アスカー Askar 80ED 80mm 鏡筒で起きやすいトラブルと困りごと|公式マニュアル準拠の切り分けフロー

アスカー Askar 80ED 80mm 鏡筒で起きやすいトラブルと困りごと|公式マニュアル準拠の切り分けフロー

Askar 80ED(口径 80mm/焦点距離 560mm/F7・ED ダブレット)は、軽量・短焦点・Vixen ダブテール標準装備の入門〜中堅向け屈折鏡筒です。本記事は、公式マニュアル(Sharpstar Optical 発行・全 9 ページ)と Sharpstar 公式 80ED 製品ページ・80ED Imaging Accessories ページの一次情報のみを根拠に、開封から撮影運用まで起きやすい困りごとを 30 原因にわたって切り分けます。ピントが合わない・補正レンズの選定・EAF 取付・大型センサー使用時の周辺像など、現場で迷いやすい論点を「症状/原因/対処/出典」の 4 行フォーマットで整理しています。

① まず確認したいこと(届いた直後の共通チェック)

原因 1|同梱物が足りないように見える

症状:箱を開けたとき、足りないアイテムがあるように感じる。
原因:Askar 80ED の標準同梱は OTA 本体・チューブリング 1 対・ハンドル・200mm Vixen ダブテール・保証書・チェックリスト・マニュアルの 7 点。専用キャリングケースや 1.25" 接眼レンズ・天頂プリズム・EAF・補正レンズはいずれも別売です。
対処:マニュアル §Specifications の Accessories 欄と、同梱の Check list を照合してください。不足があれば購入元の販売店に保証書とともに連絡します。

出典: Askar 80ED User's Manual §Specifications, §Items in 80ED Packaging(80ED OTA, a pair of tube rings, a handle, a dovetail plate, an Warranty card, an Check list, a manual の 7 点)

原因 2|想定より鏡筒が長く感じる/短く感じる

症状:レビュー記事と全長が違って見える。
原因:80ED の全長は、フード収納時 404mm/フード展開時 505mm の 2 種を公式に明記しています(マニュアル §Specifications)。レンズフードは反転収納できる構造のため、展開・収納で見た目の長さが約 100mm 変わります。
対処:収納時のケース寸法・三脚搭載時のクリアランスは、フード展開時 505mm を基準に確保してください。

出典: Askar 80ED User's Manual §Specifications, §Mechanism Instruction ⑴①(Total length:404mm/505mm・lens hood is retractable)

原因 3|保証書とシリアル番号の扱いがわからない

症状:同梱の Warranty card と、シリアル番号の関係が掴めない。
原因:Askar 80ED は鏡筒対物部のネームリングに製品シリアル番号が刻印されており、これと Warranty card・Check list を組み合わせて販売店・修理時の本人確認に使います(マニュアル §Mechanism Instruction ⑴②)。Sharpstar 公式サイトには具体的な保証年数の記載はなく、保証窓口は正規ディーラー個別対応の運用です。
対処:開封時に Warranty card に販売店記入欄を埋め、対物のシリアル番号と一緒に写真で保管しておくとスムーズです。弊社でお買い上げの場合は、弊社独自の初期不良 60 日+3 年保証で対応します。

出典: Askar 80ED User's Manual §Mechanism ⑴②(name ring and product serial number for enhanced identification)/Astronomy Plus 保証ページ(公式は good condition guarantee のみ・詳細は販売代理店対応)

② ピント・フォーカサーまわり

原因 4|ピントノブが空転してドロー管が動かない

症状:粗動ノブ・微動ノブを回しても、ドロー管がほとんど移動しない。
原因:2 インチ デュアルスピード ラックアンドピニオン フォーカサー(トラベル 7cm)には大型ロックネジが付いており、これが締まっているとドロー管はロックされた状態になります(マニュアル §Mechanism Instruction ⑸)。
対処:大型ロックネジを反時計回りに緩めてから粗動ノブを回してください。締めて固定するのは、構図と仮ピントが決まった後にする運用が安全です。

出典: Askar 80ED User's Manual §Mechanism ⑸(dual-speed rack-and-pinion 2-inch focuser・travel 7cm・enlarged locking screw)

原因 5|重いカメラを載せたら撮影中にピントがズレる

症状:長時間露出の間に星像が膨らみ、後半カットでピントがずれている。
原因:マニュアル §Locking Screw Position Diagram には、ロックスクリューが 5 か所示されており、② が Bottom Locking Screw、①③④⑤ が電動フォーカサー設置用のネジ穴です。Bottom Locking Screw を併用することで、高負荷下でもドロー管位置を維持できる構造になっています。
対処:ピントが追い込めたら Bottom Locking Screw(②)を軽く締めてドロー管をロックしてください。緩み過ぎ・締め過ぎを避け、初回は試写で動作を確認します。

出典: Askar 80ED User's Manual §The Locking Screw Position Diagram(② Bottom Locking Screw/①③④⑤ Can be used for electric focusing bracket installation)

原因 6|微動ノブで星のピントが追い込み切れない

症状:微動ノブを回しても星像が膨らんだまま、ベストピントの位置が掴みづらい。
原因:デュアルスピード機構はあるものの、手回しの 10:1 微動ではバーティノフマスクなどの補助なしに完璧なピント位置を視覚的に取るのは困難です。
対処:① バーティノフマスクで光条の対称を取る、② ASIAIR などのオートフォーカス機能を併用する、の 2 通りを推奨します。電動フォーカスを使う場合は次節の EAF 取付手順に従ってください。

出典: Askar 80ED User's Manual §Mechanism ⑸, §Steps of Installing EAF(dual-speed coarse and fine focusing・additional screw holes are available for installing the electronic focuser)

原因 7|ドロー管が左右にガタつく

症状:ドロー管を手で軽く揺すると、明らかな横方向のガタがある。
原因:ラックアンドピニオン式フォーカサーは、ドロー管とラックの噛み合い・押さえテンションが甘いと横ガタが出やすい構造です。マニュアル本体にはユーザー側でのテンション調整手順の具体的記載はありません。
対処:ガタが撮影に影響するレベルであれば、Sharpstar 公式サポート(support@sharpstar-optics.com)または購入店に修理・調整を相談してください。弊社でお買い上げの場合は、弊社独自の初期不良 60 日+3 年保証で対応します。

出典: Sharpstar 公式サイト サポート窓口(support@sharpstar-optics.com)/User's Manual §Mechanism ⑸(focuser テンション調整手順はマニュアル非掲載)

③ EAF(電子フォーカサー)取付

原因 8|EAF を装着したいが、どこから手を付ければよいか分からない

症状:マニュアル p.7 の図解だけでは順序が掴みづらい。
原因:マニュアル §Steps of Installing EAF は 7 ステップ構成で、サムスクリュー・粗動ノブの取り外し →モーターブラケット仮置き → フレキシブルカップリング選定 → EAF 挿入 → 各ネジ締結、の順序が決まっています。
対処:下表 7 ステップを順守してください。粗動ノブを外す際は 2mm 六角レンチ が必要です。

ステップ 手順
サムスクリュー(thumb screw)を外す
2mm 六角レンチで粗動ノブ(coarse adjustment knob)を外す
モーターブラケットを置き、標準 M4 ネジを示された穴にねじ込む(まだ固定しない)
5–6mm 適合のフレキシブルカップリングを選び、カップリング側のスクリューを締める
EAF(オプション)をフレキシブルカップリングに挿入し、カップリング端のロックネジを締める
EAF マウントネジを締める
最後に M4 固定ネジを締める

出典: Askar 80ED User's Manual §Steps of Installing EAF, p.7(① Remove the thumb screw ② Remove the coarse adjustment knob with a 2mm wrench ③〜⑦)

原因 9|フレキシブルカップリングのサイズが合わない

症状:用意したカップリングが粗動軸(コース軸)にきっちり嵌まらない。
原因:マニュアル §Steps of Installing EAF ④ で「Choose the 5-6mm flexible coupling」と指定されており、80ED 用は 5〜6mm 径のカップリングが対応サイズです。
対処:EAF 同梱/別売のカップリングセットから 5mm または 6mm 径を選んでください。世代の異なる EAF(EAF 標準/EAF Pro/EAFN)でカップリング側の径が異なるため、購入時に EAF 本体のシャフト径も併せてご確認ください。

出典: Askar 80ED User's Manual §Steps of Installing EAF ④(Choose the 5-6mm flexible coupling and lock this screw)

原因 10|EAF 取付後にピント可動量が減ったように感じる

症状:EAF 装着後、フォーカサーのトラベル量が短くなったように感じる。
原因:80ED のフォーカサー設計上のトラベル長は 7cm(マニュアル §Mechanism ⑸)です。EAF 自体はモーター駆動を担うだけで、機械的トラベル長を物理的に削るわけではありません。
対処:ピント可動量が短く感じる場合は、補正レンズ(55mm BF)+カメラ位置のセッティングを再確認してください。BF が大きく外れているとピント面がフォーカサー可動範囲の端に張り付き、可動余裕が消えます。

出典: Askar 80ED User's Manual §Mechanism ⑸(travel length 7cm)/公式 80ED Imaging Accessories(Back focus 55mm)

原因 11|EAF を外して手動操作に戻したい

症状:EAF を別の鏡筒に流用したい・故障切り分けで手動に戻したい。
原因:マニュアル §Steps of Installing EAF の手順は可逆で、取り外しは ⑦ → ① の逆順で行うことができます。粗動ノブを取り外していたため、再装着には 2mm 六角レンチが必要です。
対処:EAF マウントネジ(⑦)→ カップリング端ロック(⑤)→ M4 ネジ(③)→ 粗動ノブ(②)→ サムスクリュー(①)の順で戻してください。粗動ノブの取り付け向きはマニュアル §Product Parts and the Size Diagram を参照します。

出典: Askar 80ED User's Manual §Steps of Installing EAF, §Product Parts and the Size Diagram(粗動ノブの取り付け位置と寸法)

④ バックフォーカスと補正レンズ

原因 12|補正レンズを使うと周辺像が崩れる

症状:フラットナーまたはリデューサを入れたのに、星像が周辺で楕円化する。
原因:80ED 用の補正レンズ 3 種(1.0x フラットナー/0.85x リデューサ/0.7x リデューサ)はいずれも M48 オスねじの基面から 55mm バックフォーカス が必達条件です。1mm でも前後すると周辺像が破綻し始めます(公式 80ED Imaging Accessories ページ)。
対処:カメラのセンサーまでの距離を、M48 オスねじ基面 + 延長アダプター + フィルタードロアー + カメラのバックフォーカス(一般的に 17.5mm のセンサー前距離が多い)の合計で 55.0mm ピッタリに合わせてください。フィルター挿入によるガラス厚補正(厚み × 1/3 の延長)も必要です。

出典: Sharpstar 公式 80ED Imaging Accessories(Back focus: 55mm from the base of M48 male thread / 1.0x flattener, 0.85x reducer, 0.7x reducer 共通)/Astromaniac Magazine レビュー(Maintain the recommended 55mm backfocus from the M48 thread when using flatteners/reducers)

原因 13|どの補正レンズを選べばよいか分からない

症状:1.0x/0.85x/0.7x のどれが自分の用途に合うか判断できない。
原因:3 種は焦点距離・F 値・対応イメージサークル・重量で使い分ける設計です。
対処:下表で比較してください。1.0x はオートガイド精度に余裕のあるシステムで「視野そのまま・解像優先」、0.85x は「視野を 1.18 倍に広げつつ APS-C 周辺像補正」、0.7x は「F4.9 で露出短縮、淡い対象に強い」用途です。

補正レンズ 合成焦点距離 合成 F 値 バックフォーカス ねじ規格 重量 レンズ構成
1.0x フラットナー 560mm f/7 55mm M54×0.75 / M48×0.75 0.42kg トリプレット(ED 1 枚含む)
0.85x リデューサ 476mm f/5.9 55mm M54×0.75 / M48×0.75 0.44kg トリプレット(ED 1 枚含む)
0.7x リデューサ 392mm f/4.9 55mm M54×0.75 / M48×0.75 0.32kg トリプレット(ED 1 枚含む)

3 種とも 360° 回転機構(rotator)を内蔵し、対応イメージサークルは APS-C(フルフレーム対応)と公式に明記されています。

出典: Sharpstar 公式 80ED Imaging Accessories(各補正レンズの全仕様)/Telescopes Canada 公式仕様コピー(focal length / focal ratio / back focus / thread / image circle / weight)

原因 14|カメラのバックフォーカス計算が合わない

症状:カメラとアダプタ厚を足しても 55mm にならない。
原因:補正レンズの 55mm は M48 オスねじの基面(base of M48 male thread)からセンサー面までの距離です。多くの天体用 CMOS カメラ(例: ZWO Cooled)はセンサー面から M42/M48 ねじ面まで 17.5mm 前後となっており、ここに延長リング・フィルタードロアー・OAG の厚みを積み増していきます。
対処:「M48 基面 → アダプタ →(フィルタードロアー)→(OAG)→ カメラ M48 ねじ面 →カメラ内部 17.5mm = 55mm 合計」で電卓計算してください。フィルター(標準厚 2mm)を入れる場合は、厚み × 約 1/3 の延長を足します。

出典: Sharpstar 公式 80ED Imaging Accessories(Back focus 55mm from the base of M48 male thread)/User's Manual §Imaging mode 図(Astronomical Camera Back Focus of 17.5mm + Attached Equipment Connection Length 37.5mm の合計設計)

原因 15|M48 ↔ M54 アダプタの選定で迷う

症状:補正レンズに M54×0.75 と M48×0.75 の両規格があり、どちらを使えばよいか判断できない。
原因:80ED 用補正レンズは M54 オス側を鏡筒側に、M48 オス側をカメラ側に向ける向きが基本構成です(公式仕様 Thread type: M54×0.75 / M48×0.75)。
対処:鏡筒の 2 インチ後部アダプターから M54 接続にする場合は、別途 2"→M54 アダプタ/延長リングが必要です。M48 側はカメラまでの間に延長リング・フィルタードロアー・OAG をスタックします。

出典: Sharpstar 公式 80ED Imaging Accessories(Thread type: M54×0.75 / M48×0.75)/User's Manual §Specifications(Rear-end thread type:2" adapter)

原因 16|360° 回転機構の使い方がわからない

症状:構図を回転させたいが、鏡筒自体は回すと配線が捻れてしまう。
原因:80ED 用補正レンズは 3 種すべて 360° rotator を内蔵しており、補正レンズ部分だけを回して構図回転が可能です。
対処:補正レンズ側の回転ロックを緩めて構図を合わせ、撮影前に再ロックしてください。鏡筒のロックネジは触らないため、ファインダー・ガイドスコープの向きは保持されます。

出典: User's Manual §Accessories Instruction(each featuring a built-in 360° rotator)/公式 80ED Imaging Accessories

⑤ マウント・搭載・ガイド

原因 17|赤道儀のクラスがわからない

症状:どの赤道儀に載せれば撮影に耐えるか判断できない。
原因:80ED の OTA 単体重量は 1.7kg、チューブリング・ダブテール込みの総重量は 2kg。これにカメラ・補正レンズ・ガイドスコープ・OAG・電装を加えると、撮影時の合計は概ね 3.5〜5kg のレンジになります。Astromaniac Magazine のレビューでは「ZWO AM3N、Star Adventurer GTi」クラスの小〜中型赤道儀が良マッチと評価されています。
対処:赤道儀の撮影耐荷重(公称ペイロードの半分が目安)が撮影時合計重量を上回ることを確認してから組み合わせてください。

出典: User's Manual §Specifications(OTA weight 1.7kg / Total weight 2kg)/Astromaniac Magazine レビュー(推奨マウントとして ZWO AM3N / Star Adventurer GTi を提示)

原因 18|200mm Vixen ダブテールでバランスが取れない

症状:カメラ搭載後、ダブテールのスライド余裕が足りない/合わない。
原因:同梱ダブテールは 200mm の Vixen 規格。チューブリングはサムスクリュー固定で前後位置を調整できる設計です(マニュアル §Mechanism ⑵⑶)。
対処:チューブリングのサムスクリューを緩めてリング位置を前後に動かし、バランス点を探ってください。それでもバランスが取りきれない場合は、より長い 300mm 級 Vixen ダブテールに交換します(サードパーティ製で多数流通)。

出典: User's Manual §Mechanism ⑵⑶(tube ring is lightweight yet sturdy, equipped with thumb screws for easy use / 200mm standard Vixen-style dovetail plate is compatible with most equatorial mounts)

原因 19|ハンドルにファインダー/ガイドスコープを載せて良いか

症状:ハンドルにガイドスコープを載せて運用したい。
原因:ハンドルはスロット付き設計で、追加の天体機材をネジで固定できる仕様です(マニュアル §Mechanism ⑷)。ただしハンドル自体は搭載部品の本来用途であり、加重をかけ続けると鏡筒中心からのモーメントが大きくなりガイドへの影響が出やすくなります。
対処:軽量なファインダー・ガイドスコープであればハンドル上にマウント可能。重いシステムを載せる場合は、鏡筒両側に用意された dual finder base(マニュアル §Mechanism ⑹)を活用してください。

出典: User's Manual §Mechanism ⑷, ⑹(top handle has a slotted design, allowing additional astronomical equipment to be mounted via screws / dual finder bases at both sides of the lens tube)

原因 20|ファインダーを反対側に付け替えたい

症状:ファインダーの取付位置を左右で入れ替えたい。
原因:80ED は鏡筒両側にファインダーベースが標準装備されており、付け替え時に鏡筒を分解する必要がありません(マニュアル §Mechanism ⑹)。
対処:ファインダー側のロックスクリューを緩めてファインダーシューから引き抜き、反対側のベースに差し替えてロックネジを締めてください。

出典: User's Manual §Mechanism ⑹(dual finder bases at both sides of the lens tube, eliminating the need for disassembly when repositioning the finder scope)

⑥ 露結(dew)・温度順応

原因 21|撮影中に対物レンズが曇る

症状:明け方や湿度の高い夜、撮影中に対物レンズ表面が結露する。
原因:80ED の標準装備は反転収納式のレンズフードのみで、ヒーター付きデューシールド/ヒーターストリップは公式同梱物に含まれていません(マニュアル §Specifications, §Items in 80ED Packaging)。
対処:① レンズフードを必ず伸展状態(全長 505mm)で使う、② 結露が出る環境では別売のデューヒーターストリップを併用する、の 2 段構えが基本です。フードのみで対応できない湿度・気温の組み合わせは存在します。

出典: User's Manual §Specifications, §Mechanism ⑴①(lens hood is retractable・全長 404mm/505mm の 2 種)/Sharpstar 公式 80ED 製品ページ(ヒーター付き dew shield の標準同梱なし)

原因 22|室内から出してすぐ撮影すると星像が膨らむ

症状:撮影直後の星像が「呼吸」するように脈動・膨張する。
原因:レンズが室温と外気温の温度差を持つ間は、対物内のガラス温度勾配が空気密度を変化させて像を乱します(一般的な屈折鏡筒の温度順応問題)。Askar 80ED の公式マニュアルには温度順応時間の具体的記載はありません。
対処:夜間撮影では、屋外設置から最低 15〜30 分は温度順応を取ってからピント合わせを始めてください。ED ダブレットはトリプレットより順応が早い傾向ですが、外気温との差が大きい日(真冬・真夏)は時間を長めに取ります。

出典: 屈折鏡筒の温度順応に関する一般的知見(Askar 80ED 公式マニュアルには順応時間の明記なし。本記事は経験則として記載)/User's Manual §Instructions for use

原因 23|結露したレンズを拭いてよいか

症状:結露したまま放置するか、拭くか迷う。
原因:結露水を直接拭うと、粒子を巻き込んでコーティングを擦るリスクがあります。多くの場合、結露が原因なら撮影は一時中断するのが安全策です。
対処:① まずデューヒーターで結露を蒸発させる、② 蒸発しない場合は撮影セッションを終了し、屋内で完全乾燥させてから収納する。粒子付着が見えるときは「⑦ メンテナンス・クリーニング」のクリーニング手順で対応します。

出典: BBC Sky at Night Magazine 屈折対物クリーニング手順(粒子付着時のブロワー優先・ティッシュ後拭きの基本フロー)

⑦ 画質と像(周辺像・色収差)

原因 24|大型 APS-C 級センサーで明るい星周辺にハロー/放射状アーティファクトが出る

症状:ASI2600MC クラスの大型 APS-C センサーで撮影すると、明るい星の周辺に画面中央へ向かう暗いハローまたは放射状のアーティファクトが出る。
原因:Scope Trader の実機テスト記事では、3 種類の補正レンズ(1.0x/0.85x/0.7x)すべてとマルチナローバンドフィルタの組み合わせでこの現象が再現し、フィルタを外しても残ったため、主鏡(air-spaced doublet)光学系由来と特定されています。同テストで小型センサー(IMX585)使用時はより許容範囲との所見も示されています。
対処:影響を抑えるには、① 1 等星クラスの明るい星をフレーム端に置かないコンポジション、② 強い恒星から離れた対象を選ぶ、③ APS-C より小さい IMX585/IMX571 1.1 倍クロップ等のセンサー運用、を組み合わせます。光学系起因のため、撮像処理での完全除去は困難です。

出典: Scope Trader 実機テスト記事「Askar 80ED refractor tested with the ASI2600MC and ASI585MC」(dark halo or radial artifact that pointed toward the middle of the frame・all three correctors・smaller sensors like the IMX585 seem to work better)

原因 25|周辺像にコマ収差が残る

症状:四隅の星像が放射状に伸びる。
原因:素の F7 ダブレットでは周辺像にコマ収差が残ります。80ED は「APS-C 用に最適化、フルフレーム対応」と公式に記載がありますが、APS-C 周辺像の最適化はあくまで 専用補正レンズと併用したときです(マニュアル §Instructions for use, §Accessories Instruction)。
対処:撮影では 1.0x フラットナーまたはリデューサのいずれかを必ず装着し、かつ M48 基面から 55mm のバックフォーカスを厳守してください(原因 12 参照)。

出典: User's Manual §Instructions for use, §Accessories Instruction(specifically optimized for APS-C frame while also supporting full-frame imaging / All optimized for APS-C frame photography while supporting full-frame imaging)

原因 26|中央と周辺でピントが揃わない(チルト疑い)

症状:中央の星はシャープなのに、片側の隅だけ星が伸びる/フォーカスを再合わせしても直らない。
原因:センサー面と光軸の直交が崩れている(チルト)の典型症状です。80ED のフォーカサー後段で、補正レンズ・延長アダプタ・フィルタードロアー・OAG・カメラのスタックが長くなると、各接続のスレッド遊びが累積してチルトを生みます。
対処:① 各接続ねじを締め直してリトライ、② 改善しない場合は、サードパーティのチルトアジャスタ(M54-M48 仕様の汎用品など)を補正レンズとカメラの間に挟んで微調整します。鏡筒側のコリメーション(屈折鏡筒なので不要)ではなく、後段の機械精度が原因です。

出典: User's Manual §Imaging mode 図(Attached Equipment Connection Length 37.5mm の接続段数)/屈折鏡筒は構造上コリメーション不要(マニュアル本文に調整手順なし)

原因 27|月や明るい恒星にうっすら色収差が残る

症状:満月や 1 等星クラスの恒星に、薄い色付き縁が見える。
原因:80ED は ED ガラス 1 枚を含むダブレット設計(マニュアル §Instructions for use)で、フッ化カルシウム入りトリプレット APO ほど厳密ではなく、輝度の高い対象では微小な残存色収差が観察されることがあります。
対処:① UV/IR カットフィルタを併用する、② 月の撮影は短時間露出+多数コンポジット、で目立たなくできます。完全な APO 性能を求める場合は、より上位のトリプレット APO(Askar 75PHQ/80PHQ/103APO 等)の検討が選択肢になります。

出典: User's Manual §Instructions for use(two-element structure, consisting of one ED glass and one standard achromatic glass)

⑧ 関連商品|商品ページ・公式 LINE のご案内

本記事で取り上げた Askar 80ED 鏡筒・専用補正レンズ・連携機材のラインナップは、以下の商品ページからご覧いただけます。バックフォーカスや EAF 取付のご相談は、公式 LINE で個別に対応しています。

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最終更新: 2026-06-30/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は Askar 80ED 公式マニュアル(Sharpstar Optical 発行・全 9 ページ)と Sharpstar 公式 80ED 製品ページ・80ED Imaging Accessories ページ・BBC Sky at Night Magazine の屈折クリーニング手順・Scope Trader の実機テスト記事・Astromaniac Magazine レビューに基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。

⑨ メンテナンスと安全

原因 28|対物レンズが汚れたのでクリーニングしたい

症状:対物面に粒子・指紋・水滴跡が付着している。
原因:ED ガラスを含む対物レンズは、無理に拭くとコーティング微細傷・レンズセメント劣化のリスクがあります。
対処:BBC Sky at Night Magazine の手順を踏襲します。① ブロワー(ブラシを外したもの)で粒子を吹き飛ばす、② レンズティッシュにイソプロピルアルコール 2 滴を 染み込ませてから使う、③ 中心から外側へ拭く、④ 別のティッシュで残液を吸い取る、⑤ マイクロファイバの未使用部で軽くポリッシュ。アルコールを直接レンズに垂らさないこと(毛細管現象でセル内部に侵入し、レンズセメントを溶かすリスクが指摘されています)。

出典: BBC Sky at Night Magazine「How to clean a refractor telescope」(5 ステップ手順と Critical Warning「Never apply the fluid directly to the lens. Excess alcohol could end up inside the lens cell through capillary action and dissolve any lens cement」)

原因 29|後部の 2" アダプタ内側に擦り傷ができた

症状:2" 接眼レンズ・延長アダプタの抜き差しで、80ED 後部 2" アダプタ内側に擦り傷が見える。
原因:80ED 後部 2" アダプタの内側は 銅メッキ仕様で、接続機器を傷つけないよう配慮された設計です(マニュアル §Mechanism ⑺)。銅メッキは比較的柔らかく、メッキ側に擦り痕が付くことがあります。
対処:銅メッキの擦り痕は基本的に外観上の問題で、撮影性能には影響しません。光路への遮蔽・脱落片混入が懸念される深い剥がれであれば、購入店または Sharpstar 公式サポートに相談してください。

出典: User's Manual §Mechanism ⑺(rear of the 80ED is equipped with a 2-inch adapter with an internal copper-plated lining to prevent damage to connected devices)

原因 30|太陽を Askar 80ED で見たい

症状:昼間に Askar 80ED で太陽を見ようとする/子供に見せようとする。
原因:絶対に行ってはいけません。マニュアル冒頭・裏表紙ともに「DO NOT LOOK AT SUN THROUGH TELESCOPE. IT WILL CAUSE IRREVERSIBLE DAMAGE TO YOUR EYES.」(望遠鏡を通して太陽を見ないこと。不可逆な目の損傷を引き起こします)と明記されています。
対処:太陽観測専用フィルター/専用フィルム(マニュアル中国語側 §警告「专用太阳观测滤镜或滤膜」)を必ず使い、対物前面に正しく装着した状態でのみ太陽観測を行ってください。投影法や安価な接眼フィルタの使用は危険です。

出典: User's Manual 表紙・裏表紙 §警告(DO NOT LOOK AT SUN THROUGH TELESCOPE. IT WILL CAUSE IRREVERSIBLE DAMAGE TO YOUR EYES./中国語側:请购买专用太阳观测滤镜或滤膜)

公式仕様一覧

項目
口径 80mm
焦点距離 560mm
焦点比 F7
対物レンズ ダブレット(ED ガラス 1 枚+標準アクロマートガラス 1 枚)
全長(フード収納時) 404mm
全長(フード展開時) 505mm
OTA 単体重量 1.7kg
総重量(リング・ダブテール込み) 2kg
後部スレッド 2" アダプター(内側 銅メッキ仕様)
フォーカサー 2" デュアルスピード ラックアンドピニオン(トラベル 7cm・大型ロックネジ付)
ダブテール 200mm Vixen 規格
ファインダー取付 鏡筒両側に dual finder base
レンズフード 反転収納+伸展可能
同梱物 OTA/チューブリング 1 対/ハンドル/200mm Vixen ダブテール/保証書/チェックリスト/マニュアル
対応イメージサークル APS-C 最適化(フルフレーム対応)

出典: Askar 80ED User's Manual §Specifications, §Mechanism Instruction ⑴〜⑺Sharpstar 公式 80ED 製品ページ

よくあるご質問(FAQ)

Q1. Askar 80ED の対物レンズは何枚構成ですか?

A. ダブレット(2 枚)構成です。ED ガラス 1 枚と標準アクロマートガラス 1 枚の 2 群構造で、Askar 80ED 公式マニュアル §Specifications・§Instructions for use に明記されています。3 枚構成のトリプレット APO ではない点にご注意ください。

Q2. 必要なバックフォーカスは何 mm ですか?

A. 1.0x フラットナー/0.85x リデューサ/0.7x リデューサの 3 種いずれも、M48 オスねじの基面から 55mm です。Sharpstar 公式 80ED Imaging Accessories ページに「55mm(from the base of M48 male thread)」と明記されています。

Q3. ZWO EAF を取り付けたい場合、何が必要ですか?

A. 公式マニュアル §Steps of Installing EAF によると、① モーターブラケット、② 標準 M4 ネジ、③ 5–6mm 適合のフレキシブルカップリング、④ 2mm 六角レンチ(粗動ノブを外すため)が必要です。EAF 本体は別売です。

Q4. どのクラスの赤道儀に載せれば良いですか?

A. 撮影時の総重量(鏡筒 2kg + カメラ・補正レンズ・ガイド一式)を上回る赤道儀ペイロードが必要です。Astromaniac Magazine のレビューでは ZWO AM3N、Star Adventurer GTi クラスの小〜中型赤道儀が良マッチと評価されています。

Q5. キャリングケースは付属しますか?

A. 付属しません。Astromaniac Magazine レビューで「専用キャリングケース非付属」と明記されています。社外品のケースを別途用意してください。

Q6. ヒーター付きデューシールドは標準ですか?

A. 標準同梱は 反転収納式レンズフードのみで、ヒーター付きデューシールドやヒーターストリップは含まれません。湿度が高い環境では別売デューヒーターストリップの併用を推奨します。

Q7. 大型 APS-C センサーを使うと暗いハローが出ると聞きました。本当ですか?

A. Scope Trader の実機テスト記事では、ASI2600MC + 3 種類の補正レンズすべてで明るい星周辺に dark halo / radial artifact が報告されています。原因は air-spaced doublet 由来のため、補正レンズ交換やフィルタ除去でも解消しません。小型センサー(IMX585)使用時はより許容範囲との所見もあります。

Q8. レンズの掃除は自分でやって大丈夫ですか?

A. BBC Sky at Night Magazine の手順を守れば自分でクリーニングできますが、アルコールを直接レンズに垂らさないことが最重要です。毛細管現象でセル内部に侵入したアルコールはレンズセメントを溶かす恐れがあると同記事に明記されています。

Q9. ファインダーは左右どちらに付ければ良いですか?

A. 80ED は鏡筒両側に dual finder base を装備しています(マニュアル §Mechanism ⑹)。利き目・運用スタイルに応じて好みの側に取り付け、必要に応じて分解せず付け替えができます。

Q10. 太陽を見るのに使えますか?

A. 何の対策もしないで直接覗くと 不可逆な目の損傷を引き起こすため絶対に行ってはいけません。Askar 80ED 公式マニュアル冒頭・裏表紙でも明示的に禁止されています。太陽観測専用フィルター/専用フィルムを対物前面に正しく装着した状態でのみ可能です。

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最終更新: 2026-06-30/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は Askar 80ED 公式マニュアル(Sharpstar Optical 発行・全 9 ページ)と Sharpstar 公式 80ED 製品ページ・80ED Imaging Accessories ページ・BBC Sky at Night Magazine の屈折クリーニング手順・Scope Trader の実機テスト記事・Astromaniac Magazine レビューに基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。