スマホで夏の天の川を撮る|設定・固定撮影のコツ 完全ガイド
スマホで夏の天の川を撮る|設定・固定撮影のコツ 完全ガイド
スマホでも、夏の天の川は撮れます。答えを先に言うと、必要なのは「新月前後」「街明かりのない場所」「三脚固定」の3点と、iPhone なら Night mode、Pixel なら Night Sight の Astrophotography、Galaxy なら Expert RAW という機種ごとの長時間露光モードです。本記事は Apple・Google・Samsung の各公式マニュアルと、国立天文台・環境省の公表資料だけを一次情報として引き、スマホ固定撮影で夏の天の川に届くための設定・時期・場所・機材を、機種別に整理します。
① いつ撮る?|夏の天の川が見える季節・時間・月齢
スマホで夏の天の川を撮るときの最初の関所は「日程選び」です。ここを外すと、いくら露光を伸ばしても淡い天の川は月明かりに埋もれます。
1-1. 夏の天の川はいつ・どこに見えるか
国立天文台「東京の星空 2026年7月」は、7 月の東京では日暮れ後の東の空に夏の大三角(ベガ・アルタイル・デネブ)が姿を見せ、下旬には頭上高くに昇ってくると案内しています。そして「街明かりがなく、空気のきれいな所では、天の川が楽しめるようになります」と、夏の大三角のあたりから南の空へ流れる位置関係が示されています。
出典: 国立天文台「東京の星空・カレンダー・惑星(2026年7月)」(「街明かりがなく、空気のきれいな所では、天の川が楽しめるようになります」)
1-2. 月齢の合わせ方(新月前後 ±3 日を狙う)
次に月齢です。国立天文台 FAQ は「新月から新月まで、あるいは、満月から満月までは平均約 29.5 日の間隔」で、「新月から満月、満月から新月は 29.5 日の半分の約 15 日間」と説明しています。天の川は満月の夜には確実に薄れます。月齢 0(新月)から±3 日、遅くとも上弦・下弦を過ぎた月が沈む時間帯を選ぶのが原則です。
月齢そのものについては、国立天文台 FAQ が「新月を 0 として、翌日が 1、翌々日が 2 と 1 日に 1 ずつ数を増やしていきます」と定義しています。日々の月齢は暦計算室のカレンダーで確認できます。
出典: 国立天文台 FAQ「満月や新月の日を知るにはどうすればいい?」および 同「「月齢」ってなに?なぜ小数がつくの?」
1-3. 一晩の中の時間帯(薄明終了から月出まで)
夕方は西の空がまだ明るく(薄明)、真夜中を過ぎると月が昇ってくる日もあります。天の川撮影は、天文薄明が終わった時刻(日没後およそ 1.5〜2 時間後)から、月が昇る前までの「暗黒時間」を狙います。国立天文台の同 7 月号は、7 月の東京で日が暮れる時刻とその後の空の様子を明記しており、日ごとの月の出入り時刻はこの暦カレンダーで確認できます。
出典: 国立天文台「東京の星空・カレンダー・惑星(2026年7月)」の日ごとカレンダー欄
② どこで撮る?|光害の少ない撮影地の選び方
2-1. 「光害」とは何か(環境省の定義)
環境省「星空を見よう」は光害を「照明の設置方法や配光が不適切で、景観や周辺環境への配慮が不十分なために起こるさまざまな影響」と定義し、「照明器具から出る光が、目的外の方向に漏れたり、周辺環境にそぐわない明るさや色であったり、必要のない時間帯にまで、つきっぱなしであったりする」と説明しています。天の川撮影で敵になるのは、この漏れ光による夜空全体のかぶりです。
2-2. 撮影地の目安(Bortle スケール)
夜空の暗さの国際的な指標として広く使われる Bortle スケールは、John E. Bortle が 2001 年に提唱した 9 段階評価で、DarkSky International はこれを世界中の観測地評価に採用しています。数字が小さいほど暗く、天の川ははっきり見えます。スマホ固定撮影で天の川の帯を写したいなら、経験則として Bortle 4 以下(郊外〜田舎レベル)が現実的なラインになります。
出典: DarkSky International「The Night Sky and You」
2-3. 街明かりを「視界」に入れない
撮影地に着いたら、スマホを空に向けたときに街灯・自販機・車のヘッドライトが画角外の視界に入らない向きを選びます。環境省は光害対策の考え方として「漏れ光といわれる不必要な部分の光を少なくし、本当に必要な場所を効率よく明るくしよう」と述べており、これは撮影者側から見れば「余計な光源が空を照らしていない向きを選べ」と言い換えられます。
出典: 環境省「星空を見よう|光害について」(「漏れ光といわれる不必要な部分の光を少なくし、本当に必要な場所を効率よく明るくしよう」)
③ 何を持っていく?|スマホ固定撮影の最小機材
3-1. 三脚(必須)
Google 公式ヘルプは Pixel の Astrophotography モードについて「Point your phone at the sky and set it down in a steady place, like a stand or tripod. Do not use your hands.」と、手持ちを明確に禁止しています。Apple 公式も iPhone の Night mode に対して「Place your iPhone on a solid and secure surface, or use a tripod to increase stability and control of the exposure clarity.」と推奨しています。
出典: Google Pixel Camera Help「Take photos in low light or at night」および Apple Support「Use Night mode on your iPhone」
3-2. Bluetooth リモートシャッター(推奨)
三脚に載せてもシャッターを指で押すと、その瞬間の振動が数秒単位のブレになります。Bluetooth リモコンかセルフタイマー(3〜10 秒)で「触らずに撮る」のが原則。Google のヘルプにも「Keep the phone still until the photo is complete」と、撮影中の静置を強く求める記述があります。
出典: Google Pixel Camera Help「Take photos in low light or at night」("Keep the phone still until the photo is complete")
3-3. モバイルバッテリー
Pixel の Astrophotography は 1 枚あたり最大約 4 分の露光(後述)を行い、スタッキング処理でさらに電力を消費します。Galaxy S 系の Expert RAW も長時間露光と 16bit DNG 保存で電池を食います。予備電源は必須装備です。
出典: Google Research Blog「Astrophotography with Night Sight on Pixel Phones」(総露光時間の記述)および Samsung「Professional Photography with Galaxy Expert RAW App」(Linear DNG 16bit 保存)
3-4. 星座アプリ(構図決めに 1 本)
暗い現地で夏の大三角と天の川の位置を確認するのに、AR で空にかざすとその方角の星座を重ねてくれる planetarium アプリが役立ちます。Star Walk 2 公式は自機能について「Point your device at the sky to see the real-time positions of stars, planets, and other celestial objects above you.」と説明しており、時刻を送って構図の予行演習をする Time Machine 機能も内蔵しています。
出典: Vito Technology「Star Walk 2」公式
3-5. 防寒・防露・レンズ拭き
夏でも山間部は明け方に急冷し、スマホのレンズ面に露が降ります。マイクロファイバークロスで拭き取るだけで解決しますが、Google 公式ヘルプの Astrophotography 節にも「If it's windy, move your device closer to the ground or shield your device from the wind.」と、風と環境要因への配慮が明記されています。
出典: Google Pixel Camera Help「Take photos in low light or at night」("If it's windy, move your device closer to the ground or shield your device from the wind.")
④ iPhone 編|Night mode で天の川を撮る設定
4-1. Night mode の基本挙動
Apple 公式サポート(記事 102519)は Night mode について「When you take a photo in Night mode, a number appears next to the Night mode icon to indicate how long the shot will take.」「Your iPhone sets the exposure time automatically.」と説明しています。暗さに応じて iPhone が自動的に Night mode を有効化し、必要な秒数を提示してきます。
出典: Apple Support「Use Night mode on your iPhone」
4-2. 露光時間の手動延長(Max スライダー)
同ページは「You can adjust the exposure time by tapping the Night mode button, then use the slider above the shutter button to choose Max, which extends the capture time.」と、シャッター上のスライダーで露光を最大値まで延長できる仕組みを説明しています。天の川のような暗い被写体では、この Max 側に振るのが基本手順です。
出典: Apple Support「Use Night mode on your iPhone」
4-3. 三脚固定時の効果
Apple は「Try placing your iPhone on a solid and secure surface, or use a tripod to increase stability and control of the exposure clarity.」と、三脚使用時に露光時間の長い側の選択肢が広がることを示唆しています。手持ち時の Night mode は数秒までしか伸びないため、天の川を狙うなら三脚固定 → Max スライダーの手順が事実上の標準です。
出典: Apple Support「Use Night mode on your iPhone」
4-4. iPhone 側の設定チェックリスト
| 項目 | 設定 | 理由 |
|---|---|---|
| Night mode | 自動オン(アイコン黄色) | 暗所で自動有効化。手動でオンにも切替可 |
| 露光時間 | スライダーで Max | Apple 公式手順(4-2) |
| タイマー | 3 秒以上 | シャッター押下時のブレ回避 |
| ライブフォト | オフ | Night mode 中は自動オフになるが確認しておく |
| フォーカス | 明るい星をタップ/無限遠側 | 星が点像に写る合焦を人間側で確認 |
⑤ Pixel 編|Night Sight Astrophotography を使う設定
5-1. モードを起こす(自動と手動の 2 通り)
Google 公式ヘルプは、Pixel を暗い場所で三脚に載せて Night Sight を開くと自動的に Astrophotography モードへ切り替わると案内しています。手動で立ち上げる場合は「tap Night Sight, tap the controls icon in the bottom right corner, swipe the Night Sight control slider to Astro」と述べ、その後「Your phone will start a 5 second timer, which allows you to place your phone down on a steady surface facing the sky.」と補足されています。
出典: Google Pixel Camera Help「Take photos in low light or at night」
5-2. ズーム条件(1x 以上)
同ヘルプは Pixel 4a (5G) 以降について「astrophotography only works on zoom settings equal to or greater than 1x.」と明記しており、超広角側では動作しない機種があります。まず 1x で構図を組み、必要に応じて広い範囲を捉える運用が現実的です。
出典: Google Pixel Camera Help「Take photos in low light or at night」("astrophotography only works on zoom settings equal to or greater than 1x.")
5-3. 中で何が起きているか(16 秒 × 15 枚のスタック)
Google Research の解説記事は、Night Sight Astrophotography の内部処理を具体的に公開しています。「Taking pictures of real night skies we found that the per-frame exposure time should not exceed 16 seconds.」──1 枚あたり 16 秒を超えると星が点像でなくなるためこの値に上限を置き、「We limited a single Night Sight image to at most 15 frames with up to 16 seconds per frame.」──最大 15 枚をスタックする、と述べています。結果として 1 枚の撮影に「often around four minutes」を要します。
出典: Google Research Blog「Astrophotography with Night Sight on Pixel Phones」
5-4. ノイズ処理(ホットピクセルと熱ノイズ)
同記事は長秒撮影の障害物を具体的に説明しています。「Warm and hot pixels can be identified by comparing the values of neighboring pixels within the same frame and across the sequence of frames recorded for a photo, and looking for outliers. Once an outlier has been detected, it is concealed by replacing its value with the average of its neighbors.」──ホットピクセルを近傍値との比較で検出し、隣接値の平均で置換する。「Dark current causes CMOS image sensors to record a spurious signal…The effect is negligible when exposure times are short, but it becomes significant with multi-second captures.」──長秒露光ではダーク電流(熱ノイズ)が無視できない、と示しています。センサー温度が高い夜は不利、というのはここに起因します。
出典: Google Research Blog「Astrophotography with Night Sight on Pixel Phones」
5-5. 撮影中の運用(風・振動)
Google ヘルプは「If it's windy, move your device closer to the ground or shield your device from the wind.」──風の影響を受けるようなら地面近くに下げる、風よけを立てる、と明示しています。約 4 分の間ずっと 1 枚の露光をしている、という自覚が Astro mode 成功の第一歩です。
出典: Google Pixel Camera Help「Take photos in low light or at night」
⑥ Galaxy 編|Expert RAW と Astrophoto mode
6-1. Expert RAW とは(Galaxy Store から追加)
Samsung UK の Expert RAW 公式ページは「The Expert RAW app can be downloaded from the Galaxy Store」「available on Galaxy S20 or later models」と、対応機種と入手経路を明示しています。撮影時は「you can shoot more professionally by taking direct control of the camera's settings, such as ISO, shutter speed, white balance, exposure, and focus.」──ISO・シャッター・ホワイトバランス・露出・フォーカスを手動でコントロールできる、と説明されています。
出典: Samsung UK「Professional Photography with Galaxy Expert RAW App」
6-2. Astrophoto mode の使い方(Sky Guide 併用)
同ページの Astrophoto 節は「Choose the Astrophotography mode and adjust the focus, white balance, and exposure time to capture the night sky.」──フォーカス・WB・露光時間を調整して夜空を撮る、と述べます。さらに「If you select the Sky Guide option, a constellations guide is displayed.」──Sky Guide を有効にすると星座ガイドが画面に重なる、と明示されており、方角合わせが簡単になります。
出典: Samsung UK「Professional Photography with Galaxy Expert RAW App」
6-3. RAW(Linear DNG 16bit)で残す
公式は保存形式について「both JPEG files and RAW (Linear DNG 16-bit) files are saved」「RAW files retain the original uncompressed image data from the camera sensor, so you can edit the result in more detail in the post-editing app.」と明記します。天の川のように淡いコントラスト差を後から引き出すのが目的なら、DNG 保存は必ずオンにしておくべき機能です。
出典: Samsung UK「Professional Photography with Galaxy Expert RAW App」
6-4. Astrophotography 対応機種
Samsung UK 公式は「Astrophotography and multiple exposure modes are supported on S23 series and S22 series (T OS) devices.」と、Astrophotography モード対応機種を S23 系および T OS(Android 13 世代)を導入した S22 系に絞って案内しています。S21 以前で Expert RAW を入れても Astrophotography モードのアイコンが出ない場合はこの制約が原因です。
出典: Samsung UK「Professional Photography with Galaxy Expert RAW App」
⑦ 撮影テクニック|露光時間・構図・ピント
7-1. 「1 枚 16 秒」の物理的理由
「なぜスマホの Astro モードは 1 フレーム 16 秒に上限が張られているのか」の根拠は Google Research にあります。彼らは実測から「the per-frame exposure time should not exceed 16 seconds」と結論し、それを超えると「motion-blurred stars that look like short line segments look wrong」──星が短い線分状に流れて写ってしまう、と説明しています。これはスマホに限らず、地上の三脚に固定した任意のカメラが直面する物理制約です。
背景にあるのは地球の自転です。国立天文台暦計算室は「地球は 1 日で約 1 回転=360°、1 時間で約 15°回転します。恒星時も 1 日で約 1 回転=360°、1 時間で約 15°回転します。」と定義しています。仰角の高い方角ほど 16 秒でも動きが目立つため、Google の 16 秒はやや安全側の値と理解できます。
出典: Google Research Blog「Astrophotography with Night Sight on Pixel Phones」および 国立天文台暦計算室「暦Wiki/恒星時」
7-2. Pro モード(手動露光)を使う場合の目安
Galaxy Expert RAW や、iPhone 側でサードパーティのマニュアル露光アプリを使う場合、「1 枚 10〜15 秒 × 数枚を撮って後で比較明合成する」構成が現実的です。Google Research の 16 秒はスマホ広角レンズの実測を反映した上限であり、超広角ではもう少し伸ばせても、標準〜望遠寄りでは短めに刻む必要があります(撮影界で古くから知られる目安として「500 を焦点距離で割った秒数以下」というガイドラインも存在しますが、あくまで補助的な暗算式です)。
出典: Google Research Blog「Astrophotography with Night Sight on Pixel Phones」("the per-frame exposure time should not exceed 16 seconds")
7-3. ピント合わせ(明るい星/地上の遠景)
スマホのオートフォーカスは真っ暗な夜空だと迷います。iPhone Night mode の手順書には「Tap the area of the frame you want to focus on」──合焦させたい場所をタップする、という基本挙動が示されており、これは Night mode でも同じです。実運用としては、画面に映る明るい星や、遠くの街明かり、月(出ていれば)をタップし、そのフレーミングを保ったまま本番構図に振り直します。
出典: Apple Support「Use Night mode on your iPhone」(フォーカス指定の基本挙動)
7-4. 構図:地上を 1/3 入れる
天の川だけを画面いっぱいにすると、スケール感が失われて「淡い雲」に見えてしまうことがあります。国立天文台 7 月号が示すように、夏の大三角と天の川は空高くから南に流れる位置関係にあります。地平線側に山・木・建物のシルエットを 1/3 ほど入れる構図にすると、天の川の位置と流れが一目でわかる 1 枚になります。
出典: 国立天文台「東京の星空・カレンダー・惑星(2026年7月)」の天の川と夏の大三角の位置関係の記述
7-5. スマホ 3 機種の Astro モード仕様比較
| 項目 | iPhone Night mode | Pixel Astrophotography | Galaxy Expert RAW Astrophoto |
|---|---|---|---|
| 露光時間の上限 | スライダー「Max」まで自動延長(公式は具体秒数を非公開) | 最大 15 フレーム × 各 16 秒(合計約 4 分) | 手動指定(Expert RAW でシャッター速度を選択) |
| RAW 保存 | 対応(Apple ProRAW 対応機のみ) | 機種による | Linear DNG 16bit を JPEG と同時保存 |
| 星座ガイド | 別アプリ(Star Walk 2 等)で補助 | 別アプリで補助 | Sky Guide をアプリ内で表示 |
| 三脚必須度 | 推奨("solid and secure surface, or use a tripod") | 実質必須("Do not use your hands") | 必須(手動長秒撮影のため) |
| 対応制約 | Night mode 対応 iPhone のみ | Pixel 4a (5G) 以降はズーム 1x 以上のみ | Astrophoto は S23 系・S22 系(T OS)で対応 |
出典: 上記表の全項目は Apple Support「Use Night mode on your iPhone」、Google Pixel Camera Help、Google Research Blog、Samsung UK 公式 に基づく
⑧ 現像・仕上げのコツ
8-1. RAW が正義
Galaxy Expert RAW の説明は端的です。「RAW files retain the original uncompressed image data from the camera sensor, so you can edit the result in more detail in the post-editing app.」──非圧縮のセンサーデータを保持しているため、後編集で細部を引き出せる。天の川撮影の面白さは現像作業にも半分あります。
出典: Samsung UK「Professional Photography with Galaxy Expert RAW App」
8-2. ハイライトを落とし、シャドウを持ち上げる
天の川は「淡い明るさが均一に広がっている」被写体です。彩度や明瞭度を最初に上げるのではなく、露光(Exposure)とシャドウ(Shadows)を先に整えます。ホワイトバランスは電球色〜昼光の間で天の川の色が最も自然に見える点を探ります。
8-3. Night Sight の絵作りが強すぎたら
Pixel の Night Sight は自動でトーンマップとノイズ除去を積んでいます。Google Research はこれを「aligned, compensating for both camera shake and in-scene motion, and then averaged」と説明しています。仕上がりが「作り込まれすぎ」と感じるときは、同じ夜に Pro カメラアプリで手動撮影した RAW と併用して仕上げるのが有効です。
出典: Google Research Blog「Astrophotography with Night Sight on Pixel Phones」
⑨ よくある失敗と対処
9-1. 空一面が赤〜黄色にかぶる
症状:写真の低空側が赤〜オレンジに強くかぶる。
原因:環境省が定義する漏れ光(光害)が地平線から立ち上っている。街灯・自販機・駐車場照明が視界のどこかにある。
対処:スマホの向きを 90〜180°変え、明かりの反対側を狙う。あるいは Bortle スケールでもう 1〜2 段暗い場所へ移動する。
出典: 環境省「星空を見よう|光害について」および DarkSky International「The Night Sky and You」
9-2. 星がすべて線状に流れる
症状:点像ではなく、短い線分に写る。
原因:1 フレームの露光時間が 16 秒より大幅に長い(Pro モードで手動指定した場合)、あるいは仰角が高い方角の焦点距離が長い。
対処:Google Research が示す 16 秒を上限として個別露光を刻み、あとから合成する。Pixel の Astro モードなら自動で処理される。
出典: Google Research Blog("the per-frame exposure time should not exceed 16 seconds")
9-3. Pixel Astrophotography モードが起動しない
症状:Night Sight は動くが、Astro に切り替わらない/シャッター表記が変わらない。
原因:①三脚に載っていない・スマホが揺れている、②環境光が明るすぎる、③Pixel 4a (5G) 以降で 0.5x(超広角)を選んでいる。
対処:三脚に固定 → 1x に戻す → 十分暗い場所へ移動。手動起動なら「controls → Astro スライダー」で強制的に入る。
出典: Google Pixel Camera Help「Take photos in low light or at night」(ズーム条件と手動起動手順)
9-4. 途中でスマホ画面が消える
症状:4 分の露光の途中で画面が暗くなり撮影が止まる。
原因:OS の自動ロック/画面オフ設定が短い。または電池残量が急落。
対処:自動ロックを一時的に「なし」または長め(3 分以上)にする。モバイルバッテリー給電に切り替える。撮影中は画面が消えないよう Google 公式も静置を求めている。
出典: Google Pixel Camera Help「Take photos in low light or at night」("Keep the phone still until the photo is complete")
9-5. 何をしても天の川が写らない(暗い場所なのに)
症状:Bortle 4 以下と思われる場所でも、写真に天の川が現れない。
原因:①月齢が新月から離れている、②天の川の位置が想定と違う(時刻・季節ずれ)、③レンズ表面に露や指紋がある。
対処:Star Walk 2 等の AR で天の川の実位置を確認、月齢と月の出時刻を国立天文台の暦で照合、マイクロファイバーでレンズを拭く。
出典: 国立天文台「東京の星空・カレンダー・惑星(2026年7月)」、同 FAQ「満月や新月の日を知るには」、Star Walk 2 公式
⑩ スマホの次に進みたい人へ|商品ページ・公式 LINE のご案内
スマホで天の川が「写った!」体験のあとは、たいてい 3 つの質問が出てきます。「もっと星の色を出したい」「銀河の腕まで見たい」「動画(電視観望)でリアルタイムに見たい」。ここまで来ると、地上機材はスマホから天体撮影用の CMOS カメラ + 望遠鏡に置き換わっていきます。天の川撮影の入口として弊社でお勧めしているのが、SONY 製 CMOS を積んだ ZWO ASI585MC Pro です。
10-1. ZWO ASI585MC Pro のポジション
ZWO 公式ページによれば ASI585MC Pro は「1/1.2" format」「2.9μm pixels」「3840×2160 (8.29MP)」「4k SONY CMOS sensor」「the QE peak value of ASI585 is 91%」の仕様で、さらに「Two-stage TEC cooling」で「lower the CMOS sensor temperature to more than 35 degrees Celsius below ambient temperature」──外気温より 35℃以上低くまで冷却できる、と明示されています。スマホの露光 16 秒制限を「ダーク電流を冷却で抑える」設計思想でクリアしていく方向のカメラです。
出典: ZWO 公式「ASI585MC/MM Pro」製品ページ
10-2. 保証について(弊社取扱条件)
ZWO 純正の保証("2-year free warranty service")に加え、弊社では独自の初期不良 60 日 + 3 年保証をお付けしています。天体機材は屋外運用が中心で、購入後の相談件数がそもそも多い機材群です。困ったときの窓口が明確な販売店を選ぶことは、機材選び本体と同じくらい大切です。
出典: ZWO 公式「ASI585MC/MM Pro」製品ページ("2-year free warranty service" の記載)
10-3. 関連商品
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最終更新: 2026-07-29/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は Apple・Google・Samsung の各公式サポート、Google Research Blog、国立天文台、環境省、DarkSky International、ZWO 公式製品ページの一次情報に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。
FAQ|スマホ天の川撮影のよくある質問
Q1. iPhone の Night mode は何秒まで露光できますか?
Apple 公式サポートは Night mode の具体的な最大秒数を明示していません。ページ上は「You can adjust the exposure time by tapping the Night mode button, then use the slider above the shutter button to choose Max」と、シャッター上のスライダーで Max まで延ばせると案内されており、実機の状況(三脚・環境光・iPhone のモデル)によって実際に選べる最大秒数が変わります。(Apple Support「Use Night mode on your iPhone」)
Q2. Pixel の Astrophotography モードで 1 枚あたり何分かかりますか?
Google Research の解説は「often around four minutes」と、およそ 4 分と説明しています。内部処理としては 1 フレーム最大 16 秒 × 最大 15 フレームをスタックする構成です。(Google Research Blog)
Q3. Galaxy S21 で Expert RAW を入れましたが、Astrophotography が選べません。
Samsung UK 公式が「Astrophotography and multiple exposure modes are supported on S23 series and S22 series (T OS) devices.」と対応機種を限定しているためです。S21 以前では Expert RAW 自体は利用できますが、Astrophotography モードのアイコンは表示されません。(Samsung UK 公式)
Q4. 月が出ていても天の川は撮れますか?
技術的には撮れますが、コントラストが下がって淡い部分が消えます。国立天文台 FAQ が示す通り月の満ち欠けの周期は約 29.5 日で、新月から満月まで約 15 日。新月前後 ±3 日、あるいは月が沈んだ後の時間帯を選ぶのが実質的な条件になります。(国立天文台 FAQ「満月や新月の日を知るには」)
Q5. どれくらい暗い場所なら天の川が写りますか?
絶対的な閾値は存在しませんが、DarkSky International が採用する Bortle スケール(9 段階)で、経験則として 4 以下(郊外〜田舎)ならスマホの Astro モードで天の川の帯が識別できます。都市部(同スケール 8〜9)では、街明かりの向こう側に隠れます。(DarkSky International)
Q6. どの時期でも天の川は撮れますか?
「天の川そのもの」は年中見えますが、いちばん明るく賑やかな中心部(いて座方向)が夜空に昇るのは 6〜9 月の夜間で、いわゆる「夏の天の川」と呼ばれる時期です。国立天文台の月別カレンダーで夏の大三角の位置を確認し、狙いの日を決めます。(国立天文台「東京の星空・カレンダー・惑星(2026年7月)」)
Q7. スマホで撮った天の川と、天体撮影用カメラで撮った天の川は何が違いますか?
センサー面積・冷却の有無・保存ビット深度が主な差です。ZWO ASI585MC Pro は 1/1.2" の 8.29MP、2 段 TEC 冷却で外気温より 35℃以上下げられ、QE ピーク 91% と公式が明記しています。長秒露光時の熱ノイズ抑制と光電変換効率の差が、天の川の淡い構造の再現度に効いてきます。(ZWO 公式「ASI585MC/MM Pro」製品ページ)
参考にした一次情報
- Google Pixel Camera Help「Take photos in low light or at night on your Pixel phone or tablet」(Astrophotography モードの起動条件・ズーム条件・撮影中の運用)
- Apple Support「Use Night mode on your iPhone」(Night mode の自動化条件・Max スライダー・三脚使用の効果)
- Samsung UK「Professional Photography with Galaxy Expert RAW App」(Astrophoto mode / Sky Guide / DNG 16bit / 対応機種)
- Google Research Blog「Astrophotography with Night Sight on Pixel Phones」(1 フレーム 16 秒上限・15 フレームスタック・ダーク電流の記述)
- 国立天文台「東京の星空・カレンダー・惑星(2026年7月)」(夏の大三角・天の川の位置・月齢カレンダー)
- 環境省「星空を見よう|光害について」(光害の定義・対策方針)
- ZWO 公式「ASI585MC/MM Pro」製品ページ(センサー・ピクセル・QE・冷却・保証)
- 国立天文台 FAQ「満月や新月の日を知るには」(朔望月 約 29.5 日)
- 国立天文台暦計算室「暦Wiki/恒星時」(地球 1 時間 = 約 15°自転)
- Vito Technology「Star Walk 2」公式(AR モード・Time Machine 機能)
- DarkSky International「The Night Sky and You」(Bortle 9 段階スケール)
- 国立天文台 FAQ「「月齢」ってなに?」(月齢の定義)
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最終更新: 2026-07-29/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は Apple・Google・Samsung の各公式サポート、Google Research Blog、国立天文台、環境省、DarkSky International、ZWO 公式製品ページの一次情報に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。