZWO の ASI585MM(Sony IMX585 モノクロ機)は、Sony STARVIS 2 世代の 1/1.2 型センサーを搭載した 2.9μm × 8.29MP のモノクロ CMOS で、天体撮影用に非冷却版(ZWO 585MM)と 2 段 TEC 冷却版(ZWO 585MM Pro)の 2 モデルが用意されています。本記事は ZWO 公式マニュアル・Sony センサーフライヤーの一次情報のみを根拠に、非冷却版と Pro 版の使い分け、他モノクロ機(ASI533MM Pro/ASI2600MM Pro/ASI294MM Pro)との比較、そして「惑星/広帯域ディープスカイ/狭帯域/EAA/ガイド」の用途別選び方を整理します。カラー機との違い、55mm バックフォーカス設計、HCG モードの意味まで、実務で必要な判断軸をゼロから解説します。

① ZWO 585MM シリーズ全体像|Sony IMX585 モノクロとは何か

IMX585 センサーの基本仕様(Sony 公表値)

IMX585-AAMJ1 は Sony セミコンダクタソリューションズが 2023 年に公表したセキュリティカメラ向けの CMOS イメージセンサーで、対角 12.84 mm(Type 1/1.2)、有効画素 3856(H)×2180(V) 約 8.40M、推奨記録画素 3840(H)×2160(V) 約 8.29M、単位セルサイズ 2.9μm×2.9μm 正方の裏面照射型(Back-Illuminated)です。Sony 自身のフライヤー上では、全画素スキャン時の最大フレームレートは 12 bit で 60fps、10 bit で 90fps と規定されており、Digital Overlap HDR / Clear HDR の HDR モードや CSI-2 の 2/4/8 レーン出力に対応します。

出典: Sony Semiconductor Solutions "IMX585-AAMJ1" Flyer Ver.1.0 (2023) §Description / §Features / §Device Structure / §Basic Drive Mode(Sony 公表値・記録画素・セルサイズ・ADC・フレームレート)

STARVIS 2 という「土台」

IMX585 は Sony の裏面照射技術ブランドである STARVIS 2 世代に属します。Sony のフライヤー脚注では、STARVIS 2 は同一画素サイズの STARVIS 世代(AD 12bit)と比較して単一露光時のダイナミックレンジが 8 dB 以上広く、可視光〜近赤外域で高画質を発揮する、と定義されています。1/1.2 型・4K 解像度クラスのモノクロ機で 91% ピーク QE を実現できているのはこの世代の裏面照射化の恩恵です。

出典: Sony IMX585-AAMJ1 Flyer 脚注 "STARVIS 2 and its logo..."(AD 12bit 基準・DR 8 dB 拡大・裏面照射の定義)

ZWO の 585MM ラインナップ整理

ZWO は同じ IMX585 モノクロ機を大きく 2 系統で販売しています。非冷却版は 2022 年発売の「ASI585MC/MM」シリーズ(ZWO Manual V1.0 系)で、ボディ径 62mm・126g・ST4 ガイドポート・USB 給電で最大 2.86 W と、コンパクト・軽量・低消費が特徴です。Pro 冷却版は「ASI585MC/MM Pro」シリーズで、φ78×73.5mm・470g・2 段 TEC・DDR3 512MB バッファ・USB 3.0 Type-B + USB 2.0 HUB という、いわゆる「クールド DSO カメラ」の構成に発展させたモデルです。センサーそのものは同一の IMX585 モノクロ品を用いるため、QE ピーク 91%・8.29MP・2.9μm 画素という光学的な素性は共通です。

出典: ZWO ASI585 Manual Rev 1.0 (2022-08) §3 Camera technical specifications / §6.1 External View / §6.3 Power consumption(非Pro 版の 126g・62mm・USB 給電 max 2.86W・ST4 記載)

出典: ZWO DSO Camera ASI585MC/MM Pro Product Manual (2025-03) §3.2 Camera Specifications / §3.8 High Transmission Speed(Pro 版の φ78×73.5・470g・DDR3 512MB・USB 3.0 Type-B + USB 2.0 HUB 記載)

② 585MM 非冷却版 vs 585MM Pro 冷却版|同じ IMX585 モノクロでも役割は別

スペック横並び

項目 ZWO 585MM(非冷却) ZWO 585MM Pro(冷却)
センサー Sony IMX585(1/1.2 型・モノクロ) Sony IMX585(1/1.2 型・モノクロ)
解像度 3840×2160(8.29MP) 3840×2160(8.29MP)
画素サイズ 2.9μm 2.9μm
センサー実寸 11.2 × 6.3 mm(マニュアル記載) 11.136 × 6.264 mm
最大 fps 46.9 fps 47 fps
シャッター Rolling shutter Rolling shutter
露出範囲 32μs〜2000s 32μs〜2000s
読み出しノイズ 0.8〜12 e(2.4e @15 dB gain) 0.7〜6.4 e(3.8e @19.5 dB gain)
QE ピーク 91% 91%
フルウェル 47 ke 38.7 ke
ADC 12bit 12bit(10bit 高速モード併用)
DDR3 バッファ なし(マニュアル §3 記載なし) 512 MB
USB USB 3.0 USB 3.0 Type-B + USB 2.0 HUB
冷却 なし 2 段 TEC(環境温度 30°C 時に ΔT 30〜35°C)
電源 USB 給電(max 2.86 W) 12V DC(D5.5×2.1mm、非冷却 max 2.5 W/冷却 max 22.6 W)
ボディ径 62 mm φ78 × 73.5 mm
重量 126 g 470 g(0.47 kg)
バックフォーカス 6.5mm / 17.5mm 6.5mm / 17.5mm(11mm リング装着時)
保護窓 AR D32×2 mm AR D32-2
ガイドポート ST4 あり ST4 なし(USB 2.0 HUB 経由でガイドカメラ/EAF/EFW 接続)
動作温度 -5°C〜50°C -5°C〜50°C

出典: ZWO ASI585 Manual V1.0 (2022-08) §3 / §6ZWO ASI585MC/MM Pro Product Manual (2025-03) §3.2 / §3.6 / §3.7 / §4 / §6 の両公式マニュアルから直接引用(実測レビュー記事の派生値は不使用)

冷却が「必要」なのか「余禄」なのか

Pro 版の 2 段 TEC は、環境温度 30°C 時にセンサー温度を環境比 30〜35°C 下げる能力があります(マニュアル §3.6)。暗電流はセンサー温度に指数的に依存するため、冷却が効いているほど長時間露光時の熱ノイズフロアが下がり、ダークフレーム減算の再現性も高くなるのが物理的なメリットです。ZWO 自身も同マニュアル §3.6 で「暗電流生成とセンサーノイズを大幅に減らし、長時間露光時に効果を発揮する」と記載しています。逆に言えば、露光時間が数百ミリ秒〜数秒程度の惑星・月面・ガイド用途では冷却の恩恵は限定的で、非冷却版の 126g・USB 給電の可搬性が勝つ場面が多くなります。

出典: ZWO ASI585MC/MM Pro Product Manual (2025-03) §3.6 Two-stage TEC Cooling(環境比 −30〜35°C・暗電流と長時間露光の関係の記述)

電源設計と可搬性

非冷却版は USB 3.0 バスパワーで完結し、最大消費電力は 2.86 W です(ASI585 Manual V1.0 §6.3)。ノート PC + カメラという 2 点セットで運用できるため、遠征・観望会・ベランダ撮影で強い形式です。一方 Pro 版は 12V DC 入力(D5.5×2.1mm、センタープラス)を要求し、非冷却時 max 2.5 W /冷却時 max 22.6 W(マニュアル §3.7)と桁が違います。ZWO は Pro 版の推奨電源として 12V@3〜5A DC アダプタ、または 11〜14V リチウムバッテリーを明示しており(マニュアル §2)、この電圧範囲を外すと「修復不能な損傷につながる可能性がある」と警告している点も要注意です。

出典: ZWO ASI585 Manual V1.0 (2022-08) §6.3 Power consumption(非冷却版 max 2.86 W)

出典: ZWO ASI585MC/MM Pro Product Manual (2025-03) §2 Notice for Use / §3.7 Power Consumption(12V DC・11〜14V リチウム・非冷却時 max 2.5W/冷却時 max 22.6W)

HCG モードとダイナミックレンジ

両モデルには High Conversion Gain(HCG)モードが搭載されており、gain 252 以上に上げると自動的に切り替わって高 gain でも読み出しノイズが低いまま、ダイナミックレンジを低 gain 時と同水準に保つ動作をします。Pro 版マニュアル §3.3 では HCG モードで 読み出しノイズ 0.7 e 未満・DR 約 11 stops、非 Pro 版マニュアル §4 では 読み出しノイズ 1.5 e まで・DR 約 11 bitと、記述に差があります(測定条件と表現の違いによるものと思われますが、両者ともマニュアル記載値のまま引用しています)。狭帯域(Hα・OIII・SII)撮影では信号が弱く読み出しノイズがボトルネックになりやすいため、HCG モードでの運用が一般的に推奨されます。

出典: ZWO ASI585MC/MM Pro Product Manual (2025-03) §3.3 Quantum Efficiency & Read Noise / Read Noise 節(Pro 版の HCG 発動 gain 252・DR 11 stops・RN <0.7e)

出典: ZWO ASI585 Manual V1.0 (2022-08) §4 QE graph & Read noise(非 Pro 版の gain 252 で HCG・RN 1.5e まで低下・DR ~11bit)

③ モノクロ(MM)版 vs カラー(MC)版|同じ IMX585 でも運用は別

センサー構造の違い

ZWO ASI585 シリーズには、同一の IMX585 系センサーを使う MC(カラー・ベイヤー配列)版MM(モノクロ)版が用意されています。Pro 版マニュアル §3.2 では、MC Pro が読み出しノイズ 0.7〜6.67 e(3.8e @19.8 dB gain)・フルウェル 40 ke、MM Pro が読み出しノイズ 0.7〜6.4 e(3.8e @19.5 dB gain)・フルウェル 38.7 ke と、微妙な値差が記載されていますが、QE ピーク・画素サイズ・センサーサイズ・DDR3 バッファ・冷却性能などその他の主要仕様は共通です。

出典: ZWO ASI585MC/MM Pro Product Manual (2025-03) §3.2 Camera Specifications(MC/MM 並列表からの値差)

モノクロ機を選ぶ物理的な意味

カラー機は各画素に赤/緑/青のマイクロカラーフィルター(CFA、ベイヤー配列)が乗っており、1 画素は原理上 1 色の光しか受けません。モノクロ機はこの CFA が無いため、センサー面に到達した全波長の光を各画素が受光できます。同じ QE ピーク(91%)でも、モノクロ機は各画素で全光を使えるため、L(輝度)・R・G・B・Hα・OIII・SII のような 外付けフィルターを付け替えて撮る運用と相性が良い設計になります。ただし色画像を得るには、モノクロ機では EFW(電子式フィルターホイール)や個別フィルターの追加投資と、フィルターごとの撮り分け・合成の手間が必要になる点は、初心者にとっての大きな分岐点です。

出典: Sony IMX585-AAMJ1 Flyer §Description(AAMJ1 = "for Monochrome Cameras" 明記)/CFA の有無に関する記述は Sony フライヤー・ZWO マニュアルの構造記載に基づく

④ 585MM vs 533MM|1/1.2 型 3840×2160 vs 1 型 正方 3008×3008

センサーサイズと視野形状の違い

IMX571(APS-C, 26MP)23.5 × 15.7 mm IMX533(1" 正方, 9MP)11.3 × 11.3 mm IMX585(1/1.2, 8.29MP)11.14 × 6.26 mm スケール 10 px = 1 mm(センサー実寸を等倍で描画)
図 1: センサーサイズ比較図。数値は ASI585MC/MM Pro Manual §3.2(IMX585: 11.136×6.264mm)、Astronomics ASI533MM Pro 販売ページ(IMX533: 11.3×11.3mm 1" 正方)、ZWO New ASI2600MM/MC Pro 公式ページ(IMX571: 23.5×15.7mm APS-C)に基づく等倍模式図

ASI585MM は 1/1.2 型・16:9 相当の横長センサーで、対角 12.84mm・実寸 11.14×6.26mm です。一方 ASI533MM Pro(Sony IMX533)は 1 インチクラスの 正方形センサー(11.3×11.3mm、対角 16mm)で、3008×3008・約 9MP、画素サイズは 3.76μm と、585MM より 1 画素あたりの受光面積が約 (3.76/2.9)² ≒ 1.68 倍広くなります。フルウェルは 533MM Pro が 50ke、585MM Pro が 38.7ke と、533MM 側が約 3 割大きな飽和容量を持ちます。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.2(IMX585 実寸・画素・フルウェル)/Astronomics ASI533MM Pro 販売ページ(IMX533 実寸・画素 3.76μm・フルウェル 50ke・14bit ADC・DR 13.7 stops)

選び方の分岐点

視野形状が「正方」であるということは、実際の対象天体(丸い惑星状星雲、球状星団、フェイスオン銀河)に対してトリミングの自由度が高いということです。加えて 533MM Pro は ADC 14bit・DR 13.7 stops(Astronomics 記載)と、585MM Pro の 12bit ADC・DR 約 11 stops よりも階調に余裕があります。一方 585MM は横長 16:9 で「広い星野をパン気味に構図する」用途と、2.9μm 小画素を活かした高解像度惑星・月面向きに寄っている、と役割を分けて考えると選びやすくなります。

出典: Astronomics ASI533MM Pro 販売ページ(14bit ADC・DR 13.7 stops)と ASI585MC/MM Pro Manual §3.2 §3.3(12bit ADC・DR ~11 stops)の比較

⑤ 585MM vs 2600MM Pro|APS-C 26MP との桁違いの画角

センサーサイズ・解像度・階調の 3 点差

ASI2600MM Pro(2025 版、Sony IMX571 APS-C)は 23.5×15.7mm・6248×4176(26MP)・画素 3.76μm・フルウェル 73ke・ネイティブ 16bit ADC・DR up to 14 stops と、いわゆる「APS-C クラスの本格ディープスカイモノクロ機」に位置づけられます。585MM Pro(11.14×6.26mm・8.29MP)と比べるとセンサー面積で約 5.3 倍、画素数で約 3.1 倍と、単純な画角と情報量では 2600MM 側に大きな差があります。冷却性能は 585MM Pro と同じ 2 段 TEC・環境比 -30〜35°C ですが、暗電流は 2600MM Pro が @0°C で 0.0022 e/s/pix、@-20°C で 0.00012 e/s/pix と、公式ページで数値まで開示されています。

出典: ZWO New ASI2600MM/MC Pro 公式製品ページ (2025)(IMX571 APS-C 23.5×15.7・26MP・3.76μm・フルウェル 73ke・16bit ADC・DR up to 14 stops・2 段 TEC ΔT 30〜35°C・暗電流 0.0022/0.00012 e/s/pix・DDR3 512MB・重量 0.7kg・BF 55mm)

585MM Pro が「上位互換ではない」理由

2600MM Pro のほうがセンサーが大きく階調が広いのは事実ですが、585MM Pro のほうが有利な場面もはっきりあります。まず惑星・月面のクローズアップでは、2.9μm の小画素と 47fps のフレームレート・USB 3.0 5Gb 帯域・DDR3 512MB バッファがそのまま「サンプリング密度が高く、シーイングの良い瞬間を高フレームで拾える」利点になります。次に 予算・鏡筒とのマッチングで、535mm 級以下の短焦点鏡筒では 2600MM の APS-C フォーマットは周辺像が写野の隅に近く、レデューサー・フラットナー・イメージサークルの要件が厳しくなりがちです。585MM の 1/1.2 型なら小口径・短焦点でも周辺光量落ちや像面湾曲の影響を受けにくく、機材のバランスを取りやすくなります。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.5 ADC(47fps @ USB3 High-speed Mode / 3840×2160 RAW8)§3.8 High Transmission Speed(USB 3.0 5Gb / DDR3 512MB)

⑥ 585MM vs 294MM Pro|4/3 型 IMX492 と Unlocked Bin1

センサーサイズと運用モード

ASI294MM Pro(Sony IMX492、4/3 型)は、標準モードで 11.7MP・画素 4.63μm 相当のビン運用を、ソフトウェア切替で「Unlocked Bin1」モードにすると 画素 2.3μm・47MP・12bit・フルウェル 14keにモード変更できる特殊なセンサーです。ZWO 公式製品ページによれば、通常運用時は QE 90%、フルウェル 66,387e、読み出しノイズ 1.2e、暗電流 @-20°C 0.0022 e/s/pix、冷却は 2 段 TEC で環境比 -30〜40°C の性能を持ち、DDR3 256MB バッファを搭載します。

出典: ZWO ASI294MM Pro 公式製品ページ(Sony IMX492・4/3 型・11.7MP・QE 90%・RN 1.2e・フルウェル 66,387e・Unlocked Bin1 で 2.3μm/47MP・DDR3 256MB・ΔT 30〜40°C・暗電流 @-20°C 0.0022 e/s/pix)

使い分けの実務判断

294MM Pro は 4/3 型センサーで 585MM より対角が大きく、Unlocked Bin1 モードを使えば「高精細モード」と「高感度モード」を撮影対象に合わせて切り替える柔軟性があります。一方で 585MM は 2.9μm 固定の 単純明快な設計で、モード切替の学習コストがなく、STARVIS 2 世代の高 QE と HCG モードで狭帯域と広帯域を素直に撮り分けられます。「モード切替まで含めて自分でチューニングしたい」なら 294MM、「まずセンサーの素直な特性で使い倒したい」なら 585MM、という判断軸が実務的です。

出典: ZWO ASI294MM Pro 公式ページ(Unlocked Bin1 モード 2.3μm/47MP/12bit/フルウェル 14ke の記載)と ASI585MC/MM Pro Manual §3.3(HCG モード自動発動)

⑦ 用途別 選び方フローチャート|585MM を「いつ」選ぶか

惑星・月面 imaging

2.9μm 画素・47fps・DDR3 512MB バッファ・USB 3.0 5Gb 帯域という組み合わせは、シーイングの良い瞬間を大量フレームで拾ってスタックする惑星・月面撮影と相性が良い設計です。焦点距離の長い惑星鏡筒(バーローで F20 以上)と合わせると、木星・土星の細部・月面クレーターの高精細取得に向きます。冷却は必ずしも必須ではないため、この用途では 非冷却版(zwo-585mm)で十分に成立します。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.5 §3.8ASI585 Manual V1.0 §3(46.9〜47fps・USB 3.0・DDR3 バッファ or USB 給電の記載)

ディープスカイ 広帯域 LRGB

数分〜十数分の露光を重ねる広帯域 LRGB 撮影では、暗電流と読み出しノイズを下げるために Pro 冷却版(zwo-585mm-pro)が向きます。ZWO Pro 版マニュアル §3.6 の「2 段 TEC で環境比 30〜35°C 低下」による暗電流低減は、ディープスカイの淡い階調表現に効きます。gain 100 前後で低〜中 gain 運用し、L と RGB フィルターを EFW で切り替えて撮影する構成が典型例です。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.6 Two-stage TEC Cooling(暗電流と長時間露光の関係)

狭帯域(Hα・OIII・SII)撮影

狭帯域はフィルターで大半の光を遮るため、信号が非常に弱く、読み出しノイズが写り込みのボトルネックになります。HCG モード(gain 252 以上で自動 ON、DR 約 11 stops、RN 0.7e 未満)を使うのが定石です。冷却が効いた Pro 版のほうが暗電流の再現性が高くダーク減算の安定度で有利になります。実測レビュー例では「広帯域は gain 100、狭帯域は gain 252」を切り替える使い方が紹介されています。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.3(HCG 発動 gain 252・DR ~11 stops・RN <0.7e)/実測 gain 運用例は AstroBackyard ASI585MM Pro Review に記載

EAA・短時間観望(電視観望)

数秒〜数十秒のライブスタックが主体の EAA 用途では、冷却の必要性が下がり、代わりに センサーサイズと視野の広さ・可搬性が効いてきます。非冷却版(126g・USB 給電・ST4 あり)は AZ 経緯台・小型スマート赤道儀(AM3・AM5・iOptron 系)とバランスが良く、単独で PC + カメラ運用ができるため、遠征・観望会にそのまま持ち出せます。

出典: ZWO ASI585 Manual V1.0 (2022-08) §3 §6.1 §6.3(非 Pro 版 126g・USB 給電 max 2.86 W・ST4 ガイドポート搭載)

ガイドカメラとしての使い道

585MM 非冷却版は 2.9μm 画素・8.29MP・ST4 搭載で、ガイドカメラとしても機能します。ただしガイド専用にするには画素が細かすぎ画角も広すぎる場合が多く、通常はガイド用に ASI220MM Mini / ASI120MM Mini のような小型モノクロ機を選ぶのが定石です。585MM は「メイン撮像機として使いつつ、機材構成上 ST4 を使うシーンがある場合に流用する」立ち位置と考えたほうが自然です。

出典: ZWO ASI585 Manual V1.0 (2022-08) §6.1 External View(ST4 Guide port の存在)

⑧ 55mm ベストバックフォーカス設計|Pro 版の実務セットアップ

ASI585MM Pro BF 6.5mm 11mm リング 16.5mm 延長 EFW / フィルター等 残 21mm 前後 → 鏡筒 T2/M48 接続面 合計 55.0 mm(センサー面 ⇔ 鏡筒接続面)
図 2: 55mm ベストバックフォーカス構成の模式図。数値・部品は全て ZWO ASI585MC/MM Pro Product Manual §3.2 §6.1 §6.2 Solutions for 55mm best back focus distance(センサー面から 6.5mm・11mm リング・16.5mm M42-M48 延長・M42×0.75 接続の記述)に準拠

ASI585MM Pro の センサー面から筐体前端までの距離(バックフォーカス)は、11mm リング取り外し時 6.5mm、装着時 17.5mmです(マニュアル §3.2)。多くのフラットナー/レデューサーの標準バックフォーカスは 55.0mm 想定なので、「6.5mm + 11mm リング + 16.5mm M42-M48 延長 + EFW/フィルター」を組み合わせて 55.0mm を作るのが定番構成です。付属アダプタ(M42×0.75 接続、スペーサー 0.1mm×1 / 0.2mm×2 / 0.5mm×1)で微調整もできます。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.2 §6.1 Connecting to Nikon/Canon Lens §6.2 Solutions for 55mm best back focus distance §4 What's in the Box?

本記事で扱った ZWO 585MM シリーズと関連機は、下記商品ページからご確認いただけます。仕様の詳細やお客様の鏡筒との組み合わせについては、公式 LINE で個別にご相談いただくのが最も早いご案内方法です。

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最終更新: 2026-07-05/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式マニュアル(ASI585MC/MM Pro Product Manual 2025-03・ASI585 Manual V1.0 2022-08・ASI2600MM/MC Pro 公式ページ・ASI294MM Pro 公式ページ)と Sony IMX585-AAMJ1 Flyer に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。

⑩ よくあるご質問(FAQ)

Q1. ZWO 585MM と ZWO 585MM Pro はセンサーが違うのですか?

いいえ、両モデルとも同じ Sony IMX585 モノクロセンサーを使用しています。違いは冷却の有無・USB 2.0 HUB の有無・DDR3 512MB バッファの有無・ボディ径と重量・電源要件(USB 給電 vs 12V DC)です。ZWO の公式マニュアルでは、Pro 版のみ 2 段 TEC 冷却(環境比 30〜35°C 低下)を搭載します。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.2 §3.6ASI585 Manual V1.0 §3 §6.3

Q2. 惑星・月面撮影にも冷却は必要ですか?

ZWO 公式マニュアル §3.6 は「暗電流生成とセンサーノイズを減らし、長時間露光時に効果を発揮する」と説明しており、露光時間が短い惑星・月面撮影ではメリットが限定的です。非冷却版(126g・USB 給電)でも 46.9fps を確保できるため、この用途では非冷却版で十分に成立します。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.6ASI585 Manual V1.0 §3

Q3. HCG モードはどのゲインで発動しますか?

ZWO ASI585MC/MM Pro Product Manual(2025-03)§3.3 では「gain 252 以上で自動的に HCG モードに切り替わり、ダイナミックレンジ約 11 stops・読み出しノイズ 0.7 e 未満」と記載されています。非 Pro 版マニュアル V1.0 §4 も同じ gain 252 で HCG が動作すると明記しています。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.3ASI585 Manual V1.0 §4

Q4. モノクロ(MM)で撮影するとカラー画像は得られないのですか?

モノクロ機はセンサー面にベイヤー配列のカラーフィルターが乗っていないため、単独では色情報を持ちません。カラー画像を得るには外付けフィルター(LRGB・Hα・OIII・SII 等)を付け替えて撮影し、後処理で合成します。この運用のため、モノクロ機は電子式フィルターホイール(EFW)と組み合わせて使うのが標準的です。

出典: Sony IMX585-AAMJ1 Flyer §Description(AAMJ1 = for Monochrome Cameras)/ASI585MC/MM Pro Manual §6.1 §6.3(EFW mini との接続方法図示)

Q5. 585MM Pro のバックフォーカスは何 mm で設計されていますか?

センサー面からの実測値は、11mm リング取り外し時 6.5mm、装着時 17.5mm です。マニュアル §6.2 では「55mm best back focus distance」に対する構成例(11mm リング+16.5mm M42-M48 延長+EFW/フィルター)が示されており、多くのレデューサー・フラットナーが要求する 55.0mm を標準構成で満たせるようになっています。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.2 §6.2

Q6. 585MM Pro の消費電力と電源要件は?

非冷却時最大 2.5 W、冷却時最大 22.6 W。ZWO は 12V DC(D5.5×2.1mm、センタープラス)で 3〜5A の DC アダプタ、または 11〜14V のリチウムバッテリーを推奨しており、この電圧範囲を外すと修復不能な損傷につながる可能性があると警告しています。ASIAIR から給電することも可能です。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §2 Notice for Use / §3.7 Power Consumption

Q7. ASI533MM Pro と 585MM Pro のどちらを選ぶべきですか?

視野の縦横比が「正方」であることが対象天体(球状星団・惑星状星雲・フェイスオン銀河)に対して有利で、階調(14bit ADC・DR 13.7 stops)を優先するなら 533MM Pro。横長 16:9 の広い星野・小画素 2.9μm を活かした惑星/月面/短焦点鏡筒でのバランスを取りたいなら 585MM Pro が向きます。両モデルとも QE ピーク 91%・環境比 -35°C 冷却は共通です。

出典: Astronomics ASI533MM Pro 販売ページASI585MC/MM Pro Manual §3.2 §3.6

Q8. ASI2600MM Pro と 585MM Pro はどう使い分けますか?

2600MM Pro は APS-C(23.5×15.7mm)・26MP・16bit ADC・DR up to 14 stops と、階調と画角で明確に上位ですが、必要となるレデューサー・フラットナーのイメージサークル・鏡筒のマッチングも上位クラスになります。585MM Pro は 1/1.2 型で短焦点鏡筒・小口径鏡筒でも周辺像への負担が軽く、コストと機材構成のバランスに優れます。予算・鏡筒・撮影対象で使い分けるのが実務的です。

出典: ZWO New ASI2600MM/MC Pro 公式ページASI585MC/MM Pro Manual §3.2

Q9. 585MM Pro に保護窓ヒーターは付いていますか?

ASI585MC/MM Pro Product Manual §3.4 に記載されているのは「AR コート付き反射防止フィルター(保護窓)」で、結露防止用のポリイミドヒーターは 585MM Pro のマニュアル §3.4 には明示的な記載がありません(ASI2600MM Pro のような専用ヒーター記述は 585MM Pro マニュアルにはない)。結露対策が必要な環境では、外付けのレンズヒーターなどで対処するのが安全です。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.4 Protective Window(保護窓は AR コート付き、ヒーターの記載なし)と ZWO ASI2600MM/MC Pro 公式ページ(2600MM Pro は保護窓ヒーター内蔵)の対比

Q10. 585MM 系はゲイン 252 未満で撮影しても大丈夫ですか?

問題ありません。ZWO マニュアルはあくまで gain 252 を HCG モード発動の閾値として示しています。低〜中 gain(例: 100 前後)は広帯域撮影で階調を確保したい場合の運用に向き、狭帯域は HCG モード(gain 252 以上)でノイズフロアを下げるのが定石、という 用途と gain の組み合わせを選択できる設計です。

出典: ASI585MC/MM Pro Manual §3.3AstroBackyard ASI585MM Pro Review(gain 100 と gain 252 の切り替え運用の実測記述)

参考にした一次情報

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最終更新: 2026-07-05/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は ZWO 公式マニュアル(ASI585MC/MM Pro Product Manual 2025-03・ASI585 Manual V1.0 2022-08・ASI2600MM/MC Pro 公式ページ・ASI294MM Pro 公式ページ)と Sony IMX585-AAMJ1 Flyer に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。