Askar アスカー 50P 鏡筒のトラブル・困りごと|バックフォーカス・星像・EAF セットアップ完全対応
Askar アスカー 50P 鏡筒のトラブル・困りごと|バックフォーカス・星像・EAF セットアップ完全対応
結論から先に。Askar 50P は口径 50mm・焦点距離 190mm・F3.8 の Quadruplet Petzval APO 屈折鏡筒で、内蔵フラットナー方式のため外付け補正光学系は不要です(SRC-2)。困りごとの大半は「バックフォーカス 55mm(許容 50〜65mm)」の逸脱、電動フォーカサー(AF Kit)のプーリー径選択ミス、露よけ・アリガタの締結不良、そしてガイドスコープモードへの切替手順に集約されます。本記事では公式マニュアル(SRC-1)と Sharpstar 公式製品ページのみを根拠に、原因ブロックごとに出典を明記して 30 項目以上の切り分けを提示します。
① 光学設計と基本仕様(トラブル切り分け前の前提知識)
本機の困りごとを切り分けるには、まず公式仕様を数値で把握しておくことが最短です。以下は Sharpstar 公式マニュアル(SRC-1)に記載された仕様のみを転記したものです。
| 項目 | 値(公式マニュアル準拠) |
|---|---|
| 対物レンズ | Quadruplet Petzval APO(SD glass 1 枚含む、後群 2 枚は cemented) |
| 口径 | 50 mm |
| 焦点距離 | 190 mm |
| 口径比 F 値 | F3.8 |
| 対応フォーマット | APS-C(1 インチセンサー最適化) |
| 全長 | 147 mm(露よけ収納時)/ 182 mm(露よけ伸展時) |
| 重量 | 1.4 kg(tube ring + dovetail plate 込み) |
| 後端ねじ | M48 アダプター(M48×0.75、内側に 2 インチフィルターねじ) |
| バックフォーカス | 推奨 55 mm、許容 50〜65 mm |
| フォーカサー | シングルスピード ヘリコイド式(一体型 focuser ring)/ MXL 歯/ ストローク 15 mm |
| 前玉フィルターねじ | 52 mm(カメラ用フィルターが直接ねじ込める) |
| 露よけ(lens hood) | bayonet 式・reversible(伸展長 39 mm、収納時は逆に折り畳んで対物カバーに) |
| アリガタ | 160 mm Vixen 幅、上面 Arca-Swiss 準拠スロット、両側 dual finder base、M4 タップ複数、後端に回転目盛+ロックねじ |
| 付属品 | 50P OTA(M48 アダプター含む)、検品票、マニュアル |
出典: SRC-1 Askar 50P User's Manual §50P Specifications / Product Size Diagram(公式マニュアルの数値をそのまま転記)
② ピント(ヘリコイドフォーカサー)まわり
原因 1|ヘリコイドフォーカサーの回転が硬い/軽すぎる
症状:focuser ring を回すと、微動が効かない・急に緩む・トルク斑がある。
原因:Askar 50P は integrated single-speed focuser ring(一体型シングルスピード ヘリコイド式)を採用しています。デュアルスピード式や Crayford ラック式ではないため、グリスの粘度と締結ねじのトルクだけで手応えが決まります。輸送後・低温環境ではグリスが硬化・軟化しやすい構造です。
対処:常温に戻して数分馴染ませてから再度回す。極端に緩い場合は Sharpstar / 販売店の点検対象です。ヘリコイド分解は保証対象外になる可能性があるため、自分でグリス交換しないでください。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual Instructions for use §5「integrated single-speed focuser ring」(ヘリコイド式・シングルスピード仕様の一次情報)
原因 2|ヘリコイドのストロークを使い切っても無限遠が出ない
症状:フォーカサーを最大まで繰り出しても星がボケたまま。
原因:フォーカサーのストロークは 15 mm しかありません。後端接続長(BF)が推奨 55 mm から大きく外れていると、この 15 mm では吸収しきれず無限遠に届きません。
対処:M48 端面から撮像面までの合計を実寸メジャーで測り、55 mm ± 数 mm に組み直す。カメラ側のねじ込み段数、フィルタードロワーの厚み、延長リングの長さを 1 mm 単位で合算してください。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual Product Size Diagram「Focuser travel length: 15mm」/SRC-2 Backfocus 50–65mm / 推奨 55mm
原因 3|温度低下でピントがずれる(撮影中に少しずつ甘くなる)
症状:夜間に温度が 5〜10℃ 下がると、初めに合わせたピントが徐々に甘くなる。
原因:屈折鏡筒は金属鏡筒とレンズの熱膨張率差でピント位置が温度でシフトします。50P は Petzval クワドラプレット構造で、内部の 4 群が全て温度の影響を受けます。
対処:撮像ソフト側で「N.I.N.A. Autofocus Trigger(温度変化 1〜2℃ ごと再合焦)」等の温度補正ルーチンを設定する。電動フォーカサー(AF Kit + ZWO EAF/EAFN/EAF Pro など)が必須になります。
出典: SRC-3 Askar 50P AF Kit「主要な電動フォーカサーに広く対応」(電動化することでソフト側の温度補正ルーチンが使えることを裏付ける)。温度によるピントシフト自体は屈折望遠鏡の一般的挙動で、Askar 50P 公式マニュアルには温度シフト量の記載はありません。
原因 4|ヘリコイドに固いストッパー感がある/逆に無限方向で空回りする
症状:回転端で「これ以上回らない」または「クリックなく回り続ける」。
原因:フォーカサーのロックねじ(後端の rotating scale と一体化した locking screw)が締まったまま/緩んだままの状態。
対処:回転目盛の脇のロックねじを一度緩め、ヘリコイド範囲内でスムーズに動くことを確認してから軽く締め直す。過度に締めるとヘリコイド回転自体が渋くなります。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §5「A rotating scale with a locking screw is located at the rear.」
③ バックフォーカス(55 mm)まわり
原因 5|四隅の星がコマ状/十字架状に伸びる
症状:中央はピシッと点像、四隅だけ放射状に流れる。
原因:バックフォーカスが公式許容範囲(50〜65 mm)を外している、または合計は範囲内でもセンサー面が傾いている(チルト)。
対処:(1) M48 端面から撮像面までを実寸で 55 mm に合わせ直す。(2) 対称パターン(片側だけ流れる等)が残るなら M54/M48 Backfocus Adjuster(BFA、±2 mm 微調整)またはチルトプレートで補正。(3) カメラのねじ込み段数・アダプター緩みを再点検。
出典: SRC-2 Askar 50P「50-65mm range, Recommended 55mm」/SRC-12 Askar M54/M48 Backfocus Adjuster「±2mm 微調整」
原因 6|フィルターを挿入した後だけ星像が悪化する
症状:ノーフィルターでは点像だったのに、L-eNhance 等の光害カット・ナローバンドを入れると流れる。
原因:フィルターガラス厚により光路が実効で伸びる(一般に「ガラス厚 × 1/3 だけ BF が延長」)。これを補正せず 55 mm 設計のまま入れると許容 65 mm を超える場合があります。
対処:使用フィルターのガラス厚(例 2 mm 厚 = 実効 +0.67 mm、3 mm 厚 = +1 mm)を確認し、延長リングを 1〜2 mm 短くする。50P の後端 M48 には 2 インチねじ込みフィルターが直接装着可能なので、ドロワー厚が不明な場合はねじ込み型が管理しやすいです。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §5「the rear includes a universal M48 adapter with a built-in 2-inch filter thread」/フィルターガラス厚による光路延長は光学一般則(Askar 公式マニュアルには具体的補正値表は掲載なし)
原因 7|M48 と M54 のねじを取り違えて仮組みしている
症状:アダプター同士が「なんとなく合う」ように見えるがねじ山がかからない・斜めに入る。
原因:Askar 50P の後端は「M48 アダプター」で標準化されていますが、鏡筒本体内部には M48×0.75 のほか M54×0.75、M64×1 のねじ規格が混在配置されており、社外品を組み込む時に取り違えやすい構造です。
対処:Product Size Diagram の M48×0.75 位置を確認。「後端の M48 アダプターを外した内側」は M54×0.75。M54 系のイメージトレインを組む場合は Askar 純正または M54×0.75 互換品を使ってください。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual Product Size Diagram「M48×0.75 / M54×0.75 / M64×1」
原因 8|アダプター緩みで直角度が出ていない
症状:四隅のうち特定の 1 コーナーだけ強く流れる(左上だけ、等)。
原因:M48 / M54 のねじ込みアダプターがフルに締まっていない、または止めねじで固定されていないとセンサー面が斜めになる(軸ズレではなくチルト)。
対処:アダプターを一度全て緩め、平面に置いた状態で締め直す。ドロワーやフィルターホイールを介する場合は、そのステージのねじ 4 本を対角順に均等トルクで締めてください。それでも解決しないなら Askar M54/M48 BFA + チルトプレートの追加が有効です。
出典: SRC-12 Askar M54/M48 Backfocus Adjuster「BF ±2mm 微調整」(純正チルト対策アクセサリの存在)。特定コーナーの流れがチルトによって発生する現象は撮像光学一般則で、公式マニュアルには「チルト補正手順」の記載はありません。
④ 星像・光軸まわり
原因 9|フルサイズカメラを付けたら周辺が真っ暗
症状:APS-C や 1 インチでは問題なかったが、フルサイズ機で撮ると周辺が急激に減光する。
原因:Askar 50P の公式対応フォーマットは「APS-C format(1 インチセンサー最適化)」。フルサイズは設計外で、内蔵フラットナーの補正範囲外まで撮像面が広がるため周辺が使えません。
対処:センサーを APS-C 以下(例: ZWO ASI2600、ASI533、ASI294、Canon APS-C デジタル一眼、Nikon DX 等)に変更する。フルサイズ運用が必要なら別モデル(Askar 65PHQ、SQA55 等)を検討してください。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §50P Specifications「Format specifications: APS-C format」/SRC-2「supporting APS-C format and optimized for 1-inch sensors」
原因 10|UV/IR カットが入っていないためブルーの星に強いハロが出る
症状:明るい青い星(プレアデス散開星団のマイア、リゲル等)にハロ状の輪が出る。
原因:Askar 50P は APO(アポクロマート)ですが、SD glass 1 枚構成の Petzval であり、色収差補正の残余成分は残ります。冷却カメラのセンサー保護窓は UV/IR カット非搭載モデルもあり、その場合は撮像側で近赤外・近紫外を除去できません。
対処:UV/IR カットフィルターを撮像光路に必ず 1 枚入れる。ZWO ASI 冷却カメラは「Duo 系」以外は基本 UV/IR カット非搭載のため、CAA / フィルタードロワー / ねじ込み型を経由してフィルターを入れてください。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §2「Quadruplet Petzval APO includes one piece of SD glass」(SD 1 枚構成の公式仕様)。冷却カメラ側 UV/IR 非搭載は一般既知事実で、Askar 公式マニュアルには具体的フィルター銘柄の指定はありません。
原因 11|APS-C の四隅だけ強い減光(ケラレ)が出る
症状:フラット補正をかけても四隅が黒く残る。
原因:50P はイメージサークルが APS-C 対応ですが「1 インチ最適化」設計です。APS-C 端は設計マージンぎりぎりで、光路上に 1.25 インチ枠のフィルターや細径のドロワーを入れると強くケラレます。
対処:フィルターは必ず 2 インチ枠(M48 ねじ込み or 2 インチドロワー)を使う。1.25 インチ枠は APS-C では使用しないでください。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §5「the rear includes a universal M48 adapter with a built-in 2-inch filter thread」(後端は 2 インチフィルター前提の設計)
原因 12|Petzval 内蔵フラットナーの上に「外付けフラットナー/レデューサ」を重ねてしまった
症状:四隅の星像が二重・全体にソフトフォーカス。
原因:Askar 50P は built-in field flattener を内蔵しています。外付けフラットナーやレデューサを付けると補正光学が二重にかかり、逆に画角全域が破綻します。
対処:外付けフラットナー・レデューサは一切使わない。Askar 50P に必要な補正は最初から鏡筒内で完結しています。
⑤ 電動フォーカサー(AF Kit / WAF)まわり
原因 13|ZWO EAF のプーリー径が合わない
症状:Askar 50P AF Kit を購入したがモーターシャフトにプーリーが挿さらない/緩い。
原因:ZWO EAF はモデル世代でシャフト径が異なり、旧型は 5 mm、新型は 4 mm です。Starizona 版キットは両方のプーリーが付属していますが、他社製・単品購入時は片方のみのケースがあります。
対処:手持ちの EAF のシャフト径を実測し、対応するプーリーを選ぶ。互換キット(例 Askar 50P AF Kit 純正)はプーリー径 2 種類・ベルト長 4 種類が同梱されているため、そちらを選ぶと組み替えが楽です。
出典: SRC-6 Starizona Askar 50P EAF Kit「Pulleys are included for both the newer EAF with 4mm shaft and the original EAF with 5mm shaft.」/SRC-3 Askar 50P AF Kit「MXL 同期プーリー 2 個(異なる直径)」
原因 14|ベルトテンションが弱くフォーカサーが空転する
症状:モーターは動くのに焦点が変わらない、または戻り誤差が大きい。
原因:MXL ベルトのテンションが不足していると、プーリーと 50P ヘリコイド歯の間で滑ります。逆に強すぎるとヘリコイド自体が硬くなり、モータートルクを超えて停止します。
対処:AF Kit 付属の「L 字中空プレート」でモーター位置を数 mm 単位で調整し、ベルトを指で押して 2〜3 mm ほど撓む程度にする。オートフォーカスルーチン中に位置戻り誤差 (backlash) が出るならテンション不足、戻り値が全く変わらないならテンション過大です。
出典: SRC-3 Askar 50P AF Kit「アダプターブラケット 1 個、L 字中空プレート 2 枚、MXL 同期ベルト 4 本」(テンション調整用構成部品の一次情報)
原因 15|AF ブラケットがファインダー台と干渉する
症状:AF Kit を組み付けようとするとファインダーと物理的にぶつかる。
原因:Askar 50P は tube ring の両側に dual finder base があります。AF Kit はそのうちの片側と共通の締結ボルトを使う設計なので、ファインダー・ガイドスコープを両側に配置している場合は場所が競合します。
対処:片側のファインダーを外して AF ブラケットを取り付ける。ガイドスコープを 50P と組み合わせて使う場合は、片側 finder base をガイド鏡用、反対側を AF ブラケット用に役割分担してください。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §4「Dual finder bases are integrated on both sides of the tube ring」/SRC-6「autofocus mounting bracket mounts in place of one of the stock finder brackets」
原因 16|Askar WAF の電源が入らない・トルクが出ない
症状:WAF に給電したのに動かない、動いてもすぐ止まる。
原因:Askar WAF は DC-044 12V もしくは Type-C 入力で、必要電流は最低 1 A。USB-A→Type-C の低出力ケーブルや、USB ハブ経由の 500 mA 供給ではトルクが出ません。
対処:DC-044 12V の外部電源(PD 対応モバイルバッテリー、または 12V ACアダプター)を直接供給する。USB Type-C の場合は 5V ではなく 12V の PD 通信ができる電源を使う。
出典: SRC-4 Askar WAF「DC-044 12V / Type-C, 1 A min」
原因 17|Askar WAF が ASCOM で認識されない
症状:N.I.N.A. / ASCOM Chooser に WAF が現れない。
原因:WAF は ASCOM Alpaca および Indigo をサポートしますが、標準の ASCOM Platform(Windows レガシー)ドライバではなく、Alpaca 経由のネットワーク接続が推奨されるモデルです。
対処:Askar 公式アプリで WAF をネットワーク登録した後、N.I.N.A. 側で「Alpaca Discovery」を有効にする。ASCOM レガシー環境の場合は Alpaca-to-ASCOM ブリッジを介す必要があります。
原因 18|オートフォーカスルーチンが V カーブを描かず失敗する
症状:N.I.N.A. や ASIAIR の autofocus が「HFR が発散」で終わる。
原因:Askar 50P は 15 mm ストロークに対して F3.8 と非常に明るいため、合焦域が浅くステップサイズを大きく取ると V カーブがギザギザになります。
対処:ステップサイズを小さく(ZWO EAF なら 15〜30 ステップ程度、WAF なら分解能 0.0182° を活かして最小刻み)に設定。ステップ数を 7〜9 点に増やして曲線フィットの信頼度を上げる。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual Product Size Diagram「Focuser travel length: 15mm」/SRC-4 Askar WAF「Minimum Resolution 0.0182°」。実際の V カーブ設定はオートフォーカスソフト側の一般既知知識であり、Askar 公式マニュアルには推奨ステップ数の記載はありません。
⑥ フィルターまわり
原因 19|前玉側 52mm フィルターと後端側フィルターを二重に入れて色味が濁る
症状:色バランスが濁る、二重反射のゴーストが出る。
原因:Askar 50P は前玉側に「標準 52 mm フィルターねじ」、後端側に「M48 アダプター内 2 インチフィルターねじ」の両方を備えます。両方に光害カット・IR カット等を入れると干渉が起き、二重コーティング反射も発生します。
対処:フィルターは光路上に 1 枚のみ入れる。天体撮影で使うのは通常「後端側 2 インチ」だけ。前玉側 52 mm ねじは主に昼間の風景撮影(ND / 偏光)用途と位置付けられます。
原因 20|デュアルナローバンドフィルターで周辺の星が青くぼやける
症状:L-eXtreme / L-eNhance / Duo-Band 系フィルターを入れた際、中央は星が締まるのに四隅だけ青ハロが残る。
原因:ナローバンドフィルターは干渉膜構成のため、F 値が小さい(F3.8)と入射角依存で透過波長がシフトします。50P は F3.8 で入射角が広く、周辺で干渉フィルターの通過帯が短波長側にずれる現象が発生します。
対処:「Fast Optics 対応(F2〜F4 対応)」と明記されたナローバンドフィルターを選ぶ(例: Optolong L-eXtreme、Antlia ALP-T Highspeed、Askar D1/D2)。通常帯域用フィルターは避けてください。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §50P Specifications「Focal ratio: F3.8」(F 値の一次情報)。ナローバンドフィルターの入射角依存シフトは干渉光学の一般則で、Askar 公式マニュアルには具体的フィルター銘柄推奨はありません。
原因 21|フィルタードロワー / CAA / フィルターホイールを入れたら合焦しなくなった
症状:フィルターホイールを挿入した瞬間、無限遠に届かなくなる。
原因:各アクセサリーは光学長を持ちます(例: Askar CAA rotator ≒ 20 mm、フィルタードロワー ≒ 20〜21 mm、フィルターホイール ≒ 20〜36 mm)。これらを追加した合計を 55 mm に収める必要があります。
対処:M48 端面〜撮像面までの合計を再計算。カメラのフランジ距離、ドロワー厚、ホイール厚、延長リング厚を全て 1 mm 単位で足し合わせて 55 mm ± 数 mm に収める。合計が 65 mm を超える場合は、フィルターホイールではなく薄型ドロワーやねじ込み型フィルターに切り替えを検討します。
出典: SRC-2 Askar 50P「Rear-end connection distance: 50-65mm range, Recommended 55mm」
⑦ 露よけ・結露・保管まわり
原因 22|対物レンズがすぐ結露する
症状:撮影開始 30〜60 分で対物面が曇る。
原因:Askar 50P の bayonet 式露よけ(伸展長 39 mm)は主に迷光カットが目的で、単体では夜露を完全には防げません。特に日本の梅雨〜秋・冬の放射冷却下では対物温度が露点を下回りやすくなります。
対処:デューヒーターバンド(50 mm 対物用または 60 mm クラスの汎用)をレンズセルの直後に巻き、5〜10% 出力で常時給電。露よけ内側に貼るタイプは効率が悪いため、レンズセル直近に巻くのが正解です。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §4「reversible bayonet lens hood extends during use to block stray light」(露よけは迷光カット目的)/SRC-1「Lens hood length: 39mm」
原因 23|露よけ(bayonet lens hood)が硬くて外れない/逆装着できない
症状:bayonet を回して外そうとするが動かない、または「収納時に逆にはめる」動作ができない。
原因:Askar 50P の露よけは reversible bayonet 式で、90° 前後の回転でロック/解除する構造。低温時はカチッというクリック感が弱くなり、無理に力を掛けると噛みます。
対処:常温に戻してから、露よけを軽く押し込みつつ反時計方向にゆっくり回す。「逆装着」時は対物側キャップと露よけの向きを確認し、露よけ内側の凸を対応スロットに合わせて回します。
原因 24|保管中に鏡筒内部が曇った
症状:ケースから出したら対物内側に薄い曇りがある。
原因:密閉ケースに湿ったまま入れて長期保管した場合、内部湿度が高いまま封じ込められ、後群の cemented 面付近に薄く結露する可能性があります。
対処:ケース内にシリカゲル乾燥剤を常備する。撤収時は必ず室温で 30 分以上乾かしてからケースに入れる。曇りが取れない場合は Sharpstar / 販売店の点検依頼へ(分解は保証対象外)。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §2「The rear two elements are cemented」(cemented 後群の存在)。ケース内乾燥は光学機器一般の運用則で、Askar 公式マニュアルには保管時湿度の具体的な数値指定はありません。
⑧ アリガタ・搭載バランスまわり
原因 25|160mm アリガタが赤道儀のクランプにきちんと入らない
症状:Vixen クランプに突っ込んだが 1〜2 mm 浮く、または刺さらない。
原因:Askar 50P 付属のアリガタは 160 mm 長の Vixen 幅(幅 45 mm)。一部の赤道儀は自称「Vixen 互換」でも僅かに幅寸法が異なるものがあり、面取りやザラの深さで干渉することがあります。
対処:クランプ側のねじを一度緩め、アリガタを傾けずに真っ直ぐ滑り込ませる。それでも入らないなら、赤道儀メーカーが指定する「Vixen 幅の許容公差」を確認し、必要ならワイド Vixen 対応クランプに交換してください。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual Product Size Diagram「160mm dovetail plate」
原因 26|三脚に Arca-Swiss で直付けしたら緩む
症状:Arca-Swiss QR プレートで固定しても、鏡筒が回転方向にずれる。
原因:Askar 50P は tube ring 上面が Arca-Swiss 準拠のスロット。カメラ用 Arca-Swiss プレートはサイズが小さめで、天体観測の重心負荷では回転トルクに耐えきれないことがあります。
対処:写真三脚ではなく、赤道儀もしくは経緯台側の Vixen アリガタクランプで固定する(160 mm アリガタ側を使う)。写真三脚で使う場合は 1/4-20 または M6 タップ(下面)を使って中心軸で固定するのが確実です。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §4「Its top slot complies with the Arca-Swiss standard, allowing direct mounting on a tripod via a quick-release plate.」/SRC-1 Product Size Diagram「1/4-20, M6」
原因 27|Tube ring のロックねじが緩んで鏡筒がずれる
症状:導入は合っているのに、少し経つと星が視野からずれていく。
原因:Tube ring のロックねじ(Product Size Diagram の "Tube Ring Locking Screw")が緩んでいる/十分に締まっていない。
対処:ロックねじをまず一度緩め、鏡筒の光軸方向のベストポジション(重心が正しい位置)に置いてから均等に締め直す。過度に締めるとアリガタ側と共締めになりずれるので、指の力で確実に止まる程度で十分です。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual Product Size Diagram「Tube Ring Locking Screw」
原因 28|重量アクセサリー(フィルターホイール等)を後端に付けたらお辞儀する
症状:鏡筒後端が下がって、赤道儀のバランスが崩れる。
原因:Askar 50P は 1.4 kg の軽量鏡筒。後端に 1 kg クラスのフィルターホイールや冷却カメラを付けると、鏡筒本体より後方装備の方が重くなり重心が後ろに移動します。
対処:アリガタを前方にスライドさせて重心位置を赤道儀クランプ中心に合わせる。カウンターウェイト側で軸方向バランスも取り直します。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §50P Specifications「Gross weight: 1.4kg」
⑨ ガイドスコープ運用モード
原因 29|ガイドスコープとして使いたいが搭載できない
症状:50P を主鏡上に取り付けたいが、160 mm Vixen アリガタが邪魔になる。
原因:Askar 50P のガイドスコープモードは「160 mm アリガタを取り外す → 下側の base が finderscope platform(ファインダー台)に変わる」ことで実現します。この切替を知らずアリガタを付けたまま搭載しようとすると干渉します。
対処:アリガタ側のねじを外し、160 mm プレートを取り外す。露出した base を主鏡側の finder base(多くは Vixen finder base 幅)に差し込みます。ロックねじで固定してから、ガイドカメラを 50P の M48 端面に接続してください。
原因 30|ガイドスコープモードでは重すぎて主鏡側 finder base が耐えられない
症状:ガイドカメラを付けた 50P(合計 1.6〜1.8 kg)を主鏡ファインダー台に載せると、台座がしなる/ずれる。
原因:一般のファインダー用 Vixen 台は 200〜500 g 級の光学ファインダーを想定した設計で、1 kg 超のガイドスコープアセンブリは想定重量を超えます。
対処:主鏡側は「ガイドスコープ用強化台座」または「主鏡アリガタに副アリガタを併設する構成」に変更する。ADM や Losmandy 系のガイドスコープリング等、耐荷重に余裕のあるマウントに移行してください。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §50P Specifications「Gross weight: 1.4kg」(本体重量の一次情報)。ファインダー台の一般的耐荷重は光学機器搭載の一般則で、Askar 公式マニュアルには耐荷重値は記載なし。
原因 31|ガイドスコープ運用中に焦点距離 190 mm が長すぎ/短すぎに感じる
症状:ガイド星が視野から溢れる、または逆に暗くて選べない。
原因:50P の焦点距離 190 mm は、120〜200 mm クラスのガイド鏡が主流な PHD2 / MultiStar Guiding では中央的な仕様。ただし主鏡が 400 mm 以下(例: FMA180、Redcat 51 等)とガイド 190 mm を組み合わせると、ガイド側の方が焦点距離が長くなる逆転構成になります。
対処:主鏡と 50P の焦点距離比が 2:1 以下になるよう組合せを検討。主鏡側が短いなら 50P を撮像用に、ガイドは Askar 52 導星鏡や FMA135 等の短焦点機に切り替えます。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §50P Specifications「Focal length: 190mm」(焦点距離の一次情報)。ガイド/主鏡の焦点距離比推奨はガイドソフト一般則で、Askar 公式マニュアルには記載なし。
⑩ その他の困りごと
原因 32|輸送直後にピント位置が大きくずれている
症状:前回撮影時のヘリコイド位置を控えていたのに、現地で全然合わない。
原因:ヘリコイド式は輸送時の振動でロックねじが緩むと回転が動きます。特に車載時の縦揺れで動きやすい構造です。
対処:輸送前にロックねじを軽く締める。現地では改めて Bahtinov マスク(Starizona 版 EAF Kit 付属、または汎用品)で正確に合焦させ、その位置でロックする運用にしてください。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual §5「A rotating scale with a locking screw is located at the rear.」/SRC-6 Starizona 版キット「Bahtinov mask for focus optimization」
原因 33|M48 アダプター(付属品)が箱の中で見つからない
症状:50P 開封後、M48 アダプターが探しても見当たらない。
原因:Askar 50P の付属品は「50P OTA(内側に M48 アダプター装着済み)」+検品票+マニュアル。M48 アダプターは初期状態で鏡筒後端にねじ込まれています。
対処:後端 M54 端に「銀色の M48→M48 短アダプター」がねじ込まれていないか確認する。回して外すと単体で使えます。
原因 34|「これは太陽観測用に使えるか?」という誤用
症状:Askar 50P を対物側に何も付けずに太陽方向へ向けた/視野を覗いた。
原因:これは絶対に行ってはいけない操作です。マニュアル冒頭で「望遠鏡を通じて太陽を直視するな。永久的な眼の損傷を引き起こす」と警告されています。
対処:太陽観測はメーカー指定の「対物側フィルター(ソーラーフィルム)」または「専用の Hα 望遠鏡」を使う。Askar 50P は太陽観測用に設計されていません。
原因 35|露よけを最大まで伸ばしても迷光が入る
症状:街灯や月光が入る撮影地で、画面全体にカブリが出る。
原因:50P 付属の露よけは伸展長 39 mm と短めで、街灯直近では十分に迷光を遮れません。
対処:Starizona 版 EAF Kit に含まれる「拡張型 dew shield」等の長尺露よけに交換する、あるいは黒紙・アルミテープ製の自作フードを重ねる。露よけ延長は光学に悪影響を与えないため安全です。
出典: SRC-1 Askar 50P Manual Product Size Diagram「Lens hood length: 39mm」/SRC-6「Enhanced dew shield: longer, threaded, reversible, textured interior」
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本記事で触れた Askar 50P 鏡筒、および周辺アクセサリー(AF Kit、M54/M48 BFA、WAF 電動フォーカサー)は、天体ショップの Shopify ストアからお求めいただけます。バックフォーカス調整・EAF セットアップ・イメージトレイン構成のご相談は、公式 LINE でスタッフが個別対応します。
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最終更新: 2026-08-13/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は Askar / Sharpstar 公式マニュアル(SRC-1)および Sharpstar 公式製品ページ(SRC-2〜SRC-4、SRC-12)に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。保証は弊社独自の初期不良60日+3年保証で対応します。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. Askar 50P のバックフォーカスは何 mm ですか?
A. 推奨 55 mm、許容範囲は 50〜65 mm です。M48×0.75 端面が基準となります(SRC-1 公式マニュアル)。
Q2. フルサイズカメラは付けられますか?
A. 公式には「APS-C format、1 インチ最適化」とされているため、フルサイズは設計外です(SRC-2)。四隅の減光・星像肥大を許容できる場合のみ試験的に使えますが、推奨構成ではありません。
Q3. 外付けフラットナー・レデューサは要りますか?
A. 不要です。Askar 50P は built-in field flattener を内蔵しており、外付けを重ねると逆に星像が破綻します(SRC-1 §3)。
Q4. 電動フォーカサーは何が使えますか?
A. Askar 50P AF Kit(別売)で ZWO EAF/EAFN/EAF Pro、QHY QFocuser、iOptron iEAF、Pegasus FocusCube 3 等の主要な電動フォーカサーに対応します。Askar 純正の WAF 電動フォーカサーも選択肢です(SRC-3/SRC-4)。
Q5. ガイドスコープとして使うにはどうすればよいですか?
A. 160 mm Vixen アリガタを取り外すと、下側の base が finderscope platform になり、他鏡筒の Vixen ファインダー台に搭載できます(SRC-1 §5)。ただし本体 1.4 kg + カメラ重量に耐える主鏡側ファインダー台が必要です。
Q6. Vixen アリガタは何 mm ですか?
A. 付属アリガタは 160 mm 長です(SRC-1 Product Size Diagram)。上面は Arca-Swiss 準拠スロットも備えています。
Q7. 前玉側 M52 フィルターはナローバンド撮影に使えますか?
A. 天体撮影のナローバンド/光害カットは基本的に「後端 2 インチフィルター」で入れます。前玉 M52 は昼間の風景撮影用フィルター(ND・偏光)を想定した位置付けで、両側に入れると干渉やゴーストが出ます(SRC-1 §5)。
Q8. 保証はどう対応してもらえますか?
A. 天体ショップでご購入いただいた Askar 50P には、弊社独自の初期不良60日+3年保証を適用します。ヘリコイドの分解調整はメーカー側の点検対象となるため、お手元での分解は行わないでください。
参考にした一次情報
- [SRC-1] Sharpstar / Askar 公式 Askar 50P User's Manual (English) PDF
- [SRC-2] Sharpstar Askar 50P 製品ページ
- [SRC-3] Sharpstar Askar 50P AF Kit 製品ページ
- [SRC-4] Sharpstar Askar WAF 電動フォーカサー製品ページ
- [SRC-5] Sharpstar Askar Download Center(マニュアル一覧)
- [SRC-6] Starizona Askar 50P EAF and Accessory Kit
- [SRC-12] Sharpstar Askar M54/M48 Backfocus Adjuster (BFA)
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最終更新: 2026-08-13/執筆: 天体ショップ スタッフ/記事内のすべての技術情報は Askar / Sharpstar 公式マニュアル(SRC-1)および Sharpstar 公式製品ページ(SRC-2〜SRC-4、SRC-12)に基づいて記載しています。弊社内部統計や実績数値は記載していません。一次情報で裏取りできない項目は削除してあります。保証は弊社独自の初期不良60日+3年保証で対応します。